2010年に全米カイロプラクティック試験委員会(NBCE)より出版された、
「2010 年度カイロプラクティック業務の分析:Practice Analysis of Chiropractic 2010」があります。
それをもとに作成された研究冊子
「カイロプラクティック 研究報告:Studies on Chiropractic」を
翻訳および要約したものをご紹介します。
この研究では、「カイロの安全性」、「患者満足度の研究」、「カイロの対費用効果」などが報告されています。
以下、報告書より抜粋して紹介します
カイロ治療で最もよくみられる有害事象は、短期間の痛みおよび/または 一時的な疼痛の増加である。
初期の痛みや、疼痛の増加の可能性は、エクササイズ・プログラムを開始した時にも同様にみられた(Bronfort et al., 2001; Hurwitz, Morgenstern, Vassilaki, & Chiang, 2005)。
1966年から2007年の多数の症例研究、症例対照分析、後ろ向き研究、前向き研究、アンケート調査、ランダムで比較対照試験を検索した文献の系統的レビューは、脊椎マニピュレーションに起因すると考えられる多くの有害事象は、良性で一過性のものであることを示唆している
(Gouvela, Castanho, & Ferreira, 2009)。
時にカイロプラクティック・マニピュレーションに起因すると考えられる事象に、椎骨動 脈解離による脳卒中がある
(Rothwell, Bondy, & Williams, 2001; Smith et al., 2003)。
しかし、年間1億人以上の入院患者数のうち、818の椎骨動脈解離を調べた最近の研究では、脳卒中との関連性は、カイロプラクターでも総合医の受診でも同じであることを Cassidy(2008)らは実証し、脳卒中の原因がカイロプラクティック・ケアに特有な何らかの 要素と関連がある可能性はないことを示唆している。
可能性が高いのは、既に脳卒中が進 行中で、患者にヘルスケアの介入を求めるよう促す症状があったことである。
患者満足度という極めて重要な分野の研究では、カイロプラクターが、常に患者から高い 満足度を得ていることが分かっている。
脊椎疾患に関するカイロプラクティック・マネジ メントは、医師の治療より成功率が高いことが多く、その結果、患者満足度のレベルが高くなっている。
Nyiendo、HaasとGoodwin (2000) によるカイロプラクターと医師の比較研究では、「カイロプラクターで治療を受けた慢性腰痛患者は、1ヶ月目の時点で、家庭医に治療を受けた患者よりも大きな改善と満足度が示された。
満足度スコアは、カイロプラクティックを受診する患者で高かった」(p.239)。
この研究では、カイロプラクターの患者の方が、より高い割合で腰痛が改善、もしくはかなり改善したという報告(56%対13%)があり、一方で、医師の患者の3分の1以上は、痛みが悪化した、もしくはさらに悪化したと報告(35% に対しカイロプラクターの患者では14%のみ)している。
同様に、カイロプラクターの患者の90%が、ケアに満足していると示しているのに対し、医師の患者のうち52%のみが満足している。
著者らは、ケアに対するこのような満足度は、患者へ提供されるより多い情報量、患者の健康へのより高い関与、腰痛治療のより高い安楽度や信頼度といった、典型的なカイロプラクティック臨床に原因があることに注目した。
カイロプラクターの態度、ケア、治療の説明への患者満足度について、研究論文が増えている(Coulter et al., 2003; Gemmell & Hayes, 2001; Hawk, Long, & Boulanger, 2001)。
米国防総省のカイロプラクティック・ヘルスケア実証プロジェクトによる最終報告では、カイロプラクティック・ケアを受診した参加者は、良い治療結果が出たと強く感じていたこ とが判明している。
医師のケアを受診した際と比較して、来院時に患者に向き合うカイロプラクターの意欲、治療の説明、健康状態の改善で、より高い満足度を示した(Birch & Davis Associates, 2000)。
同様に、カイロプラクティック・ケアの導入について調査した同様の実証研究に関与したカナダ軍関係者のアンケート調査では、「大多数(94.2%)の軍関係者と紹介した医師(80%) は、カイロプラクティック・サービスに満足を示している」
(Boudreau, Busse, & McBride, 2006, p.574)。
つい最近では、2005年4月から2007年3月のメディケア実証プロジェクトの最終報告で、「(カイロプラクティック)ケアの満足度は高く、87%が10点満点で8点以上を示し、56% が満点の10点を示した。回答者の60%はカイロプラクティック治療で『適度な』もしくは 『完全な』軽減を示したのに対し、他の医療従事者の治療では11%であった」
(Stason et al., 2010, p.7)。
労災補償の請求から得られたデータの研究は、医療従事者や理学療法士のケアと比較すると、フロリダ州(Folsom & Holloway 2002)、テキサス州(MGT of America, 2003)、ノース カロライナ州(Phelan, Armstrong, Knox, Hubka, & Ainbinder, 2004)、オクラホマ州(MGT, 2005)では、カイロプラクティック費用は、かなり節減されることを示している。
Legorretaらの2004年の研究では、腰痛のために管理型カイロプラクティック・ケアを利用する権利があることで、従来の医学より効果的で低侵襲性でもあるため、医療費全般が減少される可能性があると結論付けた。
保険でカイロプラクティック治療が補償される患者は、補償されていない患者に比べて、一人あたり年間医療費(1,463ドル対1,671ドル)がより低い。
腰痛患者はレントゲン撮影回数も少なく、外科手術も少なく、入院も少なく、MRI 撮影回数も少ない。
2007年にSarnat、WintersteinとCambronは、カイロプラクターを最初にヘルスケアを受ける担当者として認めることは、劇的な費用削減につながり、入院日数59%減少、外来手術を62%減少、そして薬剤の費用を83%減少させることを報告した。
メディケアの枠組み内での研究結果は、カイロプラクティック・ケアが、受給者ごとのメ ディケア・プログラムへの費用を著しく削減することを明らかにした(Muse and Associates, 2001)。
管理型医療保険から出された請求データ4年分の徹底的な分析によれば、カイロプラクティック・ケアを利用する権利があった患者は、管理がなかった患者よりも神経筋骨格系の訴えが少なかった。
また、カイロプラクティック・ケアは、追加の費用となるのではなく、医療ケアを直接置き換える(Metz, Nelson, LaBrot, & Pelletier, 2004)。
この患者のグループは、腰痛と頸部痛の治療では高価で侵襲性の高い処置を利用することが著しく減少した(Nelson, Metz, & LaBrot, 2005)。
経済学者によるカイロプラクティック・ケアの費用対効果についてもっと最近の評価であるMercer Report(マーサー・レポート)では、「有効性と費用を同時に考えた時、腰痛と頚部痛のカイロプラクターによるケアは費用対効果が極めて高く、医師のケアや広く受け入れられている費用対効果の高いレベルのものと比較しても十分な価値がある」(Choudry & Milstein, 2009)。
この分野の研究者たちは、処方薬の費用を把握したり、取り入れることができないことを認めていた。
そのような理由で、比較したカイロプラクティック・ケアの費用対効果の推定額は、控えめに述べた可能性が非常に高い。
■引用元(日本語):2010年度 カイロプラクティック研究報告
http://www.jac-chiro.org/pdf/studies2010.pdf
■引用元(英語):The Studies on Chiropractic 2010
http://www.nbce.org/wp-content/uploads/studies_brochure.pdf