腰痛と一言で言っても、その原因は非常に多岐にわたります。
いわゆるギックリ腰や、背骨の椎間板がずれたり突出してきて神経を圧迫する椎間板ヘルニア、あるいは単順に少しひねったりするなどで筋肉が炎症を起こしてしまうような、いわゆる筋肉痛などが一般的です。
これらの疾患は骨や筋肉の異常が原因で引き起こされるものであり、湿布薬を張っていれば自然に治るものもあれば、整形外科で治療が必要なものもあります。
腰痛の原因としては圧倒的にこの整形外科的な病気が多いのですが、時としてこれらの病気とは全く異なり、命に関わることもありうる危険な腰痛もあります。
このような腰痛は腹部にある内臓からの危険信号であることもあり、早期に対応しなければいけないことが多いです。
では、どのような腰痛が危ないのでしょうか。病気が疑われる内臓と合わせてみてみましょう。
多くの場合、危険な腰の痛みの原因となるのは腹部の臓器です。腹部には肝臓、膵臓や腸、腎臓などの泌尿器、膀胱や女性であれば子宮があります。
その中で比較的頻度の高い病気としては尿管結石があげられます。
これはまさしく激痛で、腰の痛みが主体になります。時には立っていられないほどの痛みとなるため、多くの場合は救急車で病院に運ばれたり、夜間などの救急で何とか受診されることがあります。
尿管結石は腎臓で作られた尿からの成分が析出してしまい石となり、尿管に詰まってしまい尿の流れが障害されることで起きる病気です。
痛みの特徴としてはまず、突然に出現する激痛です。石が小さいなどの状況によっては軽い痛みであることもありますが、重度の場合は吐き気、嘔吐なども伴います。
血尿などを伴うと診断はしやすいです。尿管に詰まった石が排泄されれば痛みは嘘のように消失しますし、痛みは激しいですが命にかかわることは多くはないとされています。
一方、命に関わるのが腹部を通過する血管が原因となる病気です。
背骨の横には心臓から全身に血液を送る大動脈がつながっています。
特にこの血管が破れたり、血管壁の構造が壊れて一部がはがれたりすると短時間で命を落としかねない重篤な状況に陥ることがあります。
具体的な病名としては腹部大動脈破裂や腹部大動脈解離という病気です。
大動脈の壁は大きく三層にわかれています。
しかし、その壁の一部が弱くなるなどすると心臓が拍出した血液の力により、大動脈瘤というこぶができてしまいます。
大動脈は全身に血液を送る重要な血管である分、その血圧の力もかかるためその大動脈瘤は徐々に大きくなってしまうことがあるのです。
やがて、血管壁が持ちこたえられなくなり破たんすると破裂します。
そして、それまでは全く痛みがなかったのに、突然、激しい痛みの襲われると同時に破裂した部分からの出血が多ければ出血多量で血圧も下がって徐々に意識の低下も起こってきます。
すぐに止血しなければ短時間で心停止に至り死に至るため、非常に危険な病気であり、破裂するまで気づかれない、あるいは自覚症状もないことがあるため注意が必要です。
また、大動脈解離は大動脈の壁がはがれてはがれた部分に血液が流れ込み、さらに大動脈を裂いていく病気です。痛みが始まると徐々に増強して、痛みの範囲も広がっていくという特徴があります。こちらも早期に治療しなければ腹部の内臓の血液の流れが阻害されるため、臓器障害から死に至ることもあるため危険な腹痛といえます。
腹部のほかの臓器としては胃の裏にある膵臓も重要です。
沈黙の臓器とも呼ばれ検査しても異常が見つけにくかったり、症状が出るようになった時にはかなり病気が進行していることもあります。
特に膵臓は中に神経が走っており、アルコールなどの摂取による膵炎や、膵臓がんなどの病気で痛みを感じることがあります。
胃のすぐ裏にあるため胃の痛みと勘違いされることもありますが、すぐ後ろは背中なので背中から腰のあたりの痛みを感じることもあります。
膵炎などでは、左わきから腰のあたりの痛みが典型的ですが人によっては腰の上部が痛いと感じる人もいます。
膵炎では食事をやめると痛みがおさまり、食事によって増強するという特徴があります。またすい臓がんの痛みでは膵炎と異なり、重苦しい感じや圧迫感が主体となるような痛みです。
進行すると体重減少や黄疸なども伴うようになります。
さらに、非常にまれながら胸部になり臓器による腰痛としては心筋梗塞もあげられます。心筋梗塞の典型的な例は胸が痛い、苦しいなどの症状ですが肩が痛くなったり、血流が悪くなるために腰痛が起きることもあります。
特に注意すべきは心筋梗塞では脂汗が増えるなどの症状を伴うこと、さらに心筋梗塞が起きやすい早朝などに急に始まった痛みでは注意が必要です。
危険な腰痛としての病気とその時に起こる腰の痛みの特徴や性質について述べましたが、もちろん原因はこれらだけではありません。
ほかの内臓の病気により腰の痛みを起こすこともあります。
骨や筋肉の痛みと見分けるには痛い部分を押さえてみて、痛みが和らぐ場合は骨や筋肉、あまり変わらない場合は内臓からの痛みである割合が多いので参考になるでしょう。