全国ご当地味噌汁、愛知県からはニシ汁の紹介、茨城県からはどぶ汁を紹介します。地元の人でなければ何がメインの味噌汁なのかわかりませんね。ニシとは貝で、どぶ汁とは、あんこうを使った味噌汁のことです。さっそく紹介しましょう。
ニシ汁とはイボニシという貝を使った味噌汁のことです。そのまま味噌汁の具として使う場合と、すりつぶして焼いた赤みそなどで調理していただく汁とがあります。この場合は味噌汁として飲むのではなく、ご飯にかけて食べたりしているようです。味は地元の人でも好き嫌いがはっきりと別れます。ニシ貝を使った味噌汁は、シジミやアサリと同じ要領で作ります。
ニシ汁の作り方はなんだかとても原始的です。今では地元スーパーなどでも売られていますが、水から海で取ってくる人もいます。ニシ貝がおいしい季節は5月です。作り方も大胆で、材料もこれといって決まった分量はありません。ニシ貝には疲れによく効くタウリンが豊富に含まれています。
名前を聞いただけではなんだかすごい汁のような印象を受けるどぶ汁。スープの色からその名前がついたそうです。水を一切使わずに、野菜やあんこうそのものから出る水分で煮あげる汁物です。一度食べたらやみつきになるおいしさです。
あんこうは、大きな口に平たい頭、体はとてもぬめりがあります。深海に生息していて、容姿はとてもグロテスクです。その姿からは想像できない美味しい魚で、旅館や料亭でも珍重されています。あんこうの肝臓は、海のフォアグラと呼ばれるほどで、高級食材だというのがわかりますね。あんこうの旬は冬で、産卵のために栄養を蓄えて肝にも脂がのります。その全身のほとんどが水分で、ぬるぬるしている上にぐにゃぐにゃした柔らかい体をしているので、まな板の上でさばくことができません。そのため、巨大な体を上からつるし、口から水を注ぎ入れて安定させてからさばくのです。これがあんこうの吊るし切りです。美味しくて人気のあんこうですが、マグロ漁やイカ漁などのように、あんこうを目的とした「あんこう漁」というのは元々存在しません。深海に生息しているため、浅瀬まできて底引き網に偶然かかってとれるものです。そのため漁獲量が不安定になることも、あんこうの価格が高いことへの一因となっているのでしょう。
「汁」とつくのにどぶ汁を作るのには水を使用しません。使う材料から出てくる水分だけで作るのです。そのため、新鮮なあんこうでなければいけません。さっそく作り方を紹介しましょう。
あんこうと材料の水分だけで作りますので、大根や人参、白菜など、水分が出やすい野菜をお好みで使います。