二酸化炭素は、地球上にありふれた存在の気体であるといえます。私たちの身体の中にも、呼吸をしている限り二酸化炭素は常に存在しています。
その辺で寝転がっているポチやタマもカトリーヌちゃん(ワニ・2歳)も二酸化炭素を体内に含んでいます。
植物にしても桜からハエトリグサまで二酸化炭素を身体の中に含んでいます。とにかく、生物の全ては二酸化炭素に関わりながら生きているのです。
大気における二酸化炭素の割合
近年のエコロジー運動の関係で、「俺はちょっと地球環境に詳しいんだぜ」という人が身の回りに居る人も多いかもしれません。彼らには「二酸化炭素の増加による地球温暖化は人類を滅ぼすから、二酸化炭素を減らして酸素をもっと増やさなければならない」という信念があるようですが、それは正しくもあり間違っているのです。
二酸化炭素はそんなに増えていない!?
実際のところ、二酸化炭素の量は地球の大気全体で見れば増えているといってもごく微量で想定の範囲内というものです。そもそも、大気を構成する気体の割合は窒素7.8:酸素2.1:その他1で、二酸化炭素はその他の0.04%程度なのです。
それに、大気は私たちの目の届く範囲までしかないのではなく、かなりの高度まで存在しています。大気の総量を考えれば、実際のところ増えているといっても人間の生活の範囲内での話なのです。
二酸化炭素を減らしすぎるのも問題
なぜ、森林を増やすことが二酸化炭素の削減につながるのでしょうか。それは、植物の特性である「光合成」にあります。植物も生物なので、大きく成長するには身体を作る物質が必要になります。動物の場合はたんぱく質ですが、植物の場合はセルロースが身体を作る物質です。
このセルロースを得るため、植物は吸い上げた水と二酸化炭素を葉緑素に光を受けることで酸素とブドウ糖に変換し、酸素を放出します。生産されたブドウ糖は、セルロースの原料となります。つまり、植物は「二酸化炭素から酸素を作る」のではなく「二酸化炭素を食べることで身体を育てている」のです。
そして、光合成は太陽が出ている昼間にしか行えません。植物は夜になると二酸化炭素を放出しているのです。植物は二酸化炭素をある程度は自己循環して自分を養っているのですが、二酸化炭素が足りない分は他の動物が放出したものを分けてもらっているのです。つまり、二酸化炭素を削減しすぎると今度は植物が困るのです。
酸素は増やすと危険?
「いや、それでも酸素を増やして二酸化炭素を削減すべきだ! そのためには森林を増やし……」という反論がくるかもしれません。それこそ危険です。酸素を増やしすぎるほうが動物には危険なのです。60%以上の酸素濃度を持つ空気を呼吸し続けることは命に関わります。
また、「大気の30%が酸素になったら地球が火の玉になる」とも言われています。錬金術師として知られるパラケルススは「全ての物質の毒性を決めるのはその使用量だ」という言葉を残しています。酸素にしても二酸化炭素にしても単純な理屈で安易に増減すべきではないのです。