「石油の性質を挙げよ」
と問われて、答えがすらすらと出てくるのは危険物取扱者の資格を持っている人くらいではないでしょうか。
それほどに、私たちは日常生活を支えている石油の性質を知っていないのです。
石油の性質を知ろう!
一般に「石油」と言う場合、原油かガソリン・灯油・軽油などの精製石油を差しています。これらの精製石油は、それぞれが違う性質を持ちそれぞれが違う用途に使用されています。
一方、原油は全ての精製石油の元となるものなので精製石油とはまったく違う性質を持っています。原油はそのままでは使いづらいので、様々な過程を経て初めて人が使いやすい形になるのです。
石油の揮発性と臭いの正体とは?
ガソリンスタンドで給油をすると、給油口に陽炎が立っているように見えることがあります。また、灯油をポンプで容器に移し替えていると独特のにおいが立ち上ってきます。
この「揮発」と「臭い」は、石油に含まれている同じ物質の働きによるものなのです。その物質の正体となるのが、石油の主成分である炭化水素なのです。
臭いと揮発性を与える芳香族炭化水素
炭化水素は、地球上の生物に必要不可欠な元素である炭素と水素から出来ているだけでなく、化学構造の違いによって様々の物質に変化します。炭化水素の種類の中で、石油の次に知られているのが有機溶剤などに使われる芳香族炭化水素です。
この芳香族炭化水素は、六角形に炭素が結びついた状態に水素が結合した「ベンゼン環」の状態を基本としています。芳香族炭化水素は、その名の通り独特の臭いを発する性質を持っているのです。
芳香族炭化水素の代表格であるベンゼンは、揮発性が高いだけでなく溶解性が高いのでかつては有機溶剤として盛んに使われてきましたが、人体への有害性が確認されたため現在では敬遠されています。このベンゼンは、炭化水素の化合物である石油にも含まれていてガソリンなどの揮発性に密接な関係を持っているのです。
石油の可燃性の強さ
石油は、精製されたものを含めても自然界にある物質の中でも屈指の可燃性を誇っています。
しかも、同じような生成過程を経た石炭よりもエネルギー変換効率がよく、エネルギー革命において瞬く間に石炭から工業燃料の主力の座を奪い取っています。
石油の燃えやすさ
石油は炭化水素を主成分としているので、燃焼の際に酸素を取り込み二酸化炭素・水・窒素酸化物・硫黄酸化物を排出しています。
「燃えやすい」というのは化学的に言えば「酸素を周りから集め続けないと酸化反応が追いつかない」ことなので成分のほとんどが酸化される石油はとてもよく燃えるということになります。
また、石油の燃えやすさは個々の精製石油によって違ってきます。これは、主成分となる炭化水素の構造式が複雑化することによるものなのです。
複雑に絡んだ炭化水素の中には、ベンゼンをはじめとする芳香族炭化水素だけでなく、揮発性・可燃性の高い炭素が二重結合した不飽和炭化水素などが含まれています。こういった含有される炭化水素の性質によって、石油の燃えやすさが決定されるのです。
工業原料としての石油
石油の主成分である炭素と水素は、人間をはじめとする有機生物の肉体を構成する元素でもあります。
つまり、石油を適切な手法で分解して合成することが出来れば様々な物質が作り出せるといえるのです。
ゴムもプラスチックも石油で作れる
ゴムは、基本的にゴムの木の樹液を原料としていると認識されていると思います。しかし工業的にゴム製品を作る場合、ゴム樹液は木の生育状況などに品質が左右されます。そのため、現在は石油を原料とすることでゴム製品を大量に生産しているのです。
また、プラスチックも石油原料の製品としてよく知られています。石油は工業生産を行う場合、原料の品質をそろえやすい物質として重宝されているのです。