原油は、読んで字のごとく「石油のもと」です。原油が無ければガソリンも灯油も重油も軽油も作り出すことが出来ないのです。
原油は、長い年月を掛けた自然の生成作用によって生み出され、地中の奥でひっそりと眠っているのです。油田の中には深度の浅いところで出来たものがあり、人為的な手段ではなく自然に噴き出してくるものもあります。
原油は油田から掘り出したまま?
原油は、「油田から採掘した石油そのもの」と考えている人も多いのではないでしょうか? それは半分正しくて、半分間違っています。まず、油田には必ず地下水がつきものです。油田を掘り進めて行くと、必ず地下水が埋蔵されている層に行き着きます。そのため、掘り出したばかりの原油には水や水の中の不純物が混じってしまうのです。
採掘した原油の処理
それに、油田の地下水埋蔵層には石油天然ガスが溜まっていることがあります。天然ガスに引火すれば、せっかく掘り出した原油が燃えて目減りしてしまうのです。
そのため、油田で石油を掘り出した場合は、自前の設備で水・ガス・原油に分離する処理を行います。原油に混じった不純物は沈殿処理で取り除いて、初めて出荷できる原油が完成するのです。
原油の単位
原油はリットルでもキログラムでもなくバレル(バーレル)で数えられます。バレル(barrel)というのは、「木樽」のことを指しています。これは、ドラム缶やポリタンクなどが発明される以前はもっともポピュラーだった容器である木樽につめて輸送されていたことに由来しています。1バレルは158.987294928リットルに換算されます。
原油で行われる取引
石油産業では、基本的に原油での取引が行われます。大抵の石油会社には自前の精製設備と貯蔵設備があるからです。それに、石油を輸送するためのタンカーの数はそう多くは無いので、原油で取引をしたほうが手間も掛からないし石油製品を精製して販売することで利益が生まれるからです。そのため、石油の市場価格は原油価格に左右されるのです。
では、原油はなぜ精製過程を経て石油製品にしなければならないのでしょうか?
原油からガソリンだけを作り出すことは出来るのでしょうか?
原油からは全ての石油製品が作り出せる
石油製品は「連産品」という特徴を持っています。これは、原油を精製することで全ての石油製品が一度に取り出せるという性質を表しています。つまり、原油からガソリンだけを、原油から灯油だけを作り出すことは出来ないのです。
そのため、石油を扱う業者は必ず全ての石油製品を扱わなければなりません。これは石油産業への新規参入者を制限するためのメリットであり、常に石油を精製する施設を維持するコストを支払わなければならないというデメリットにもなっているのです。
原油をそのままでは燃やせない
原油には石油製品の成分や窒素・酸素・硫黄だけではなく、少々厄介な成分も含まれています。それがタールです。
タールと言うのは要するに「ヤニ」のことで、原油に含まれるタールは発がん性が高いことが知られています。石油製品からはタール分は蒸留の過程で取り除かれて残油に溜まったままになります。
しかし、原油の状態ではこのタールが多量に含まれたままなのです。もしも、原油を燃料とすればこのタールが混じった黒煙が上がり、とても息苦しい思いをすることになるでしょう。
原油は燃焼効率が悪い!
それになにより、原油は燃え方が良くないのです。タールを含んだ黒煙を上げることもそうですが、連産品としての石油製品が複雑に入り混じっていることが原油の燃料としての立場を奪っているのです。
石油製品には「引火点」と呼ばれる、空気と気化した石油製品が混合しやすくなる温度があります。燃焼には酸素が必要なので、空気が混じって燃えやすくなる状況が大事になるのです。
しかし、この引火点は石油製品の沸点に左右されます。そして、石油製品ごとの沸点は蒸留分離に利用できるほどに違っています。つまり、沸点が混在している原油は引火点もあやふやなので燃えにくいのです。
原油は処理が難しい
タンカーの座礁事故などがあるたびに、クローズアップされるのが原油や重油の流出です。原油などの石油は比重が水に対して軽いので水面の上に広がっていくのですが、この広がり方が最大の問題といえます。
流出した原油は水の上を滑っているようなものなので、一週間もすれば水と油の区別が付かなくなるほどに薄くなってしまうのです。こうなるともう回収は不可能です。
それに、流出した原油は含有されているタール分生態系にも大きな悪影響を与えてしまいます。つまり、流出した原油などの処理はスピード勝負なのです。ただ、原油や重油の流出に対応できる設備を備えた船の数は限られています。そのため、近年では「石油を食べる微生物」を使って、処理を行うケースが増えています。