日常生活の中でもっとも使用されている燃料といえば、やはりガソリンが真っ先に上がると思います。
自動車やバイクなどのガソリンを使用する乗り物は便利だし、車やバイクを走らせることは楽しいものです。
しかし、その一方でガソリンエンジンからの排気による大気汚染問題や原油価格の高騰によるガソリンの販売価格の上昇など、様々な問題が私たちの眼前に山積みされています。
ここでもう一度、ガソリンについて勉強していきましょう!
ガソリンの基礎知識
ガソリンは、「揮発油」といわれるほどに揮発性の高い石油製品です。ガソリンの沸点は30℃から220℃ですが、引火点はマイナス40℃以下で常温中ではとても気体になりやすいのと同時に引火しやすい物質であることがわかります。
揮発したガソリン自体も高い引火性を持っているので、扱うときは火気厳禁なのです。
なぜガソリンはポリタンクに入れられないのか
よくガソリンスタンドには「ガソリンをお持ち帰りになるには携行缶が必要です」といった看板が表示されています。ガソリンをポリタンクで持ち帰ることさえ出来ないのはなぜなのでしょうか?
それには、石油製品の性質に理由があります。灯油は有機溶剤として使用されるほどに、溶かす力を持っています。同じ石油製品であるガソリンにも溶かす力があると考えるほうが自然です。
それに、ポリタンクの原料のポリエステルは石油由来のプラスチックです。ガソリンを入れたことによって、その構造が劣化する可能性は無いとはいえないのです。
ガソリンの種類とは
私たちが普段使っている「ガソリン」には様々な種類が存在しています。では、どのようなガソリンがあるのでしょうか?
自動車用ガソリン
私たちのもっとも身近にあるのが、ガソリン需要の大半を占める自動車用ガソリンです。自動車用ガソリンは、スピードや燃費を考えた工夫を前提とした改良が続けられている分野ですが、近年は環境問題を考えた方向への改良が続けられています。
ホワイトガソリン
ホワイトガソリンは、「ナフサ」と呼ばれエチレンなどのプラスチックの原料としても使用されています。純度が高く燃焼力も強いため、自動車用ガソリンの三倍近い価格で販売されます。ホワイトガソリンの用途は、主にキャンプ用照明や洗浄剤などです。
工業用ガソリン
工業ガソリンは、ナフサやガソリンを脱硫して精製したもので燃料以外の用途に使用されます。工業用ガソリンは、JIS規格で厳密に規定されており1号から5号まであります。
1号工業用ガソリン
1号工業用ガソリンは、「ベンジン」とも呼ばれ洗濯物の染み抜きなどに用いられます。また、懐炉用の燃料としても使用されます。
2号工業用ガソリン
2号工業用ガソリンは「ゴム揮発油」という通称が与えられています。その用途はゴムを溶かしてやわらかくし、加工しやすくするものです。友禅などの伝統的な工芸などで使用されています。
3号工業用ガソリン
3号工業用ガソリンは「大豆揮発油」と呼ばれ、大豆から油分を抽出するために使用されています。人の体に入るためのものではなく、大豆インクなどの工業的な目的で使用される大豆油の抽出用に使用されます。
4号工業用ガソリン
4号工業用ガソリンは「ミネラルスピリット」という通称があり、主に塗料の希釈などに使われます。通称が健康食品のような印象を与えますが、食用には適さないのは言うまでもありません。
5号工業用ガソリン
5号工業用ガソリンは「クリーニングソルベント」と呼ばれ、ドライクリーニングの際に使用されます。揮発性があるので、健康に悪影響を与えることが多いので注意しましょう。
航空ガソリン
飛行機を飛ばしているのもやはりガソリンです。近年の原油価格高騰の影響で航空運賃の値上げがあったことは記憶に新しいところです。航空ガソリンは、気圧の関係で沸点が低くなるので、厳密な規格が定められています。
ハイオクガソリンとはどんなガソリンなのか?
ガソリンスタンドに行くと、「レギュラー」「ハイオク」とガソリンが二種類に分けられています。
ハイオクとレギュラーにはどのような違いがあるのでしょうか?
「ハイオクガソリン」=「高オクタン価ガソリン」
そもそも「ハイオク」のオクとは、オクタン価のことを指しています。オクタン価とは、エンジン内部での異常燃焼によって起こる「ノッキング」現象の起こりにくさを示した数値なのです。レギュラーガソリンの場合、オクタン価は89以上と規定されています。対してハイオクガソリンは96以上に設定されています。
ハイオクガソリンを入れてパワーアップ?
「レギュラーガソリンは普通、ハイオクガソリンはパワーが欲しい時に入れる」と考えている人は多いのではないでしょうか?
実際のところ、ハイオクガソリンはパワーの強いエンジンのために開発されたガソリンです。前述の航空ガソリンも一種のハイオクガソリンといえます。ハイオクガソリン専用のエンジンは、パワーがあるためノッキングが起こる可能性が高くなっています。そのため、ノッキングが起きにくいハイオクガソリンを使う必要があるのです。
レギュラーガソリン用のエンジンにハイオクガソリンを使用しても劇的な改善効果は現れないと思っておいて良いでしょう。
ハイオクガソリンが生まれた背景とは
ハイオクガソリンが開発される以前は、有鉛ガソリンという鉛を配合したガソリンが主流となっていました。ガソリンに鉛を加えることでオクタン値が高まるので、自動車・飛行機などに盛んに使われていたのです。
しかし、鉛も人体に悪影響を与える物質であるのは有名です。有鉛ガソリンの場合、燃焼させるとガソリンの主成分である炭化水素と化合して四エチル鉛を生成してしまうのです。
この四エチル鉛は皮膚や呼吸から人体に吸収され神経に影響を与える性質を持っているため、1970年代後半から規制されています。ハイオクガソリンは、「人体に悪影響を与えない高オクタン値ガソリン」を求めることで生まれたのです。
分解ガソリンとは何?
ガソリンに比べて、重油は使いどころが少ない石油製品といえます。しかし、ある工程に掛けることで地味な重油が需要の高いガソリンに変化するのです。こうして、重油を原料にして変化させたガソリンを「分解ガソリン」といいます。
分解ガソリンは1910年に開発された「熱分解法」で生成するのが一般的でしたが、近年では触媒の力で分解する「流動接触分解法(FCC法)」が一般的になっています。
ガソリンの賢い買い方
ガソリンの販売価格は、常に原油価格によって左右されています。そのため、昨日は安かった店が今日には最高値ということも少なくありません。
どのように立ち回れば、ガソリンを安価で買い続けられるのかというノウハウを伝授します!
セルフ式スタンドを狙う
平成10年(1998年)からの消防法改正によって、日本でもセルフ式ガソリンスタンドが開設できるようになりました。最小限の人員を配して、給油作業を客自身が行うことで販売価格を抑えるセルフ式スタンドは、折からの原油価格高騰が追い風となっていまやフルサービス式スタンドとの割合が逆転するほどに増加しています。
商業において、もっとも経費が掛かるのが人件費といわれているだけに、人件費を抑えられるセルフ式スタンドはフルサービス式よりも価格を抑えられるというメリットがあるのです。
カードを活用する
フルサービス式のスタンドでは、会員登録するとセルフ式よりも安くなるサービスを受けることができます。セルフ式スタンドでも、額面+αのプリペイドカードを扱う店舗や会員カードを作ることでさらに安くなる店舗などがあります。
こういったカードを手当たり次第に作るのではなく、「長期的なスパンで見ればどれがお得か」を考えて使用する店舗を絞り込むのが得策でしょう。
ノーブランドには気をつけろ
セルフ式・フルサービス式問わず、利益追求を第一とするスタンドが存在します。水抜き剤やタイヤ交換を執拗に進めてくるフルサービス式スタンドは、セルフ式が登場する以前からありましたが、近年では「業転玉」と呼ばれる転売ガソリンを販売するスタンドが問題となっています。
「業転」とは「業者間転売」のことで、「玉」は「ガソリン」のことを指しています。基本的に「業転」されたガソリンは、元売りの企業のガソリンが余剰在庫になった場合に「不良在庫になるよりは」と安値で出回るものですが、「業転玉」になると複数の企業の「業転」ガソリンを集めたものなのです。
ガソリンの成分は会社ごとによって異なるもので、しかも余剰在庫になっていた期間の間に劣化しているのです。ノーブランドで格安ガソリンを売っているスタンドの中には、こうした「業転玉」を扱っている店もあるので、安さと安全性をはかりに掛けて考えましょう。