それゆけ!石油探検隊

重油

「重油」と聞いて、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか? 「黒くてドロッとした臭いの強い石油」だったり、「鳥が油まみれになった光景」なのではないでしょうか。

しかし、そういったイメージを抱きながらも私たちは重油について詳しく知っているというわけではありません。
ここでは重油の性質などについて解説していきます!

重油を知ろう!

重油を知ろう!

重油は、原油を蒸留する工程でガソリンや灯油、軽油を取り出した後に残る石油製品です。そのため、他の石油製品にはほとんど含まれていないタールやアスファルトを含むため黒くてドロドロと粘っこい見た目になるのです。

重油は、他の石油製品よりも高い発熱量を持っているため、エンジンなどの内燃機関よりもボイラーなどの外燃機関を動かすための燃料として効果を発揮します。

重油の使い道

重油は精製してアスファルトの原料や、発電や大型船舶の燃料として使用されます。重油は火力が強いので大きなものを動かすとか、大量の電気を生み出すといった作業にはもってこいの燃料となるのです。
重油から分離されたアスファルトは、道路整備などの目的に使用されます。道路に穴を開けて、砂利を敷き詰めたところにアスファルトを巻いてバーナーで焼いて固める光景は、春の風物詩ともなっています。

重油の種類

重油には、税法上いくつかの種類に分類されています。重油はA重油・B重油・C重油の三種類に分類されます。この分類の違いは、「残渣油」と呼ばれる蒸留後に残った油と軽油をどの程度の割合で混合したかで決まります。
A重油は残渣油1:軽油9の割合、B重油は残渣油5:軽油5の割合、C重油は残渣油9:軽油1の割合が基準となっています。

油と水をミックスさせたエマルジョン燃料

油と水は、決してひとつにならないものの例えとして使われてきました。しかし、科学の発達によって油と水を混合させることが可能になったのです。たとえば、マヨネーズはサラダ油と酢と卵が原料ですが、卵が水である酢とサラダ油を結びつける役割を果たしています。このように、油と水を混合させる仲立ちをするものを乳化剤と呼び、乳化剤の力で混合した液体をエマルジョンといいます。

エマルジョン燃料は、重油などと水を乳化剤の役割を果たす界面活性剤の力で混合した燃料なのです。重油などをエマルジョン燃料に加工すると、水分子が蒸発することで油分子の大きさが小さくなり燃焼しやすくなるのです。
そして、普通に重油などを燃やすよりも排気ガスに窒素酸化物やPMなどの汚染物質が少なくなるというメリットが生まれるのです。エマルジョン燃料は、近年実用化のための研究が始まったので未だ完全に実用化されていないのですが、汚染物質の減少のみならず燃費の向上と言う効果もあるため、実用化が期待されています。

重油のネガティブな面を知る!

重油のネガティブな面を知る!

重油にまつわるネガティブなイメージは、主に船舶の座礁などで発生する重油流出事故に由来するものと考えられています。


身近になりつつある重油流出

「重油流出」で検索すると、1997年のナホトカ号による重油流出に関するサイトがたくさん出てきます。インターネットが普及・定着を始めた時期だったからこそ、ナホトカ号は身近な事例となりインターネットの力を実感させることになったといえます。重油流出は船舶の沈没まで行かない規模でも発生することがあります。いつ、私たちの町のそばで起こるかわからないのが重油流出なのです。

重油流出の影響とは

重油が船舶から流出すると、油自体は比重の関係で海面を広がっていきます。しかし海面に広がった重油を回収しておしまい、と言うわけには行きません。広がるスピードはかなり速く、迅速な回収作業を行わなければ海岸に漂着してしまうのです。
それに、海岸に漂着した重油は近海の生態系や養殖産業にも大きな影響を与え、時には全滅させてしまうこともあるのです。ニュース映像で使われる「重油にまみれた鳥の姿」だけでは伝わってこないことがその裏側にあるのです。

流失した重油を回収するためには

では、どのような手段をとれば流失した重油を回収できるのでしょうか? 海洋に重油が流出した場合、オイルフェンスと呼ばれる防護壁を重油の周りに張り巡らせて広域への拡散を防いだ後、重油を吸収シートなどで回収していきます。
海岸に漂着した重油は油処理剤を投入して撹拌し油の濃度を下げて自然に影響が出にくいようにしたり、人海戦術で回収したりしていきます。

重油流出の新しい対抗策

人間の文明の中で、微生物の力を利用したものはいくつも存在しています。漬物やヨーグルトなどは乳酸菌の力で発酵を行い、ペニシリンはアオカビの力で生成されます。重油流失などの、自然環境に悪影響を与える恐れのあるものを微生物の力で安全に分解するのがバイオレメディエーションです。
バイオレメディエーションを直訳すると「生物による修復」で、重油流出の処理方法として注目を浴びています。自然の中には、石油を分解して自分の体を作る栄養分にする微生物が何種類も生息しています。こういった石油分解微生物を掛け合わせて強化した微生物を使うバイオレメディエーションの可能性は、地球環境を考える上でとても価値のあるものとなっています。