灯油は、石油製品の中でも扱いやすい部類に入ります。引火点が40℃以上、沸点が170℃から250℃の間で、およそ常温であるなら自然発火の可能性は格段に低くなります。それに、石油製品独特の臭気があるものの、目に来るというほど強くは無いので安心して扱える石油であるといえます。
灯油の性質とは
灯油は、精製過程で不純物となる硫黄を徹底的に取り除いているので透明感が高くなっています。硫黄成分は燃焼の際に硫黄酸化物を生成するだけでなく、灯油タンクを劣化させる働きがあるからです。
私たちが普段ストーブなどに使っている灯油は「白灯油」と呼ばれる精製度の高いもので、硫黄成分は0.008%以下に抑えられています。白灯油以外には「茶灯油」と呼ばれる灯油があり、こちらは白灯油よりも脱硫を行っていないので、硫黄で少々茶がかった色合いになっています。
茶灯油はボートや農業機械などのエンジンを動かすために使用されていました。また、灯油はガソリンに並んで揮発性が高い石油製品なので、灯油を入れたポリタンクのそばで火気を扱うのは非常に危険です。
灯油で宇宙ロケットが飛ぶ!?
灯油の英名である「ケロシン(kerosene)」は、ジェットエンジンやロケットエンジンの燃料としても知られています。このケロシンは、灯油の純度を最大限に高める処理が行われており、燃焼させることで強い推進力を発生させることが出来るのです。
もし、ケロシンを宇宙で燃焼させる場合には、液体酸素などの酸化剤を添加する必要があります。ケロシンが燃焼によって推進力を発生させている以上、酸素の供給が行われなければならないからです。
燃料以外の灯油の用途
また、灯油は燃料だけではない使い道が存在しています。灯油を化学処理したものは、溶剤として使用できるようになります。
その用途は塗料の薄め液や、ドライクリーニング用の溶剤として使用されます。灯油系の溶剤は揮発性が高く、健康を害することがあるため換気をよくして使用しなければなりません。
生活の中で、灯油を使う場面は数多くあります。扱う人間が何らかのミスを起こしてしまうことも少なくありません。
そういった灯油に絡んだトラブルにどう対処していけばいいのかを伝授していきます!
1年間保管した灯油の行方
近年は異常気象といわれることが多いため、「冬に買った灯油を使い切る前に春が来てしまった」ということも少なくありません。「そのまま冷暗な場所においておけば一年持つのでは?」と考える人もいるかと思います。では、この使い残した灯油はどうすればいいのでしょうか?
灯油は長持ちしない
この場合、「長期間使わなかった灯油は処分する」しかありません。完全な状態で保管しているつもりでも、灯油は悪くなってしまいます。灯油を保管するためのポリタンクの上部に残った空気と反応して、灯油が劣化してしまうことがあるのです。
劣化した灯油は含まれていた硫黄の働きのためか、黄色く変色しています。このように劣化した灯油を「変質灯油」といいます。
また、灯油を使用していてもポリタンクの蓋を閉め忘れたために水分が灯油に混じってしまうこともあります。このような灯油を「不純灯油」といいます。変質灯油や不純灯油の使用は、暖房器具の故障を引き起こす原因となってしまうので、使い残した灯油は最寄りのガソリンスタンドなどで処分してもらいましょう。
灯油とガソリンが混合されたら
ストーブの必要な時期になると、「どこそこのガソリンスタンドで店員が灯油と間違えてガソリンを売ってしまった」とか、「どこそこのガソリンスタンドで灯油とガソリンの混合燃料が売られた」といったニュースが流れます。こういった灯油とガソリンが混合されたものやガソリンをストーブに使うとどのような影響があるのでしょうか?
ストーブにガソリンは禁物!
まず、「同じ石油製品だろ」と安易にストーブにガソリンを使うのは厳禁です。ガソリンエンジンは、密閉された丈夫な燃焼室の中で連続的な燃焼を行うことで、動力を生み出す構造になっていますがストーブはエンジンのような強度を持っていないため、燃焼力の強いガソリンを燃焼させるのは大変危険なのです。
また、自動車にガソリンと灯油の混合燃料を使った場合は灯油でエンジンの内部が劣化したり故障したりする原因を生み出すことがあります。法律的には、ガソリンへの灯油の混入は4%以下ならば許容されるようですが、ガソリンスタンド業者の脱税の手法としても使用されることがあるようです。
長期的に見て、安いガソリンと灯油の混合燃料を使い続けることは損をする可能性が高くなるので、不審な安さを謳っているガソリンには注意するべきでしょう。
石油をこぼたら……
ストーブを焚いていたらいつの間にか灯油が切れていた事がある人は少なくないと思います。つい焦って灯油の補給に行ったらタンクから溢れさせたり、ポンプの口が跳ねて灯油を撒き散らしたりした人もいるのではないでしょうか? そういった場合にはどうすればよいのでしょうか?
灯油が残らないようにする
灯油をこぼしてしまうと、こぼした跡に灯油の臭いがしみこんで往生してしまいます。灯油を床に零したら、新聞紙や乾いた布などで吸い取るのが基本ですが小麦粉などの粉末に吸い取らせてしまうのも手です。
灯油を吸い取りきったら臭い消しに茶殻やファブリーズなどを振り掛けておきましょう。服に灯油が染み付いたら、重曹で臭いを消しましょう。酸性の灯油を、アルカリ性の重曹で中和してしまうのです。充分に中和したら、少し多めに洗剤を入れて洗濯しておきましょう。