それゆけ!石油探検隊

石油の出来るまで

普段私たちが石油について考えることといえば、
「原油価格の高騰はいつ収まるのか」
「安いガソリンスタンドはどこか」
「石油を原料としたものは体に良くないのではないのか」
といった、自分の身の回りのことに集約されているのではないでしょうか?
ここはひとつ、石油が私たちの元にたどり着くまでにどのような過程を踏んできているのかを探ってみることにしましょう。

石油の起源を探る

石油の起源を探る

石油は俗に「化石燃料」と呼ばれています。それは、石油の生み出される過程と密接に結びついて生まれた呼び方なのです。


化石から生まれる石油有機由来説

石油の成因として代表的で、教科書などでも主体に取り上げられているのが「有機由来説」です。まず、遥か古代の動物や微生物の屍骸が積み重なり、年月とともにその上に地層が幾重にも積み上げられていくことから始まります。
地下にいけばいくほどマントル層の熱を受けやすくなります。そして土の重みと土の上からの重みで物凄い圧力がかかります。この高温と高圧の影響で化石化するはずの屍骸が変質して、石油に変化するのが「石油有機由来説」です。
動物や微生物ではなく植物が変質したものが石炭になるとも考えられ、学問の領域では長くこの有機由来説が信じられてきたのです。

石油有機由来説の根拠とは?

有機由来説の根拠となっているのは、石油の成分や石油・石炭の発掘場所です。石油の成分には、アミノ酸などの生物由来の成分が含まれていることが知られています。
また、石油や石炭が発掘される場所からは化石が見つかることがあります。この化石は石油や石炭になりきれなかったものと考えられると同時に、石油・石炭が有機由来であることを立証する根拠になると考えられているのです。

新説・石油無機由来説とは

一方「石油は無尽蔵であるかも知れない」という、やや楽観的に感じられるものの定説を覆す学説が存在しています。それが「石油無機由来説」なのです。

地球の成分から生まれる石油無機由来説
石油無機由来説は、旧ソ連の学者が唱えていた学説で主流である有機由来説に真っ向から反発するものであったため長く省みられなかった説です。しかし、2003年に科学者のトーマス・ゴールドが再び取り上げたことで脚光を浴びました。

天文物理学者であるゴールドの説では、「惑星が誕生する際には必ず大量の炭化水素が含まれる」「この炭化水素が惑星内部の高圧・高熱を受けて変質することで石油が生まれ、地上を目指して浮上してくる」という、それまでの有機由来説とはまったく別方向からのアプローチを受けているものだったのです。

無機由来説の根拠とは

では、無機由来説の根拠となるものは何なのでしょうか? まず挙げられるのが「有機由来説である生物由来の成分」です。実際のところ、条件がそろえば無機質だけの環境でも有機質が生成されることは既に証明されています。
また、「有機由来説では説明できない成分が石油に含まれている」ことも根拠となります。石油にはダイヤモンドの微粒子が含まれているのですが、ダイヤモンドは無機物由来の物質なのです。

そして、「地層よりもさらに下の岩盤や地層がない花崗岩からも石油が発掘される」ことがあります。そして、「一度採掘しつくした油田の石油埋蔵量がピークまで回復することがある」ということも大きな根拠となっています。

石油の起源が齎(もたら)す問題とは

石油の起源がもたらす問題とは

石油の起源が、従来の有機由来説と無機由来説の二つがあるのならばさまざまな問題や課題が浮上してくることになります。


石油の採掘可能年数の無意味化

まず、石油資源を使う上で必ずセットになるのが「石油の採掘可能年数」です。20世紀半ばから、「石油はあと半世紀ほどで枯渇する」といわれ続けてきました。これは有機由来説に基づくもので、古代の生物の数量の分だけしか石油が採取できないことが念頭にあるからこそ、石油資源の枯渇が叫ばれてきたのです。
しかし、地球そのものが石油を生成しているとしたら、石油資源の採掘可能年数は有名無実化します。

非再生エネルギーから再生エネルギーへの変化

第二に、石油などの資源は「非再生エネルギー」という一度使ったら元には戻らない性質のエネルギーと考えている定説がひっくり返ります。石油の元となる炭化水素は、メタンガスという形で自然界にも大量に存在しています。メタンガスを石油に変換できるのなら、石油資源は再生可能のエネルギーとなります。

エネルギー業界の大変革

石油をはじめとするエネルギー資源は、大企業によって統括されているといっても過言ではありません。世界のエネルギー業界を牛耳る大企業は、石油枯渇を念頭に置いて石油の供給を運営し、新しいエネルギー資源の開発にも手を伸ばしています。
しかし、無機由来説による石油資源の再生は、彼らの思惑を吹き飛ばす可能性が生まれるのです。「石油は有限だから我々が値段を決めて世界に供給するのだ」という従来の手法が嘘になることで、大企業が抑えていた利益が失われてしまうことを何よりも恐れているのです。

 

石油の由来は現状では「有機由来説」を定説として扱っているサイトや団体・機関がほとんどです。「無機由来説」を併記しているサイトなどは数えるほどしかありません。
しかし、『「有機由来説」も間違いとは言えないし、「無機由来説」も間違っているとは言い難い根拠を持っている』という状態にあるのです。そういった情報の捉え方を養っていくことが石油などのエネルギー源を巡るこれからの課題となるのではないでしょうか。