ベトナムは、かつてフランスの植民地だったこともありアジアンテイストとフランス料理の繊細さを併せ持つ独自の食文化を持っています。ベトナムにおいても昆虫食は盛んに行われています。ベトナムにおける昆虫食とはどのようなものなのでしょうか?
ベトナムは20世紀半ばまでフランスの植民地であったこともあり、パンやコーヒーなどのフランス食文化に触れる機会が多かった国の一つです。また、フランスの植民地化以前から中国との交流も根強かったこともあり、ベトナム料理は近隣国のタイやマレーシアに共通するアジア的食文化に、中華・フレンチの理論や食材を包括した類を見ないスケールを持つ料理となっています。ベトナム料理は、タイ料理よりもハーブに比重を置いた調理が特色となっていて、日本国内でも根強い人気を持っています。
ベトナム料理から食文化を読み解く
ベトナム料理の代表格はベトナム風うどんとも呼ばれる「フォー」です。米粉で作った麺を牛骨スープや鶏ガラスープと合わせた麺料理で、さっぱりした味わいで何杯でも食べられそうですが二つで充分です。また、米粉で作ったライスペーパーを使う生春巻きも人気の高いベトナム料理です。
このように、ベトナム料理はさっぱりした味わいに独特の風味を付けるハーブを加えることで幾らでも食べられるような後味に仕立てるのが最大の特徴です。しかし、その分「食べた」という満足感が残りにくいので油でコクが強くなる昆虫食が好まれるのでしょう。
ベトナムにおける昆虫資源の分布
ベトナムの気候は、熱帯に属しているのでジャングルがあちこちに点在しています。またメコン川・ソンコイ川と河川も多く、昆虫が生息するのにもってこいの風土を有しているのです。
カブトムシやクワガタといった大型甲虫から、タガメ・ゲンゴロウなどの水棲昆虫など、食用向きの昆虫が多数生息していることも見逃せません。ベトナムは歴史上数回にわたる大規模の食糧不足に見舞われたことがあり、ベトナム国内に数多く生息する昆虫は重要な食料資源としての役割を担っているのです。
ベトナムでは、様々な昆虫が食用にされていますが特に水棲昆虫の人気は根強いものです。ベトナム国内の河川の多さと水田を利用した農業が行われていることが、水棲昆虫を獲りやすくしているのです。
ゲンゴロウ
ゲンゴロウは、日本でもよく姿を見ることが出来た水棲昆虫です。ずんぐりとした丸っこい体とユーモラスな顔立ちは愛嬌があって飼育している人も少なくないほどの人気を持っています。東北地方でも食用とされていて、羽と足を取って茹でて食べる習慣があったそうです。
ゲンゴロウの幼虫は、強力な消化液を備えていて、餌に噛み付くと同時に消化液を送り込んで餌を溶かして食べる習性を持っています。この消化液があるため、ゲンゴロウの幼虫の扱いには特に注意しなければなりません。
ゲンゴロウの調理法
ベトナムではゲンゴロウの蛹、または成虫を食用にしています。幼虫は食べられる量が少ないことと前述の消化液があるため、食用には適していません。
ゲンゴロウは基本的に肉食なので、絶食させてからの腸内洗浄が欠かせません。ベトナムでは足や羽は取らずそのまま油で素揚げすることがほとんどです。また、蛹も下茹でしてから油で素揚げして塩で味付けしたものが屋台などで売られています。
タガメ
タガメは、ベトナムやタイなどの東南アジアでは人気の高い水棲昆虫です。特に、タガメは東南アジアで使用されている魚醤のナンプラーと相性が良いことが知られています。
タガメは昆虫の中でも強い独特の匂いを持っていることで知られていますが、同じく独特の臭気を持つカメムシとは違い、洋梨などを思わせる馥郁たる香りを持っていることから食用昆虫としても高い人気を誇っています。
タガメの調理法
タガメも肉食性で、ゲンゴロウよりも獰猛な性格を持っていることで知られています。ゲンゴロウのように口吻から消化液を送り込む性質を持っているので、取り扱いには注意が必要です。
食用のタガメでは、ナンプラーに漬け込んで作るタガメ醤油が特に人気が高く、タガメの持つ香りとうま味が移された醤油はどんな料理に使っても美味しさと香りを引き出すことが出来るのです。
タガメ醤油以外の用途では素揚げにしたものが、人気があります。高温で火を通すことによって香ばしさが加えられ美味しさが増すのです。タガメやゲンゴロウなどの水棲昆虫には、寄生虫の恐れがあるため必ず一度茹でてから油で炒めたり揚げたりします。