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蚕

油で揚げたカイコガ

蚕は、神代の昔から現在に至るまで途切れることなく行われてきた日本の伝統産業でもある、養蚕の要となる昆虫です。羽化するために繭を作った蚕は絹の原料となったあと、どのように昆虫食で利用されているのでしょうか?


  

蚕の基礎知識を知る

蚕は生物学的には「節足動物門・昆虫網・チョウ目・カイコガ科・カイコガ属」に属するカイコガという蛾の一種の幼虫時の呼び名です。蛾も蝶も一生を通して食植生を示し、成虫になると果実や花の蜜を吸うようになります。蚕は特に桑の葉を好んで食べ、栄養を蓄えるのです。

蚕の糸とクモの糸は同じ?

高級天然素材として世界的に愛されている絹糸は、蚕が成虫になるために蛹に変化する過程において体内で生み出されるものです。この絹糸は、実はクモの作り出す糸と同じ構造を持つたんぱく質で作り出されているのです。しかし、クモ糸は絹糸よりも弾力性・耐久性が倍以上も高いという性質を持っています。

また、このたんぱく質は人工的に合成することが難しく、「人工絹糸」と呼ばれるレーヨンは炭水化物の一種であるセルロースを原料にして手触りなどを再現していますが、クモ糸は未だ人工的に作られては居ません。

蚕は自然では生きられない?

カイコガは、長い年月を掛けて絹の生産のために品種改良された昆虫です。その為、自然では生きていけないと言われています。幼虫の段階では真っ白い体色を持っているため、天敵となる鳥類などに発見されやすいこと、野生の蛾に見られるような擬態行動などが見られないこと、繭を作る糸の色で蛹をカモフラージュできないなどの弱点があります。

カイコガと近縁種になるクワコなどは、これらの弱点を持っていないものの作りだす糸の長さが蚕よりも短いため、大量生産に向かないという弱点があります。

蚕の主な利用法

蚕は、「古事記」にも登場するほどに長い歴史をもつ昆虫です。蚕の繭から紡ぎだされる糸は、絹に加工されて衣服に使用されてきました。

羽化後の繭は絹綿に加工されるなど、決して無駄が出ないように使われてきたのでした。絹糸を取るためには、一度繭ごと蛹を熱湯で茹でて羽化しないようにする必要があります。

 

蚕を食べる

では絹糸をとった後の蚕の繭は、どのような形で利用されてきたのでしょうか。昆虫の蛹は、幼虫から成虫に変化する過程において全身を作りかえるための中間形態です。

蛹の中では、幼虫の時の体を全てドロドロに溶かして成虫の体を作るための材料としています。つまり、蛹には蚕の持つ全ての栄養分が含まれているのです。昆虫食における蚕は、糸を取った後の蚕の蛹を使用します。

蚕を食べることのメリット

蚕の蛹を食べる習慣は、日本だけでなく中国や韓国にも存在しています。一説には、アフリカにも現地に生息する野生の蚕を食べる風習があるといわれており、蚕を食料とする風習は珍しいものではないと考えられています。では、蚕を食べることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

たんぱく質の摂取

まず、昆虫食の目的である「タンパク源の確保」が考えられます。日本では肉食が禁じられていた時期があり、山間部に住んでいてもイノシシなどを捕獲して毎日のように食べることは出来なかったのです。なので、養蚕を行っている農家にとって絶好のタンパク源としても蚕は親しまれていたのです。

薬としての効能

蚕の蛹は、漢方薬としても効能を発揮することが知られています。ある種類の細菌で羽化せず一生を終えた蚕の蛹は「白きょう蚕(はくきょうざん)」と言う漢方薬として使用され、さまざまな処方に用いられています。また、蚕の蛹を乾燥させて粉末状にしたものは喘息の治療薬としても使われているなど、薬膳的な効果を期待して蚕を食していたことがわかっています。

栄養補給源としての役目

蚕の蛹は、「蛹3個で卵1個の栄養」と言われるほどの栄養を持っています。蚕は羽化した後は一切食べないため、卵を産んで一生を終えるまでのエネルギーと栄養を蛹の段階までに蓄えているのです。栄養の欠乏が最大の問題でもあった昔の日本において、蚕のさなぎは大きな役割を担っていたのです。

蚕の蛹の食べ方

蚕の蛹は、醤油と砂糖で煮付けて佃煮にして食べるのが一般的な食べ方です。佃煮は醤油の塩分で保存性が高まったことで人気が出た調理形態なので、蚕の蛹の佃煮も保存食として重宝されていたのです。

中国やタイでは、油で揚げて食べることがあります。また、乾燥させて粉末状に加工したものは「さなぎ粉」として釣り餌としても使用されています。


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