タイは東南アジアの中でも人気の高い国の一つで、日本からの観光客も年々増加しています。タイの魅力として上げられるのは、気候風土や独自のスポーツなどがありますがやはり食文化を語らないわけには行きません。タイ料理においても昆虫食は盛んにおこなわれているのです。
タイ料理の特徴は、唐辛子と香草を組み合わせることで独特の辛さや酸味を食材に与えて、素材本来の旨味を引き出すことにあります。タイ料理の辛さは発汗を促し、熱帯気候であるタイを快適に過ごすための役割を果たしています。そんなタイの食文化の中でも昆虫食は高い人気を誇っています。
タイで昆虫が食される理由
タイ国内において昆虫食が盛んなのは東北部に位置するイーサーン地方です。イーサーン地方は農業生産に乏しく海に面していないこともあり、昔から昆虫食が盛んに行われていたのです。
タイでの昆虫食は、昆虫食が行われるようになった元々の意味合いが強く出ているものと言えます。この昆虫食の習慣を持つイーサーン地方の料理は、辛さなどでタイ料理にも大きな影響を与えていることが知られています。
また、イーサーン料理はタイ料理の中でも高い人気を誇り、タイにおける昆虫食はイーサーン料理の普及によってタイ国内に広まったと見ていいでしょう。
イーサーン料理の特徴
ではイーサーン料理は、タイ料理にどのような影響を与えているのでしょうか。
例えば、タイ料理を代表する青いパパイヤを使ったサラダのソムタムは、元々はイーサーン料理を代表するメニューです。タイ料理の特徴である、「プリッキー・ヌー」と呼ばれる小粒の唐辛子を使って辛味を出すのも、イーサーン料理の特徴なのです。
イーサーン料理は、農作物が得にくい土地であるイーサーン地方の人たちが、痩せた土地でも育つ作物と捕らえやすい魚や昆虫を美味しく食べるために考え出された料理なのです。
イーサーン料理の変わった食材
では、イーサーン料理で使われる昆虫以外の食材にはどのようなものがあるのでしょうか?
イーサーン料理では、長粒種のうるち米ではなくもち米を主食にしています。蒸して炊き上げたもち米は腹持ちがよく、食料事情の良くないイーサーンの人たちにとってはエネルギー源としてうってつけの食材なのです。
他にはメコン川で獲れるメコンオオナマズや、発酵させた豚のソーセージであるネームなどがあります。
では、タイで食べられている昆虫食にはどのようなものがあるのでしょうか?
タガメ
タガメは、タイを中心とする東南アジアで広く食用とされている昆虫です。タガメは灯りによってくる習性を持っているため捕獲が割合容易であること、キンモクセイにも似た良い香りを出すこと、昆虫食の中でも美味しいことなどから高級食材として高い人気を誇っています。
中でも魚を塩漬けにして作ったナンプラーに漬け込んで香りと旨味を移したタガメ醤油は、食卓に欠かせない調味料として扱われているほどです。
タガメの調理法
タガメは寄生虫の恐れがあるので生食はせず、塩水に漬けてから熱湯で茹でるか油で素揚げするかして食用にします。食用にするタガメは、ほとんどが大型のものになります。また、タガメの香りはオスの方が強いので、なるべくオスを選んで調理しましょう。
タマムシ
「玉虫色」という言葉があるように、タマムシは昆虫の中でもっとも美しい色彩を放つ昆虫として知られています。タマムシは、金属光沢と呼ばれる虹色に輝く羽を持っており装飾品などにも加工されてきました。
タイではタマムシも食用昆虫とされており、食べた後の羽はアクセサリーなどに加工するなど、無駄が無い昆虫として重宝されています。
タマムシの調理法
タマムシは主に茹でるか揚げるかして食用にします。調理前に、足と羽を取り除いておく必要があります。足はともかく羽は前述の通り装飾品などに加工できるのと、加熱による変質で光沢が失われることを防ぐためです。タマムシは一度湯通ししてから油で炒めるなどして食用にします。
カブトムシ
甲虫の王様とも呼ばれるカブトムシも、タイでは食用昆虫として扱われています。海外のカブトムシは日本に生息するものよりも大型の種が多く、特にタイでは日本でも人気の高いコーカサスオオカブトが生息しています。このような大型カブトムシは、昆虫コレクターのみならず昆虫を食料供給源と考える地域の人たちにとっても垂涎の的と言えます。
カブトムシの調理法
カブトムシは幼虫・蛹・成虫のどの時期でも食用として用いられています。幼虫は柔らかいので炒め物・揚げ物・煮物などに使えます。蛹はナンプラーで味を付けて柔らかく煮込んで食べます。成虫は固い殻ごと油で揚げて、塩を振ってボリボリと食べるのが一般的です。