肉や魚にはたんぱく質、野菜にはビタミンやミネラル、米や小麦には炭水化物と言うように、私たちが普段口にしている食べ物には必ず栄養分が含まれています。
私たちはこれらの必須栄養素を摂取するために毎日食べているのです。では、昆虫にも何がしかの栄養分が含まれているのでしょうか?
昆虫が持つ栄養素は、基本的に半分以上はたんぱく質です。サイズは違えども、昆虫も動物の種類に入るのでたんぱく質を多く含んでいることは当然と言えます。また、必須アミノ酸や鉄分などのミネラル・ビタミンも豊富に含んでいるため、昆虫は一種の完全食品といっても過言では無いでしょう。
なぜこれほど昆虫は栄養豊富なのか?
ではなぜ、これほどに昆虫は栄養が豊富に含まれているのでしょうか? その理由は、「昆虫食は、昆虫の体を維持するための栄養分を摂取することが出来るから」なのです。
人間も、体を維持するために必要な栄養分を血液中や内臓などに蓄えています。昆虫食は昆虫が蓄えた必須栄養素を無駄なく摂取することが出来るのです。
昆虫食のメリット
例えば、牛一頭が自分の体を維持するために蓄えている栄養の全てを摂取するには、肉だけでなく内臓・骨・血液などを食べきらなければなりません。しかし牛一頭あたりの大きさは全長2m前後、体重300kg以上にもなるので、牛一頭からから必須栄養素を摂取するのは不可能であると言えるでしょう。
しかし、昆虫の場合は元々の大きさが平均10cm前後で重量は100g程度に収まるので、昆虫が蓄えている必須栄養素を丸ごと取ることができます。これが、「3kgのビーフステーキを食べるよりも、3kgのバッタを食べる方が摂取できる栄養価が高い」の理由なのです。
昆虫食を見直す
また、昆虫食には通常の肉食よりも優れた点がもう一つあります。それは育成効率です。一般に、動物性たんぱく質を1g育てるのに植物性たんぱく質は約13.5g必要とされています。また、牛・豚・鳥を食肉に加工できるようになるまで育てる期間は一年から三年と長期に渡ります。
それに対して、昆虫の場合食べた量の40%を自身の体を質量に変換できます。また、昆虫は卵生のため一度に生まれる幼虫の数が多く成虫になるまでの期間は半年足らずという成長速度を持っています。
つまり、昆虫は食料資源として少ないコストと時間で食料に出来る段階まで養うことが出来る、優れた動物性タンパク源なのです。今後起こると考えられている世界的な人口増加の際には、昆虫が食糧供給の要になるとも考えられています。
では、昆虫食を行うことは栄養学的な観点から見てどのようなメリット・デメリットを持っているのでしょうか?
昆虫食は良質なたんぱく質を摂取できる!
まず、最初にあげられるのが動物性タンパク源としての価値です。高たんぱく低脂肪の昆虫食は、コレステロール値も低くとてもヘルシーな食品であると言えます。
コレステロールは、消化やビタミンDの合成に欠かせない大事な物質ですが昆虫にはコレステロールを合成する力がありません。その為昆虫は、体内に共生している微生物や植物に含まれる脂質を使ってコレステロールを確保しているのです。一方、昆虫のたんぱく質は乾燥重量の50%以上を占めていることもわかっています。
昆虫はビタミン・ミネラルが豊富!
昆虫の多くは食植生を持ち、植物からビタミンやミネラルを摂取しています。食肉性の昆虫は食植生昆虫や小動物を捕食し、捕食した相手が植物などから得たビタミンやミネラルを摂取しています。この食性の特長によって、昆虫は常にビタミンとミネラルを豊富に蓄えているのです。
昆虫はビタミン・ミネラルを豊富に蓄えているため、100g辺りの含有量は肉・魚よりも高いことがわかっています。昆虫食はサプリメントに匹敵する栄養補助食品としても有効な食品なのです。
昆虫にはアミノ酸が豊富!
人間をはじめとする動物は、消化・吸収・血液の循環などの身体の機能を維持するためにアミノ酸が必要になります。動物にはアミノ酸を合成する力が無いので、アミノ酸を摂取するためには植物から得なくてはなりません。
昆虫のほとんどは幼虫時代を食植生で過ごすため、アミノ酸を豊富に摂取しています。このため、昆虫食において幼虫や蛹を食べるのは、栄養分の不足を補うための昔の人の知恵と考えられています。
昆虫食は高カロリー
いい事尽くめのように見える昆虫食ですが、デメリットがあります。それは高カロリー食品であると言うことです。
昆虫やネズミのように体の小さい動物は、体格に比して消化器官も小さいため一度に摂取できる食べ物の量が少ないのです。その為、一日に何回も食事して身体に次の食事までのエネルギーを溜め込んでいます。
昆虫は基本的に高カロリーになりがちです。昆虫の100gあたりのカロリー量は、大豆の180calを上回るという結果が出ています。