【メキシコで食べられている昆虫】

メキシコ料理の特色は、なんと言っても「辛さ」にあります。インド料理や韓国料理の持つ辛さとはまた違う、メキシコ料理独特の辛さを生み出しているのはハラペーニョやハバネロといった世界有数の辛さを誇る唐辛子によるものなのです。

また、メキシコ料理は辛さだけではなくパンチの効いた強い味わいのメニューが揃っていることも特徴の一つです。メキシコ料理の人気の高さはアメリカでも高く、メキシコ料理のエッセンスを取り入れたテクス・メクス料理を生み出したほどなのです。

メキシコをはじめとする中米は貧困層が多く、アメリカへの移民が後を断たないほどであるといわれています。この貧困はメキシコ国民の食生活にも大きな影響を与え、昆虫食を一般的なものとする大きな原動力となっているのです。

昆虫食によって摂取できる栄養は通常の肉や魚などよりも高いことが、昆虫食を定着させていると言う見方もあるようです。メキシコ料理では、昆虫食はタコスやブリトーなどの薄焼きのパンを使った料理の具材としても使用されています。

メキシコ人は、昆虫食に対して複雑な感情を抱いているようです。貧困から来る食生活のバランスの悪さを補う食材であることと、昆虫食に対する嫌悪感というアンビバレンツな状況が存在しているのです。

またメキシコでの昆虫食は、栄養を補う目的と昆虫の味を楽しむ目的に二分されると言っても過言ではありません。メキシコの昆虫食は、とても難しい立場に置かれた存在なのです。

メキシコ料理は、2005年にユネスコが選定する世界無形遺産の候補として推薦を受けています。残念ながら世界無形遺産としての登録はされなかったのですが、これはとても意味のあることなのです。

昆虫食を含めた、伝統的な料理としての知識の蓄積がなされたメキシコ料理は昨今のスローフードブームを象徴する食文化として考えられたのです。一方でメキシコ料理のタコスやブリトーなどはファストフードとして人気を得ている状況もあり、懸念があるのも事実なのです。

では、メキシコにおいて食用とされている昆虫はどのようなものなのでしょうか？

グサノは、メキシコで多く見られる植物であるリュウゼツランに棲息する芋虫の一種です。グサノが棲息するリュウゼツランはメキシコ料理に欠かせない植物で、大量の糖分を含む樹液を内包しています。

リュウゼツランの樹液はシロップとして料理に使用されるだけでなく、発酵・蒸留させて飲料を精製するなどの目的でも使用されています。グサノはこのリュウゼツラン製の飲料の風味付けに入れられることがあります。

グサノの調理法

グサノは、メキシコ人に最も浸透した昆虫食材です。グサノの尿を乾燥させて抽出した塩は独特の風味を持っていておつまみにぴったりと言われています。

グサノ自体は、一度湯通ししてから唐揚げにすると香ばしさが加わっていっそう美味しくなります。グサノはタコスやブリトーなどの具材にもぴったりな濃厚な味わいを持っているのです。

ミールワームは、ゴミムシダマシという甲虫の幼虫で動物や魚などの餌としても浸透している食用昆虫です。ミールワームは養殖が容易なので、世界的に食されている昆虫であるともいえます。メキシコでは、虫入りキャンディーの材料としても活用されています。

ミールワームの調理法

ミールワームは日本でもペットショップなどで入手できる昆虫です。ミールワームは塩茹でにするか、油で揚げるかして調理するのが最適です。グサノの代わりにタコスやブリトーの具材にしても良いでしょう。

バッタは、同類であるイナゴとともに世界的に食用とされている昆虫です。畑を荒らす害虫としての一面があることから、メキシコでは農業の傍らバッタやイナゴの捕獲に努めています。

メキシコの農業にとってバッタやイナゴを捕らえることは農作物を護ると同時に、昆虫食材として出荷することで副収入を得ることが出来て一石二鳥なのです。

バッタの調理法

メキシコではバッタやイナゴは、辛めの味付けをして食べるのが一般的です。メキシコ料理のソース・サルサに漬けこんで、油で揚げたものが好んで食べられています。

メキシコで食べられている昆虫