イナゴは、古代より「農作物を食い荒らす昆虫」として恐れられてきました。映画「エクソシスト」に登場する悪魔の像は、イナゴをモチーフにした悪魔の姿を模ったものといわれています。
しかし、人類は悪魔に例えられるイナゴさえも、昆虫食の食材としてきました。
イナゴは生物学的には「節足動物門・昆虫網・バッタ目・バッタ亜目・イナゴ科」に属しています。つまり、バッタとは近縁種なのです。イナゴとバッタの違いとして言われるのは体色の違いがありますが、実はもっとはっきりとした違いがあります。
それは「イナゴは飛ぶ」ということです。バッタは自分の身長の数十倍の高さまでジャンプする力をもっていますが、イナゴは翅を使って長距離飛行を行うことが可能なのです。
イナゴの大量発生による蝗害
イナゴを農業の天敵たらしめているのは、「蝗害」と呼ばれるイナゴの大量発生による農作物の食害です。昼間でも空が黒くなるほどに大量発生したイナゴの群れは、食料を求めて大移動を繰り返します。
大移動コースにかかった全ての植物は、群れを維持するためのエネルギー源として食い尽くされ、田畑は数時間の内にペンペン草一つ残っていない荒涼とした風景へと変貌してしまうのです。
蝗害に対して人類が打てる手段はほとんどなく、場当たり的な対症療法でイナゴの数を減らす程度しかないようです。
蝗害を起こすのはイナゴではない?
しかし、この蝗害はイナゴが起こしているのではなく実はバッタが起こしているものなのです。バッタにはごく狭い地域で密集し世代交代を重ねると、イナゴのように後ろ足が退行し翅が長くなる「相変異」という現象が起こるのです。
この相変異によって変化したバッタはイナゴとほとんど変わらない外見を持っていて、膨れ上がった群れを維持するために蝗害を起こすのです。しかし、相変異バッタとイナゴの見分けはほとんど付けられないほどに似ているので、蝗害を起こすのはイナゴということになっているのです。
このように、蝗害で農作物が食い荒らされてしまった人々は何を食べればよいのでしょうか。野菜類の代わりにイナゴを食べるしかないのです。また、イナゴ食は蝗害が発生していない時でもタンパク源として盛んに食べられていた食品としても知られています。
キリスト教の旧約聖書には、洗礼者ヨハネがイナゴを常食していたと記されておりユダヤ教における「イナゴなどのバッタ類は食しても良い」という根拠になっています。
イナゴを食べる
イナゴは、食植生をもつバッタ目の昆虫なので稲作をする上では害虫として扱われてきました。その為、イナゴは発見次第捕獲され当時の人々の食料として役立てられてきたのです。日本でのイナゴは、農作業中のおやつとして晩御飯のおかずとして様々に料理され、たんぱく質の摂取を助けてきたのです。
イナゴの調理をする前に
イナゴは調理する前に箱や袋の中に一晩ほど入れて絶食状態にして、フンを出させておく必要があります。また、イナゴにはハリガネムシなどの寄生虫の恐れがあるので生食には向いていません。熱湯で茹で上げるか火を通すかしてから調理するのが基本です。これらの下準備を行ってからイナゴの調理を行っていきます。また、足や翅は取り除いておくと口当たりが良くなります。
イナゴの佃煮の作り方
イナゴのもっともポピュラーな食べ方であるイナゴの佃煮は、農閑期における貴重なタンパク源として人々の食生活を支えてきました。イナゴの佃煮は甘辛い味付けでご飯の友に最適なおかずとして食べ続けられてきたのです。今回はイナゴの佃煮の作り方を紹介していきます。
イナゴの佃煮の材料
イナゴ…300g、砂糖…大さじ4杯、醤油…大さじ2杯、調理シ酉…小さじ2杯、油…大さじ1杯
イナゴの佃煮のレシピ
イナゴは下茹でまで終わったらフライパンで空炒りして水分を飛ばしておきます。足や翅は食べやすさを考えるならば取り除いておきましょう。
フライパンに油を引いたらイナゴを入れて中火程度で炒めていきます。香ばしい香りが立ってきたら砂糖と醤油を入れて全体に絡めていきます。
照りが出てきたらシ酉を入れて更にかき混ぜて、水気がなくなったら器に入れて出来上がりです。