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源氏物語

源氏物語は、平安中期の長編小説で、分量や内容、文学的成果を見ても後世に与えた影響はかなり大きなものだったといえます。作者は不明とされていますが、紫式部によるものだとするのが定説です。光源氏のプレイボーイぶりも、当時としては度肝を抜くものだったでしょう。日本文学の歴史に残る傑作と言われている作品です。

源氏物語の概要

源氏物語は54帖からなり、写本や版本で若干の違いはありますが、ほぼ100万文字に及ぶ長篇作で、和歌も800首近く含んでいる、典型的な王朝物語です。事実ではないことを事実のように作り上げることに目を見張るほど優れていて、心理描写の巧みさや、筋立ても、細部に渡ってよくできていて、文章の美しさ、美意識の鋭さから、日本文学史最高の傑作と言われています。文学史では、平安時代に書かれた物語では、源氏物語の前後で『前期物語』と『後期物語』に分けられています。この後に作られた王朝物語の多くは、源氏物語の影響を受けています。

物語の内容

藤原氏が摂関政治を行ったように、舞台は母系制が色濃く行われていた平安中期です。天皇の子として産まれてきたのに、皇太子となるどころか、臣籍降下して源氏の姓を名乗るようになった光源氏。数多くの恋愛遍歴を繰り広げつつ、1部では人臣最高の栄誉を極め、2部では晩年にさしかかり、愛情生活が破綻して無常を覚える様を描いています。老年となった光源氏を取り巻く子女の恋愛や、3部ではその孫達の恋が綴られ、長篇恋愛小説として、文句のつけどころがない首尾を整えています。『狭衣物語』は人物の設定や筋立てなど、源氏物語と多くの類似点があります。

各帖の名前

源氏物語の54帖には、全て名前がついています。紫式部が自分でつけたとする説と、後世の人々がつけたのではないかとする説があります。

名前

読み方

源氏

名前

読み方

源氏

1

桐壺

きりつぼ

誕生~12歳

28

野分

のわき

36歳秋

2

箒木

ははぎぎ

17歳夏

29

行幸

みゆき

36冬~37春

3

空蝉

うつせみ

17歳夏

30

藤袴

ふじばかま

37歳秋

4

夕顔

ゆうがお

17歳秋~冬

31

真木柱

まきばしら

37冬~38冬

5

若紫

わかむらさき

18歳

32

梅枝

うめがえ

39歳春

6

末摘花

すえつむはな

18春~19春

33

藤裏葉

ふじのうらば

39歳春~冬

7

紅葉賀

もみじのが

18秋~19秋

34

34

若菜

わかな

じょう

39冬~41春

35

41春~47冬

8

花宴

はなのえん

20歳春

35

36

柏木

かしわぎ

48歳正月~秋

9

あおい

22~23歳春

36

37

横笛

よこぶえ

49歳

10

賢木

さかき

23秋~25夏

37

38

鈴虫

すずむし

50歳夏~秋

11

花散里

はなちるさと

25歳夏

38

39

夕霧

ゆうぎり

50歳秋~冬

12

須磨

すま

26春~27春

39

40

御法

みのり

51歳

13

明石

あかし

27春~28秋

40

41

まぼろし

52歳の1年間

14

澪標

みおつくし

28歳冬~29歳

41

雲隠

くもがくれ

 

名前

読み方

15

蓬生

よもぎう

28歳~29歳

42

匂宮

におうのみや

14歳~20歳

16

関屋

せきや

29歳秋

43

紅梅

こうばい

24歳春

17

絵合

えあわせ

31歳春

44

竹河

たけかわ

14、5歳~23歳

18

松風

まつかぜ

31歳秋

45

橋姫

はしひめ

20歳~22歳

19

薄雲

うすぐも

31冬~32秋

46

椎本

しいがもと

23猿~24夏

20

朝顔

あさがお

32歳秋~冬

47

総角

あげまき

24歳秋~冬

21

少女

おとめ

33歳~35歳

48

早蕨

さわらび

25歳春

22

玉鬘

たまかずら

35歳

49

宿木

やどりぎ

25春~26夏

23

初音

はつね

36歳正月

50

東屋

あずまや

26歳秋

24

胡蝶

こちょう

36歳春~夏

51

浮船

うきふね

27歳春

25

ほたる

36歳夏

52

蜻蛉

かげろう

27歳

26

常夏

とこなつ

36歳夏

53

手習

てならい

27歳~28歳夏

27

篝火

かがりび

36歳秋

54

夢浮橋

ゆめのうきはし

28歳

紫式部

源氏物語の作者と考えられている紫式部は、平安時代中期の女性作家で歌人でもあります。女房名は『藤式部』紫は、源氏物語に出てくる人物、『紫の上』から、式部は、父が式部大丞だったことからきています。本名は分かっていません。『枕草子』の清少納言とライバルであったといわれることもありますが、実際は年齢も宮仕えの年代も10年ほど離れていて、面識はなかったようです。ただ、『紫日記』には、清少納言に対して、悪口とも取れる批評が残っています。

『清少納言こそ したり顔にいみじうはべりける人 さばかりさかしだち 真名書き散らしてはべるほども よく見れば まだいと足らぬこと多かり』(得意げに漢字を書き散らしているけれど、よく見ると間違いも多いし大したことはない)

『そのあなになりぬる人の果て いかでかはよくはべらむ』(こんな人の行く末にいいことがあるだろうか)

清少納言のことは辛口で攻めていますが、『素行はあまり良くないが、歌は素晴らしい』などと同輩の女流歌人、和泉式部のことを誉めていたり、赤染衛門には好感を見せていることから、ただの意地悪な女性ではなかったようです。

平安時代