よく分かる鏡の世界

腐食(シケ)

鏡は腐食しないように様々な加工が施されていますが、それでも長い間使っていると腐食してしまうこともあります。高温・多湿、長期間の使用によるこのような鏡特有の腐食のことを鏡業界では「シケ」と呼んでいます。ここでは、鏡の腐食(シケ)について説明しましょう。

腐食(シケ)の主な原因

銀や銅を腐食する物質の存在や、高温多湿環境に長い期間置いておくことによって、鏡の腐食が起こりやすくなります。ですが、ごく普通の環境下に置いているのであれば、それほど早い時期に鏡が腐食するようなことはないので心配ありません。ただ、まれなケースですが、鏡を取り付けてから短期間で腐食が発生することもあります。もし、そのようになってしまった場合、次のような原因が考えられます。不適切な加工や取り扱いにより、短期間でも腐食が進んでしまいます。

1.縁塗りが正しく施されていないか、または縁塗りがまったく施されていない場合

2.裏止めや縁塗りの部分の膜に何らかの原因で傷が付いて、メッキ部分が出た場合

3.鏡の裏面や端の部分に一度水が溜まると、抜けにくい構造になっている場合

4.温泉地など常に腐食する要素がある場所に置いている場合

腐食(シケ)が起こるしくみ

鏡は高温・多湿の環境下に置いておいたり、長期間使っているうちに塗膜を通して水分や酸素に触れてしまいます。塗膜、銅膜、銀膜、ガラス界面で局部電池作用が起きます。それによって、先に銅が腐食します。なぜ、銀よりも銅のほうが先に腐食してしまうかと言うと、銅のほうがイオン化しやすいためとされています。また、この作用を「犠牲防食作用」といいます。ですが、せっかく犠牲防食作用が働いても、水分や酸素による影響が何度も繰り返されているうちに、最終的には銀膜まで腐食が進んでしまいます。

水道水も腐食の原因?!

大気中には酸素、水道水の中には塩素があって、これらのものは酸化作用を持っています。なかでも水道水の中には、酸素と塩素の化学反応で発生した活性酸素と呼ばれる物質が存在します。この活性酸素は強力な酸化作用を持っているため、殺菌の目的から上水には塩素が含まれています。これらの物質が塩酸などの電解質溶液とくっついた場合は、その作用がいっそう強まると考えられます。従って、上水や酸化作用を持つ物質を含む液体が鏡の銀や銅膜に触れてしまうと、鏡は腐食されて、その性能が失われてしまいます。

腐食(シケ)の種類

腐食には種類があり、それらは大きく2種類に分けられます。「中(なか)シケ」と「縁(ふち)シケ」があります。 鏡のお手入れに関しては、メンテナンスのページで紹介していますが、腐食してしまった場合は、買い替えを検討しましょう。

中シケ

「中シケ」とは、鏡の塗装面から腐食性物質が入り込んで、銀・銅膜を腐食してしまう状態です。鏡の端以外の部分にまるく形を作って発生します。

縁シケ

「縁シケ」とは、鏡の切断面から腐食性物質が入り込んで、銀・銅膜を腐食してしまう状態です。主に鏡の端に半円状あるいは帯状となって発生します。