産業財産権著作権その他の知的財産権知的財産権の取得方法
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知的財産権には、作った時点で権利が発生する性質のものと担当省庁に登録することで権利が発生する性質のものがあります。しかし、前者の場合も担当省庁に登録を行わなければ権利の帰属先や権利が発生した時点が何時なのかがわからないという問題があります。だからこそ、知的財産権は登録すべきなのです。

知的財産権を得るには

知的財産権は、「創作・製作を行った人が、成果を生み出す過程で費やした時間や労力などのコストに見合う対価を得ることができるようにするための権利」であるといえます。成果主義や平等を謳い、他者の努力を横取りすることを正当化する者を肯定しないためにも必要な権利であるといえます。そのため、知的財産権が認められていることを公に証明するための登録は必要不可欠な作業のひとつであるといえます。

知的財産権を取得するメリット

では、知的財産権を登録出願して取得するとどのようなメリットが発生するのでしょうか。まず、考えられるのは「知的財産権の使用料」が発生することです。知的財産権には排他的使用権が付属するものがほとんどなので、権利者以外の他者が知的財産権を利用するには権利者からのライセンスを受ける必要があるのです。「権利者にお金を払うのは馬鹿らしい」と、無断で知的財産権を使用すれば権利者に与えられた権利侵害を排除する権利を行使されることになります。知的財産権はその名の通り、権利者の財産権を保護し金銭的な利益を与えるものなのです。

知的財産権を取得しないメリット

しかし中には、あえて知的財産権を登録しないという例が存在します。その例の一つがカラオケです。カラオケの発明者である井上大祐氏はカラオケの特許を取らなかったことで、「年間100億円に達するであろう特許使用料を貰い逃した」とも言われていますが、一方で「特許を取らなかったのでカラオケが英語圏の辞書に載るほどに普及した」とも言われています。特許をはじめとする知的財産権を取得しない、または権利を主張しないことで創作物や製作物が伝達し、さらに発展する可能性もあります。また、井上氏はタイム誌が選んだ「世界を変えたアジアの20人」に選ばれるなど、その名は世界的に知られています。知的所有権を取得しない場合は、金銭的な利益がまったく得られない可能性が高まりますが名誉などの人格的な利益を得られると考えるべきかもしれません。

知的財産権の登録にはお金がかかる

知的財産権を取得する上でネックになるのは、おそらく金銭的な問題です。物によっては「一年ごとに払わなければならないお金」があったり、「高いお金を払っても不備などで無駄になる」場合があったりと、素人ではそうそう手を出せない高い壁になっているケースがあります。登録出願の書類に関してはプロである弁理士や弁護士などに依頼するのが一番良いかもしれませんが、出願料とは別に依頼料が必要になってきます。こういった金銭面での問題が知的財産権への理解を遠ざけている面は否定できません。場合によっては、出願料の一部免除を受けられるケースがあるので関係省庁のウェブサイトなどを確認しておくと良いでしょう。

知的財産権取得の落とし穴

しかし、利益が発生するものにはそのお零れに預かろうとする者が沸いてくるのが世の常です。あなたがちょっとしたお金を持っていて「いいアイデアが浮かんだから、形にして知的財産権として登録したい」という考えを持っていたとします。それを実行しようとした時点で、さまざまな落とし穴があなたの行く手に広がっていくことにもなるのです。

非弁行為

最近問題となっているのが、「非弁行為」です。非弁行為とは、弁護士や弁理士といったハードルの高い国家資格を持っているように装ったり、行政書士が弁護士や弁理士の代わりを勤めたりすることを言います。行政書士の非弁活動は漫画にもなっているほどですが、基本的には違法行為なのです。偽弁護士や偽弁理士の場合、専門用語を知らない素人が騙されてしまうことも往々にしてあります。せっかくプロに頼むのであれば偽者ではなく本物に頼みたいものです。本物の弁護士や弁理士を頼むときは、「登録番号を確認する」「弁護士連合会や弁理士会などの公的機関を活用する」ようにしましょう。

著作権の私的登録

これは、文化庁・特許庁などの知的財産権を管理する官庁などで問題となっている事例です。日本における著作権は、創作した時点で発生する無方式主義を取っています。つまり文化庁での著作権登録は、「何時、誰が著作物を作ったのか」を明らかにするためのものという性質を持っていることになります。しかし、私的機関による「著作権・知的所有権の登録」が近年問題となっています。この登録業務を行っている組織は、「特許を得られない発明も著作権で保護できると説明」、「防御特許、先使用権などの法的には認められていない権利を謳う」などの知的財産権の概念とは違う「知的所有権」を看板にして登録を勧めているのです。これらの組織による著作権の私的登録は法律上何の価値も持たないこと、発明を著作権で保護できないこと、登録組織によって発明が既知のものになるため特許が得られる権利を失ってしまうことなどの問題があり、既に数件の訴訟が起こされています。この組織に登録しなければ著作権が発生するというわけではないので注意しましょう。

知的財産権に関する私的資格

いわゆる「資格」には、幾つかの種類があります。まず、弁護士や弁理士、医者などは国が定めた法律の下に実施される試験によって取得できる「国家資格」に当たります。そして、省庁や公的団体が主導して行う試験で能力を認定する「公的資格」、民間団体などが試験を行い認定する「民間資格」があります。民間資格の中にはTOEICのように信頼性の高い資格もあるのですが、信頼性の低いものも多く存在しています。知的財産権に関連する資格は、国家資格である弁理士・弁護士のほかに公的資格である知的財産権認定などがありますが、前述した「著作権・知的所有権の登録」組織が認定する私的資格も存在しているのです。この組織が認定している資格は取得したからといって弁理士のような活動ができるという性質のものではありません。「これからは知的財産権の時代」という資格公告には注意しましょう。

省庁に登録できる知的所有権の一覧

それでは、省庁で出願登録を受け付けている知的財産権にはどのようなものがあるのでしょうか?

産業財産権

知的財産権の花形といわれた特許・実用新案・商標・意匠の産業財産権は全て特許庁の取り扱いとなっています。出願書類は、必ずしも弁理士などのプロが書かなければならないというものではなく出願者自身が書いても良いのです。しかし、初めて出願する場合書式などがわからないこともあるので、弁理士に相談したほうが良いでしょう。

著作権

著作権は創作した時点で発生する知的財産権ですが、世に出るタイミングによっては誰にも知られることがないままということも少なくありません。文化庁が行っている著作権の登録は、公報を使ってどのような創作物の著作権がいつ誰に発生したかを明らかにするのに有効な手段です。

育成者権

育成者権の登録業務は、農業を担当する農林水産省の管轄です。農作物の新品種は市場の主力商品になれる可能性を秘めているといっても過言ではないので登録しておくべきでしょう。

回路配置利用権

回路配置利用権の登録は、特許庁の上に位置する経済産業省の管轄業務です。基本的には半導体集積回路の重要性は言うまでもないことですが、今後の文化・技術の発展に大きな影響を持つ分野なので登録を忘れないようにしたいものです。