特許は、知的財産権の中でも古くから知られた存在です。「特許を取得できれば一攫千金」といういささか誇張された事実が喧伝されたことで発明ブームが巻き起こったように、特許は発明の代名詞ともなっています。しかし、私たちはどこまで特許について知っているのでしょうか? 特許を詳しく知る日本において特許制度が誕生したのは1885年からのことです。当時の日本は明治時代で、国力の増強を図る政策が次々と施行されていた時期でもあります。諸外国から取り入れた工業技術だけでなく、日本独自のものを作り出す気風を求めていたと見ることが出来ます。 [ スポンサードリンク ]
特許とはどのようなものか特許は、工業所有権または産業財産権に分類される知的財産権の代表格です。特許庁で扱われる知的財産権における最大の目玉と言っても過言ではないでしょう。特許は出願してすぐに認可されると言うものではなく、特許庁に所属する審査官によって「既存の特許と重複していないか」「特許の要件を満たしているか」などについて審査され、合格したものだけを認可するシステムになっています。 特許の条件しかし、全ての発明が特許として認められるわけではありません。特許法で定義された次の要件を全て満たしていることが特許認可の条件となるのです。 産業上利用可能性があること産業として定義されている業において利用できるものが発明とみなされます。産業と言うのは工業・商業・農業・漁業があり、限定的に医療が含まれる場合があります。つまり、誰も使わないような発明を自己満足で出願しても、利用されない時点で除外されるのです。 新規性のあること特許法で定義される「新規性」とは、「発明者以外の人が知らないもの」であると考えてよいでしょう。つまり、公開と出願のタイミングを間違えるとそれだけで新規性が失われてしまうことに繋がるのです。しかし、幾つかの条件下にあった発明品は一定の手続きを行えば例外とされるようになっています。 進歩性があること進歩性とは、「既存・既知の先行技術の延長上になく、容易に成し遂げられないものである」ということです。つまり、現存の手法で容易に作り出せる発明は進歩性がないとみなされます。 先願された同一の発明が存在しないことこれは、電話のエピソードを具体例とすればわかりやすいのではないでしょうか。「電話の父」と呼ばれるベルが電話の特許出願手続きを行った2時間後に同じく電話の特許出願を行いにきたイライシャ・グレイは、電話の発明者になることは出来ませんでした。つまり、特許は「先に出願したものを優先する」のです。 公序良俗に反しないものであること法律などの秩序を乱しうる、もしくは道徳に反する発明に対して特許認可は与えられません。 特許の要・発明とはでは、特許の対象になる「発明」とはそもそもどのようなものになるのでしょうか? 発明とは自然法則を利用するものである日本の特許法において、発明とは「自然法則を利用するものである」と定義されています。自然法則とは、万有引力の法則やオームの法則などに代表される「人間が経験的に自然の中から見出した法則」のことを言います。 技術的思想発明においては、個人差のある「技能」ではなく訓練を受ければ万人が習得できる「技術」に基づいていることが重要視されます。つまり、生来的な能力に基づくものではなく後天的に教えられることが前提となるのです。 創作性の有無よく言われるのが、「発明は発見ではない」ということです。自然界に存在する物質を発見したとしても、そこには「創作性」が無いのです。発見した物質を合成して新しい化学物質を作り出し、既存の物質を合成・抽出する方法を確立するのは「発見」ではなく「発明」とみなされます。 発明と看做されないもの特許庁には、毎年同案の特許出願がなされ審査除外される「発明」が全出願件数の5%以上あるといわれています。これらの「発明」は、過去に「発明ではない」と看做されているものがほとんどなのです。では、どのようなものが発明と看做されないのでしょうか? 複数の発明を組み合わせただけのもの特許・実用新案共に審査除外されるのが、「複数の発明を組み合わせただけのもの」です。発明の入門書の中には「鉛筆に消しゴムを付けただけで財を築いた」というエピソードが紹介されているからか、組み合わせ物は毎年多数出願されているようです。その際たるものが「鉛筆削りを二つ組み合わせて一度に二本の鉛筆を削れる削り器」や「両端に頭を付けたマッチ棒」などです。 産業利用可能性が皆無なもの同じく、「現在では廃れているものを改良した発明」も審査除外の対象となっています。たとえば「牛乳瓶の蓋を取りやすくする改良」が審査除外の常連になっているのですが、現在ではそう多くは使われていないものの改良を行っても利用可能性がほとんど存在しないのです。 自然法則に反するもの将来的な石油資源の枯渇に危惧を抱いて「永久機関」を発明した、という自称科学者による永久機関の出願も後を断たないようです。しかし、永久機関は「外部からのエネルギー供給なく運動し続ける」もので自然法則である熱力学第一法則(エネルギー保存の法則)・第二法則(エントロピー増大の原理)に反するものである為、たとえ本物の永久機関を作っても永遠に審査されることは無いのです。 特許の利点では、これらの条件をクリアーしてでもほしい特許にはどのようなメリットが存在しているのでしょうか? 特許の排他的独占特許を取得することによって、特許法で定められている「特許権による排他的独占」が可能になります。これは、特許を取得した発明を発明者の許諾なく製造したり複製したりすることを禁止できるのです。 特許の実施権実施権とは、特許権者が特許発明を製造するために他者に与える権利のことです。実施権には「専用実施権」と「通常実施権」の二つがあります。専用実施権は、特許権者と契約した実施権者に与えられる権利で、複数人に同時に与えることは出来ません。専用実施権を得た製造者は、特許権者とほぼ同等の権利を持ち排他的独占と権利侵害の排除を行うことが出来ます。通常実施権は、一度に複数人の実施権者に与えることが出来る権利で排他的独占は出来ません。専用・通常ともに実施権契約を結んだ実施権者は、特許原簿に登録されていないと第三者による特許権の侵害に対抗手段を持たないことになります。 契約による特許権使用料などの発生発明を身近なものにしたのが、特許権使用料といえます。実施権の設定に伴う契約の際に、特許権者は実施権者との間に使用料の設定を行うのが一般的です。この特許権使用料をロイヤリティと言います。ロイヤリティには「特許発明が一個売れることに○○円」といった出来高払いと、一括払いの二種類あります。 特許権の期限どのような権利においても、全てに期限があります。特許権の場合、特許認可から20年が経過すると特許権が失効します。特許権が失効するとまず排他的独占が出来なくなります。特許権の失効の判りやすい例には、任天堂のファミコンがあります。数年前までは特許権が有効だったので、ファミコンの互換機は違法とされ日本国内では表立って扱える商品ではなかったのですが、現在は特許権が失効したのでディスカウントショップなどでも簡単に互換機を入手することが出来ます。 [ スポンサードリンク ]
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