産業財産権著作権その他の知的財産権知的財産権の取得方法
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prologue

私たちの身の回りにあるものは、そのほとんどが産業によって作り出されたものです。産業が製品を作り出すには、まず開発費・材料費・人件費・施設維持費などの生産コストを負担しなければなりません。これらのコストは製品の販売で回収されるのですが、もしもコピー商品によって生産コストの回収が出来なくなったらどうなるでしょうか? 産業財産権は、産業を正常に運営する為に欠かせない潤滑油なのです。

産業財産権とは?

産業財産権は別名「工業所有権」とも言い、工業または産業に関わる製品の生産と消費を円滑に行う為の知的財産権です。産業財産権は、1883年に制定された「工業所有権の保護に関するパリ条約」によって定められたものです。このパリ条約に参加する国は、工業所有権を保護する義務を負います。日本では「工業財産権」よりも「産業財産権」の方が一般的に使われています。

産業財産権の特性

産業財産権は、工業のみならず産業によって生産される製品について発生する知的財産権を保護する役割を持っています。日本における産業財産権は、特許庁の管轄として扱われています。

産業財産権に属する権利

日本において、法的に定められた産業財産権は次のようになります。

特許権

最も有名な知的財産権である特許権は、産業財産権に属しています。特許は産業を支え産業を発展させる為に必要不可欠な存在であると言い切っても過言ではありません。

実用新案権

実用新案権は、特許をアイデアによってより良くするものです。企業だけではなく、個人からも生み出されるアイデアを保護することで、産業を活発にする狙いがあります。

商標権

商標権は、産業によって生産される製品や提供されるサービスの出所を明らかにし、選択を間違わないようにする役割を担っています。

意匠権

意匠権はデザインに関する知的財産権で、使いやすさや印象を考えて作られたデザインを保護するだけでなく外見を模倣したコピー商品を生産することを防止しています。

もしも産業財産権がなかったら…

では、産業財産権が保護されていなかったら工業・産業を含む経済活動はどのような影響を受けるのでしょうか?
まず、第一に考えられるのは「コピー商品・模倣品の横行」です。デザインの模倣や商標の不当使用は意匠権と商標権で禁止されていますが、それらの権利が保護されない場合コピー商品や模倣品が大手を振って市場に出回ることが出来ます。
第二に「廉売による市場の崩壊」があります。特許権や実用新案権で保護される産業製品の設計や構造は、実物があればほとんどコピーすることが出来るといっても過言ではありません。新製品を開発したそばから人件費などが安い国で大量生産されたコピー商品が流入することで、正常な経済活動を行う市場は崩壊します。
第三の影響は「市場崩壊による企業倒産」です。企業と言うものは、正常な経済活動が行われていることが成立の大前提になっています。しかし、正常な経済活動が行われず新製品の開発を行ってもコストが回収できないとなると、企業の存続は不可能になります。

産業財産権を守ることとは私たちの生活を守ること

つまり、産業財産権を保護すると言うことは正常な経済活動を保護し、私たちの生活を成立させると言うことなのです。産業製品を買うことで産業が潤い、産業社会は新製品の開発を行い、給料を労働者に分配します。労働者はもらった給料で家庭生活を支え、産業製品を購入します。この資本の循環が経済活動の基本的なサイクルなのです。産業財産権は、産業製品に関する権利を保護することで、正常な経済活動を円滑に活動させる力を持っているのです。

産業財産権のこれから

日本では、バブル崩壊後の不景気から脱却する手段の一つとして2002年に制定された「知的財産戦略大綱」で、産業財産権をはじめとする知的財産権の重視を打ち出しています。この「知的財産戦略大綱」は、「知的財産を保護することで、知的財産の創出を促し経済競争力を高める」ことを目的としています。つまり、かつてナンバーワンであった日本の産業を、オンリーワンの知的財産によって新しい強さを与えることなのです。今後、産業財産権は日本の産業を支える柱になると同時に、知的財産としても活躍することが期待されています。