産業財産権著作権その他の知的財産権知的財産権の取得方法
TOP >> その他の知的財産権 >> オープンソース
prologue

基本的に、パソコンソフトというものは高額商品の代表格でした。商品と言うものは需要に対して供給を行うことで成り立つ存在ですから、需要が少なければ供給元は商品開発に掛かった経費を商品の価格に反映させて回収しようとします。需要が大きく、供給元が乱立している状態であれば供給元は少しでも価格を下げて競争に勝とうとします。こういった市場原理の競争の元でパソコンソフトは、技能のある有志によって自作され配布されていきました。そんなパソコンソフト独自の文化が生み出したのがオープンソースなのです。

オープンソースを知る

ITニュースなどで取りざたされるオープンソースという言葉を一度は耳にした人も多いのではないでしょうか? しかし、その意味を具体的に把握できている人はそう多くは無いでしょう。門外漢ともなればなおさらです。中には「オーブンソースってぇのは、電子レンジで作るソースを使った料理のことかい?」という人も居るかもしれません。

「オープンソース」の意味

まず、オープンソースと言う言葉を分解していきましょう。オープンソースの「オープン」には「開放する」「公開する」と言った意味があります。そしてオープンソースの「ソース」とは、わかりやすく言えば「プログラムの記述内容」です。コンピューターにおけるプログラムは、プログラム言語によって記述・作成されています。コンピューターは0と1の羅列である「アセンブリ言語」で情報を理解していますが、人間にはアセンブリ言語を理解することはとても困難なことです。その為、人間がプログラムを作る際には0と1の羅列に変換が容易な「高級言語」と呼ばれるプログラム言語を使用しています。この高級言語で書かれたプログラムの記述内容こそが「ソースコード」なのです。つまり、オープンソースと言う言葉は「プログラムの内容を公開している」という意味なのです。

オープンソースを生み出したもの

オープンソースの土壌となったのは、パソコンソフトの持つ背景そのものです。前述のように、昔のパソコンソフトはとにかく値が張るもので、よしんば購入できたとしても自分の望んだ機能が期待はずれということも少なくなかったのです。その為国内外のパソコンユーザーには「無いものは自分で作れ」の精神を養う必要があったのです。この精神は、パソコンソフトが溢れる現在においても根強く残り、オープンソースの概念を生み出していったのです。

オープンソースの代表格・Linux

オープンソースと言えば、すぐに思いつくのがパソコンOSの「Linux」です。Linuxはフィンランド出身のリーナス・トーバルズによって製作されたOSです。リーナスは大型コンピューターに使用される「UNIX」というOSに似た「Minix」と言う名の教材用OSをより使いやすくする為のプログラミングを始めたのです。ある程度出来上がったソフトをパソコン通信上で「Linux」として発表したことが話題を呼び、Linux開発に協力する有志が集まっていったのです。現在では、世界中にLinuxの開発協力を行う有志とLinuxの使用者が広まっています。日本では、栃木県二宮町が役場内のパソコンのOSを全てLinuxに変更したことが知られています。

オープンソースとフリーソフトウェア

実はオープンソースという概念は誕生してまだ10年ほどなのです。オープンソース誕生以前に使用されていた概念としては「フリーソフトウェア」というものがあったのです。

フリーソフトウェアとは何か

フリーソフトウェアは、現在のネット上で使用されている「無料のソフトウェア」と言う意味の「フリーソフト」とは違った意味を持った概念です。ここでの「フリー」とは「無料」ではなく「自由な」という意味なのです。つまり、「フリーソフトウェア=自由なソフトウェア」なのです。

フリーソフトウェアを知る

フリーソフトウェアは、前述のUNIX OSのユーザーの中から生まれた概念です。フリーソフトウェアの概念は、「プログラムの著作権を製作者に残したまま、自由にソフトウェアを使用してもらい、改変・再配布を許可する」という知的財産権の考え方からすればまさにコペルニクス的転回を含むものでした。開発されたソフトウェアは、使用されているうちに何らかの不満や不具合が見えてきます。これらの不満や不具合を解消するのは開発者に限られ、使用者は開発者に対して相当の対価を払う必要があったのです。時には、ソフトウェア自体を買いなおすこともあるほど、その対価は高くつくものでした。ユーザーの中には「自分でプログラムを直した方が速いし、何より安上がりだ」と考えられるだけの技量を持っている人も居ます。そういった人たちを掬い上げ、ソフトウェアの発展に手を貸してもらうのがフリーソフトウェアと言う概念なのです。

フリーソフトウェアからオープンソースへ

ただ、フリーソフトウェアという概念を広める為には大きな問題がありました。それは名称そのものです。前述の通り、「フリー」という言葉には「自由」と「無料」の二つの意味が存在しています。無料のフリーソフトと紛らわしい名前であることが、フリーソフトウェアの概念の足を引っ張ったのです。そこで、フリーソフトウェアの持つ理念をより明確に表現する言葉として「オープンソース」が生み出されたのです。

オープンソースソフトの条件

開発されたソフトウェアが、オープンソースソフトであることを主張するにはオープンソースを推進する団体によって制定された規準に沿っていなければなりません。

自由に再配布できる

基本的に、パソコンソフトという商品は再配布を禁止しています。やり方によっては原本と何も変わらないコピーを幾らでも生み出せるからです。しかし、オープンソースソフトの場合は、再配布をまったくの自由としています。この項目には「無償配布や有償配布を行うことを原作者の持つライセンスで制限してはならないこと」、「オープンソースソフトの利用料や印税の徴収をしてはならないこと」が含まれています。

ソースコードを公開し入手しやすくする

オープンソースの最大の魅力と言えるのが、「ソースコードが明らかになっていること」です。これによってユーザーは、不満点を解消し更に新しい機能を付加したバージョンを製作する自由を持っているのです。ただ、オープンソースソフトを改変したユーザーもまた改変後のソースコードを公開する義務を負います。もっと洗練された記述に改変するユーザーや、低性能のパソコンでもストレス無く動かせる軽快なソースコードを書けるユーザーも居るのです。オープンソースソフトは、そういった可能性を内包しているのです。

派生ソフトウェアの存在とライセンス

LinuxがMinixから派生して生まれたように、オープンソースソフトの中には公開されたソースコードから新しいソフトウェアが生まれる可能性を秘めています。そういった派生ソフトウェアの存在を許すと同時に、派生ソフトウェアは元のオープンソースソフトと同じ配布条件で配布されることが許されなければならないのです。

原ソースコードの完全性の維持

パソコンソフトにおいて、「パッチ」と呼ばれるプログラムが配布されることがあります。パッチプログラムはその名の通り「継ぎ当て」をすることで、ソフトウェアに新しい機能を付けたり、外見を変化させたりすることが出来ます。しかし、オープンソフトウェアのライセンスでは「元々のソースコード」と「パッチプログラム」をセットにして配布する必要があります。「どこがパッチプログラムによって変わるのか」が明示される必要があるのです。

個人・グループに対する差別をしない

オープンソースというプロジェクトは、常に人手を必要としています。不具合を見つけ出すユーザー、不具合を治せるユーザー、新しい機能を追加できるユーザー、プログラム記述をより洗練してわかりやすくできるユーザーと、人手はあっても足りないくらいです。人的資源が命であるオープンソースは、誰にでも門戸を開いているのです。

利用する分野への差別をしない

オープンソースソフトを利用する人の中には商業ソフトを目の敵にしている人もいます。その嫌悪感が更に強まって、商業目的での使用までも禁止したいと考える人も居ます。しかし、そういった区別なくユーザーを増やすことこそがオープンソースソフトのプロジェクトの命題であると言えます。

ライセンスの条文を追加しない

利益を目的に行動する人は、システムの本来の使い方から逸脱した手段を見つけ出す能力に長けていると言えます。そういった人は「オープンソースソフトが多大な支持を受けている」と知れば直ちに行動を開始して、自分に利益が集中するライセンスの条文を追加してしまう可能性が大なのです。しかし、オープンソースソフトは最初に配布されたバージョンでのライセンスを受け継ぐことを明記しています。つまり、利益だけを横取りしようとしても出来ない仕組みになっているのです。

特定製品のみに依存しない

ゲーム機などのように、特定の製品上でしか作動できないソフトウェアはオープンソースソフトにはなりません。オープンソースは全世界に向けられたものである以上、「特定の国でしか手に入らないコンピューター上でしか動かない」というような構造やライセンスであってはいけないのです。

他のソフトウェアを制限しない

商業ソフトを嫌う人たちは、時として「自分の作るソフトウェアと一緒に商業ソフトを使って欲しくない」と、ライセンスで商業ソフトの制限をかける場合があります。これは日本の法律では「不正競争防止法違反」になる恐れがありますし、ユーザーがどのソフトを選ぶかを決めるのはユーザーの権利なのです。

オープンソースの利点

では、ソフトウェアをオープンソース化することでどのような利点が発生するのでしょうか?

開発・改善の為の経費が抑えられる

ソフトウェアの開発は、オープンソフトが登場するまでは「伽藍方式」と呼ばれる手法で行われてきました。伽藍を建築するように、製品として公開するまで開発過程と経過を非公開にして、少人数でコツコツ作っていくというものです。それに対して、オープンソフトはいわば「バザール方式」と呼ぶべき手法を用います。賑やかなバザールのように、誰でも好きなときに自分の出来る範囲で参加するというもので、インターネット上で開発を行う場合有効な手法といわれています。バザール方式の場合、熱意を持ったボランティアが開発に参加してくれるので、経費の大半を占めるといわれる人件費を抑えることが出来るのです。

沢山のアイデアを得られる

アイデアは、商品開発において多大な役割を持っています。その為企業はアイデアを捻出するためにブレーンストーミングや、お客様からの要望に耳を傾けているのです。オープンソースプロジェクトの場合、参加する全てのユーザーがお客様であると同時に開発者となります。一人ひとりがアイデアを出し、具現化して実装するだけで、そのソフトウェアは価値のあるアイデアを手に入れているのです。

広告費ゼロで世界中に宣伝

オープンソースのプロジェクトは、基本的にインターネット上で行われています。その上、プロジェクトに参加したがるユーザーは世界中に数多く居ます。つまり、オープンソースプロジェクトにするだけで、絶大な宣伝効果が得られると言うわけです。

オープンソースの弱点

ただ、オープンソースにすればこれらの効果が得られるというわけではありません。ソフトウェアそのものが完成に至らなければ、プロジェクト自体が砂上の楼閣になってしまうからです。オープンソースソフトのプロジェクトを成功させるには、参加しているユーザーの熱意を妨げることなく、ユーザーの総意を纏め上げる優秀な調整者が必要になるのです。



このページをブックマークする