発明にしても著作物にしても、その創作の段階で大きな原動力となるのは基本的にお金であると言えるでしょう。発明は斬新なもの・有益なものほど特許でお金を得るのが簡単になります。しかし、著作物の場合はアイデアからの創作物という前提ゆえに様々な場面での衝突が往々にしてあるため、簡単にお金を得ることは出来ないものといえます。著作物でお金を得る為に活躍する権利、それが著作財産権なのです。 著作財産権を知る著作財産権は、著作権の別名ともされる知的財産権です。著作財産権は、その名の通り「著作物で発生する財産権に関する権利」です。著作物の運用によって発生する著作権者の利益を守るのが著作財産権の役割で、名誉などを守る著作者人格権とは対極に位置する権利であるといえます。 [ スポンサードリンク ]
著作財産権の中身著作財産権は、著作者人格権と同じく複数の権利が複合する形で成り立っている知的財産権です。著作財産権は次のような権利から成り立っています。 複製権複製権は、著作物をコピーする為の権利です。昔のように著作物のオリジナルを回し読みや巡回など広めることはほとんど無いといってもいい時代です。大抵の著作物は、活字・CD・DVD・ネットなどの媒体を通して拡散していきます。この拡散の過程で著作物を媒体に合わせて複製する為の権利が複製権なのです。 上演権・演奏権上演権・演奏権は、公衆を対象に音楽や演劇の著作物を実演する為の権利です。ピアノが置いてある喫茶店などでの演奏が槍玉に挙げられることが多いのはこの演奏権絡みによるものです。上演権の中には上映権というのもあり、上映権は映画館などのスクリーンで、伝達権はテレビなどの受信装置を使ったメディアにおいて著作物を不特定多数の公衆に見せる為の権利です。 公衆送信権公衆送信権は、インターネットやラジオ・テレビなどの不特定多数に向けて著作物を発進するための権利で、「放送権」「有線放送権」「送信可能化権」から成り立っています。 展示権展示権は、絵画や彫刻などの美術の著作物や写真の著作物を集めて展示会を行うと言った展示に関する権利です。 口述権口述権は文学などの著作物を、不特定多数を対象に朗読するための権利です。朗読は様々な人によって行われていますが、著作権が関わってくる活動でもあるのです。 頒布権頒布権は「映画の著作物」を著作者が独占的に複製し譲渡・貸与を行うための権利です。テレビゲームなども判例から「映画の著作物」と判断されることがあります。 譲渡権譲渡権は、映画以外の著作物を広める為にオリジナルやコピーの原稿や記録メディアを他者に譲渡する権利です。 貸与権貸与権は、譲渡権と同じく映画以外の著作物をレンタルで広める為の権利です。 翻訳権・翻案権翻訳権は、著作物が製作された国以外の言語に翻訳する為の権利です。翻案権は、著作物を元に翻案して新しい著作物を作り出す為の権利です。 著作財産権の性質とは著作財産権は、著作者人格権が「著作者の名誉」に関わる権利だったように「著作物を市場に流通させることで発生する財産権に関する」権利で、「著作権の本質」として扱われる知的財産権です。その為、個人のみに帰属する名誉とは違いお金の性質に従った運用が成される性質を持っています。 他者に譲れる著作財産権基本的に、「権利」と言うものはそれぞれ個人に帰属する性質のものと、契約によって他者に譲ることの出来る性質のものに二分されます。著作財産権は後者に属し、著作者以外の他者に権利を譲渡することが可能です。なぜなら、著作物は著作者だけの力で公衆に広めることは極めて難しいからです。 著作財産権が譲渡できる理由どんなに素晴らしい文学作品でも、自費出版では自分の資本以上に本を刷って、全国の書店に並べてもらうことは出来ません。映画にしても、どんなに出来が良くても大型劇場で上映されるチャンスが与えられることは極めて稀です。音楽はライブなどで小規模のハコ(会場)を転々として広めていくことは出来ますが、肉体的にも資本的にも難しいと言えます。ゲームも、近年はインターネットの発達などで発表の場は増えていますが、テレビゲーム機やゲームセンターで遊ぶ為には、企業とライセンス契約を結んでパッケージ化してもらわなければなりません。つまり、著作財産権の譲渡は著作物を不特定多数の公衆に提供する為にはなくてはならないものであると言えます。 著作財産権の役目著作財産権は、わかりやすく言えば「著作物を創作した著作者に正当な対価を還元する為の権利」です。著作物の創作には、様々なコストが掛かります。創作にかけた日数分の食費や電気・水道代などの光熱費、寝起きや作業をする家や事務所の家賃、創作物の材料費、創作に必要な道具の費用と、挙げ出せばきりが無いほどです。これらをまとめた創作コストを著作物の販売によって賄い、利潤を得るには著作財産権が必要不可欠になるのです。 著作財産権がなかったら…では、もしも著作財産権が無かったら著作者はどうなってしまうのでしょうか。簡単に言えば、「無秩序なコピーが行われ、創作コストを考慮した著作物の価格が原価割れを起こして、著作者に正当な対価が渡らなくなる」のです。東南アジアでは、日本では5000円前後するゲームソフトの海賊版が300円程度で流通しています。著作権と言う概念が薄い国では、コピーに継ぐコピーが繰り返され価格競争でイケイケドンドンのダンピングが行われるのです。これと同じことが日本などでも行われると、著作者の創作意欲が減退して文化の後退に繋がっていくことにもなりかねないのです。 著作財産権の保護期間を考える著作者人格権は著作者の逝去と同時に失効する権利ですが、著作財産権の場合著作者だけでなく出版社・映画会社・レコード会社などの著作物の普及を主導する第三者が存在することがほとんどの為、著作者没後50年に渡って著作財産権の続行が認められています。しかし、近年では著作者側からの「50年から70年保護期間の延長」を望む声が高まっている現状があります。ある作家が保護期間延長のフォーラムの中で「作家とその家族は蕎麦屋やうどん屋と違って著作権法で保護されて当然。ソバやうどんは私にだって作れる」と言う趣旨の発言をしたことで話題となりました。では、保護される期間が長いほうが良いのでしょうか? アメリカにおける著作財産権の保護期間アメリカでは、某アニメ制作会社の政府に対するロビー活動によって著作財産権の保護期間がどんどんと延長されていることが良く知られています。これは、アニメ制作会社の創業者が著作権で苦渋を舐めたことに由来すると言われています。しかし、この保護期間の延長は批難が多く存在しています。「一社の利益を保護する為だけに法改正を行わせるのは、果たして法の精神である『公共の福祉』に反していないのか」ということです。しかし、日本ではアメリカを参考にした著作財産権の保護期間延長を望む声が著作者から上がって居るのです。 著作財産権の保護期間延長は子孫のためになるのか日本には「子孫に美田を残さず」という言葉があります。この言葉を唱えたのは明治の偉人・西郷隆盛であるといわれています。『子孫に財産を残すことは財産への執着は争いの種になるし、財産に頼って努力を怠るようになるので良くない』という意味です。著作者の没後も利益をもたらす「美田」を長く残すことは、果たして子孫の為になるのでしょうか? 先のそば屋・うどん屋の喩えを取るならば、店の主人がどんなに美味いメニューのレシピを残しても、どんなに名前が知れ渡っていても後継者が育っていなければ無意味です。後継者が努力して味を作り出さなければ飽きられてしまいます。こういった観点が昨今の延長議論から抜け落ちているのです。 [ スポンサードリンク ]
このページをブックマークする
|