二十間坂を通っていると横に見える黒い屋根の寺院です。大きく重厚感が溢れる純和風の建物ですが、鉄筋コンクリートを使用しています。これは日本で最初のことであり、国の重要文化財にも指定されています。
この寺院の始まりは1641年、松前の専念寺六世であった浄玄が渡島国上磯郡木古内村に阿弥陀堂を建設したことです。1709年に亀田郡の箱館に移転しますが、大火のため、1915年に現在の場所に移転してきました。その際に、今まで数度の火災に悩まされていた檀家の総代は不燃素材での建築を主張したため、鉄筋コンクリートでの建設となったのです。
しかし、建設当初はその鉄筋コンクリートが問題を引き起こします。「人々に踏まれた不浄な土砂を使って寺院を建てることはご先祖様に申し訳ない」や、「寺院の大きな屋根を鉄筋コンクリートで支えられるのか」などと不安や懸念の声が上がり、寄付金が思うように集まらなかったのです。それを解消するために、芸者を高床にあげて手踊りをさせ、皆を安心させたというエピソードがあります。
2007年に国の重要文化財に指定されたこの寺院は、この異国情緒溢れる元町で堂々と日本らしさを見せる建物と言えるでしょう。