
最近は化学調味料の発達で、煮干から取った出汁で作ったお味噌汁を朝ごはんにする機会がめっきりと少なくなってしまいました。
太陽と潮にさらされて熟成された煮干の独特の香りは、細胞の一つ一つを目覚めさせ食欲を増進させる力を持っています。小さな煮干に凝縮された旨味は、料理の美味しさをいっそう引き出してくれます。
そんな煮干の真価に迫っていきます!

煮干は、鰯などの小ぶりの青魚を“煮て”、“天日干し”して乾燥させた魚の干物のことです。関西方面では「雑魚(じゃこ)」、中国地方では「いりこ」とよばれています。
煮干の始まりは江戸時代に遡り、綿花栽培のための肥料として用いられるようになった「干鰯(ほしか)」にルーツがあるといわれています。当時から鰯は大量に取れる大衆魚でしたが、見向きされない魚だったのです。
大阪などに持ち込まれた鰯は、魚油を抜き取り干鰯に加工され関東方面に出荷されたのですが、最盛期には鰯が足りなくなりニシンを代用したといいうエピソードも伝えられています。
煮干の種類
煮干の原料となっている魚は、鰯をはじめとする青魚が主流となっています。煮干の大半を占めているのがカタクチイワシ製のもので、年中市場に出回っています。
他にも高級品とされるウルメイワシ、九州方面で「あご」と呼ばれるトビウオ、アジ、サバなどがあります。変わったところでは幼魚の段階では光り物として扱われる鯛の煮干、人気ラーメン店「麺屋武蔵」が使い有名になった秋刀魚の煮干などがあります。
煮干が持つ栄養価

青魚を加工した煮干には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)をはじめとする不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
しかし身体にいい不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、煮干の保存を難しくする要素となっています。
また、煮干は小魚を丸ごと加工するので骨を気にせずに食べることが出来るのでカルシウムや鉄分を効率よく摂取することが出来ます。
煮干の原理
煮干は、一度熱湯で煮ることで魚の身肉のたんぱく質を凝固させています。たんぱく質を凝固させることで後の天日干しで水分を逃がしやすくするのです。また、凝固したたんぱく質が栄養分を逃がさないようにするのです。
天日干しによる乾燥は、好気性の微生物の活動を活発にして、たんぱく質の分解による旨味成分のイノシン酸の生成を促進します。また、紫外線に当たることで骨を作るビタミンDが生成されるという利点も生まれるのです。
では、煮干で出汁を取る方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
本格的な方法と能率のいい方法を解説していきます。
本格的な煮干だしのレシピ
昆布だしや鰹節だしなどのように、鍋で煮込んで出汁をとるのが伝統的な煮干だしのとり方です。
煮干だしは、そんなに時間は掛からないので忙しい朝でも前日に準備しておけばいつでも本格的なお味噌汁で朝ごはんを食べることが出来るのです。
煮干だしの作り方
- 水1リットルに対して、煮干は20gから30g程度を用意します。煮干の頭とはらわたは、苦味の元になるので気になるという人は出汁を取る前に取り除いておきましょう。煮干は脆いので指で簡単に取り除けます。また、フライパンなどで空炒りしておくと臭みが消えます。
- 下処理をした煮干は水を汲んだ鍋に入れて30分以上置いておきます。水に浸けておく時間は一晩でも問題はありません。
- 充分に煮干を水に浸けたら、鍋を火に掛けて沸騰させます。アクが浮いてきたらアク取りして、布などで出汁を濾して出来上がりです。
煮干だしの活用法
取った煮干だしは味噌との相性が良く、お味噌汁や豚汁などにぴったりです。
また、出汁を取った後の煮干は、お味噌汁の具にしたり南蛮漬けにしたりサラダの具にしたりしてもいいですね。
ズボラに煮干だしをとる方法

「時間が無い、でも煮干で出汁を取りたい」という人にうってつけなのがこの方法です。
やり方は簡単、煮干をフードプロセッサーやすり鉢などで粉々に粉砕しておくというものです。
密閉できる瓶などに保存しておけばすぐに使える上に、煮干のカルシウムも逃さず摂取できます。
この方法は昆布や鰹節などにも有効で、忙しい人にもおススメです。