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統合失調症という病名は、最近使われるようになった言葉で、かつては精神分裂症と言われていました。
精神分裂という言葉が誤解を招きやすいという理由により言葉を変えて呼ぶようになりましたが、この統合失調症は精神分裂と言った方が症状のイメージはつかみやすいと思われます。
統合失調症とは
統合失調症とは、何らかの精神的な異常を起こしている病気の総称です。
思考のまとまりがなくなり、周りから見れば発言や行動に一貫性が見られなくなるのが特徴の一つです。本人の方もそれが異常事態であることに中々気づきません。
統合失調症が進行すると、幻覚や妄想が起こるようになり、わけもなく怒り出したり、逆にふさぎこんだりします。症状がさらに悪化すると、最近問題の引きこもりになってしまうこともあります。
統合失調症は珍しい病気ではない
平成17年の国の調査によると、統合失調症と診断されて治療を受けた患者数は約76万人です。これは、過去の調査結果と比較すると、年々着実に増えていることがわかります。しかも、実際に治療を受けていない人や、軽度な症状を持つ人などを総合して考えると、潜在的患者数は120万人以上いるだろうと言われています。
これは日本人の1%に相当します。このことからわかるように、統合失調症は決して珍しい病気ではなく、いつ誰がそうなってもおかしくない状態であることを示しています。
統合失調症と自閉症
生まれつきの脳障害でもある自閉症。1943年、アメリカの自動精神科医のレオ・カナーが「情緒的接触の自閉的障害」という論文で初めて、その言葉を使ったことが始まりとされています。以前はこれらの症状がある子供たちは、統合失調症だと診断されていました。自閉症の原因については1960年代頃までは生まれつきのものではなく生後、何らかの原因で起こる障害と思われていました。ですが、それからまもなく1960年代の後半になってイギリスの医師マイケル・ラターが自閉症は生まれつきの脳障害と発表したのです。1980年代頃までは日本でも一般的には精神的なストレスのせいで自閉症になると考えられていました。
引用:http://www.jiheinomori.com/
統合失調症の症状
統合失調症は、これという特別な症状を指すわけではなく、通常では考えられない思考を行ってしまう病気の総称ですから、人によって様々な症状が現れます。
統合失調症による支離滅裂
言っていることとやっていることの一貫性がなくなります。また、他人の質問に対し、的外れな答えを返したりするようになります。
ひどくなると、文章になっていない文章を発言するようにもなります。
統合失調症による妄想
ありもしないことをあるかのように考えてしまいます。被害妄想、誇大妄想など、実に多くの種類の妄想が存在します。ただし、何種類もの妄想が行われることはほとんどなく、被害妄想の人は被害妄想が、誇大妄想の人は誇大妄想が行われるという感じです。
統合失調症による幻覚
幻覚とは、ありもしない感覚をあるように感じてしまうことですが、統合失調症患者の場合、特に幻聴が多く発生します。
音を発生するものが存在しないのに音が聞こえますから、「霊が現れた」とか「宇宙人のテレパシーがきた」とか、通常ではまず考えられないことを平然と発言するようになります。
睡眠異常
普通の状態であれば、何の問題もなく睡眠がとれますが、統合失調症になると、夜寝れない、寝ても夜中に何度も起きてしまう、朝起きるのが異常に早くなる、逆に寝たら必要以上に寝てしまうなど何らかの異変が起こることもあります。
自我崩壊
自分と他人の区別がつかなくなってしまい、自分の考えを他人が知っている、言っているなどと感じるようになります。
普通、自分の空想などは自分の脳の中だけで完結するものですが、自分が考えてることが周りの音として認識されることになり、「自分の考えが誰かに知られている」などと考えるようになって自我が崩壊してしまいます。
統合失調症の原因
統合失調症は昔からその存在が知られており、その原因や治療法も研究されていますが、未だにはっきりとした理由はわかっていません。
症状が多岐にわたっているため、症状によってその原因が違うだろうという研究者もいます。しかしながら、現在最も有力だといわれている説は脳内のドーパミンの異常分泌です。
ドーパミンとは
脳は神経細胞同士がシナプスを作り、その間の情報伝達物質のやり取りによって情報が伝達され、考えたり行動したりするようになっていますが、ドーパミンとはこの情報伝達物質のひとつです。
ドーパミンの役割は興奮作用の他、行動の動機付けとして分泌されることがわかってきました。
人間は何するときでも無意識のうちにその行動が必要だと判断されているから動くわけで、これはすなわち人間の行動には全て動機付けがなされていることを意味します。従って、人間の脳内では常にドーパミンが分泌されているといっていいでしょう。
ドーパミンが少なくなるとどうなるの?
脳内のドーパミンの分泌量が減少すると、行動の動機付けが希薄になります。従って運動機能が低下し、意欲が低下します。つまり、「何もやる気がおきなくなる」状態になるわけです。
冒頭で述べた引きこもりのように、何もやる気が出ず、外界との接触すら億劫になってしまい、外に出たがらなくなってしまうわけです。
ドーパミンが多くなるとどうなるの?
逆に脳内のドーパミンが増加すると、正常な動機付けが行われなくなります。パソコンが熱を持ちすぎると熱暴走するようなものです。従って、わけのわからない発言をしたり、おかしな行動をとるようになります。
さらに、異常なほど興奮状態になり、情報のやり取りが異常な形で行われるようになるので、実際に見てもいないものが見えるようになったり(幻視)、聞こえてもいないことが聞こえるようになったりするわけです。
なぜドーパミンの異常分泌が行われる?
ドーパミンの異常分泌が統合失調症の原因らしいことはわかりましたが、問題はなぜドーパミンの分泌が異常になるかです。
残念ながら、このことに関しての明確な原因はわかっていませんが、ストレスなどの外的要因によって脳のドーパミンの分泌に異常が発生する、遺伝的に脳がドーパミンの異常分泌になりやすくなっている、などが指摘されています。
現在では、これらの要因が複合して引きおこしているのだろうという説が有力です。
統合失調症の治療
統合失調症は、ドーパミンの異常分泌によって引き起こされるようですから、このドーパミンの分泌量を正常にする薬を投与するというのが一般的な治療法になっています。
具体的には、抗精神病薬というものが使われます。かつては副作用の強い薬でしたが、現在は新たな薬が開発され、副作用が出にくくなっています。しかし、薬を投与しても、薬の効果が現れている時はよくても、効果が切れると元の木阿弥ですから、それと同時にドーパミンを正常に分泌できるようにするためのカウンセリング治療も平行して行われます。薬で症状を抑え、その間に脳を正常な機能に回復させるということですね。この治療法をうまく連動させることにより、多くの患者が正常に戻り、社会復帰できるようになりました。
昔は一旦統合失調症になってしまうと二度と元に戻ることはないという偏見がまかり通っていましたが、現在ではそのようなことはなくなっています。しかし、不幸にして現在の治療法を持ってしても治療できない患者もいるのは事実で、統合失調症に関する完璧な治療法は確立されていません。
今後、さらなる脳の研究によって、全ての統合失調症患者が治療できるようになればいいと思いますし、また、そうなるだろうと私個人は信じています。
投稿者プロフィール
- 脳を研究しつづけてきました。脳をきたえる為のトレーニング方法や病気と脳の関連性の記事を書いています。右脳と左脳の違いや動物の脳と人の脳の違いも研究しています。
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