性格を決める脳内物質って?脳=心だった!

性格を決める脳内物質

脳は記憶をとどめ、必要な時に記憶を引き出したり、物事を考えたり、集中力を発揮したりします。

でも、脳の働きはそれだけではありません。

何かに興味を示したり、食べたいのを我慢したり、物事に対する意欲など、精神的なものは脳の前頭前野が、無意識での感情など、心の動きは脳がつかさどっているのです。

血液型占いというものがありますが、あくまでも4つの性格の「傾向」というもので、その人の性格を決めるのは、血液型ではなく、脳内物質によるものなのです。

気分を決めるのは脳内物質

図:脳内物質

あの人が好き、この人は苦手、などの心の動きは脳の働きによるもので、それは脳内物質の影響が大きく関わっています。

人を好きになる、嫌いになる、この食べ物は好き、嫌いなどは、扁桃体という脳の奥にある部分が判断しています。

この無意識による判断は遺伝的にある程度脳に記憶されていますが、生まれてから思春期までの経験などから好き・嫌いなどは形成されていきます。

「このスイーツ大好き!」と扁桃体が判断すると、ドーパミンなどの脳内物質がたくさん分泌され、感情として「このスイーツ大好き!」という気持ちが起こります。

脳内物質は神経伝達物質のことを指し、脳の様々な情報の伝達にはなくてはならない存在です。

そして、心、感情、気持ちに大きく影響するのです。

脳内物質は数多く存在していますが、気分や感情をコントロールしている主な脳内物質を紹介しましょう。

脳内物質が生み出す感情

セロトニン

幸福感、癒し、愛情、満足感、満腹、眠気

脳の伝達、ドーパミン、ノルアドレナリンの調節

ドーパミン

意欲、快感、衝動

調整系。運動を調整する。短時間に心の中での情報を保ち、且つ処理する働きにも関わる

ノルアドレナリン

怒り、集中、覚醒、注意、怯え、フリーズ

脳全体に広がる物質。過剰に分泌されるとキレたりひきこもりにつながる

アセチルコリン

記憶、意識、知識、睡眠と覚醒のリズム

アセチルコリンの分泌濃度が減ると、アルツハイマー病につながる

グルタミン酸

興奮

脳内の情報伝達。神経細胞を興奮させる

GABA(ギャバ)

抑制、切り替え、辛抱

脳内の情報伝達。神経細胞の興奮を抑える

脳内物質は、分かっているだけで100種類以上あると言われています。

その中でも心の変化に強く関わる脳内物質が、上記の表の中の、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンです。

私たちは、好きなことをしていると心が満たされたり、気持ちがウキウキします。

美しい景色を見て感動したり癒されたり、幸福感を感じているときにはセロトニンや、安堵感を与えてくれるエンドルフィンが分泌されます。

一方、景色には全く興味のない人が同じ景色を見ても、関心がないことには脳内物質は分泌されないのです。

仕事が楽しくて仕方がない、いい波に乗りまくっているときにはドーパミンとノルアドレナリンが分泌されています。

脳内の心の回路

図:脳内の心の回路

気持ち、心、感情に強く関係のある主な脳内物質がセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンですが、これらを作用させる回路というものが存在します。

これらの脳内物質を放出する神経が脳幹付近に集まっており、ここをスタート地点として軸策が長く伸びています。

分泌される脳内物質はニューロンにどんどん流れていき、脳内にあるニューロンに広く影響を与えます。

ドーパミンを例に挙げると、欲望をつかさどる視床下部、扁桃体と情報の交換をしながら、広く前頭葉を覆っている神経の先から放出され、知をつかさどる前頭葉概則部近辺にたどり着きます。

もう1つのルートとして、黒質をスタート地点として、線条体という、無意識的に働く運動に関係する働きをする部分に向かいます。

このルートはとても細かい運動の調整に関係していて、このルートに問題が起こると、パーキンソン病につながってしまう場合があります。

とても太い神経の束であるセロトニンとノルアドレナリンは脳幹をスタート地点として、脳全体に行き渡っています。

これらの神経系がこめかみあたりで重なり合うとても高度な「知」の脳ということになります。

このように、脳内物質は気分、感情、心だけではなく、「知」にも大きく関わっていることが分かります。

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脳内物質と脳のクセ

写真:脳内物質と脳

人間の性格に前頭前野と脳内物質がとても強く影響しています。

前頭前野は入ってきた情報の解釈や、最終的な処理を行う部分で、直接性格には関係ないと思われますが……。

記憶を脳から引き出す時、物事を考える時、誰かと同じものを聴いて同じものを見ていても、その人によって違う結果になったりします。

これが性格の違いになります。

そのため、性格根本にあるのは、前頭前野と言えるのです。

脳内物質が気分、心、感情を生み出し、その先に性格があるのです。

新しいものが好きで好奇心いっぱいの人は、快感をつかさどるドーパミンが多く分泌される傾向にあり、脳内物質が性格に関係しているというのもお分かりになるでしょう。

こうした脳のクセが性格を作り出しているのです。

脳内物質には相互作用もあり、ドーパミンが過剰分泌されると、それを抑えるためにセロトニンも分泌されます。

この時のドーパミンやセロトニンの分泌量も人それぞれなので、人によって性格が違ってくるのです。

年をとると性格が変わる?

写真:ロープ

若い頃は温和な性格だったのに、年をとったら頑固になった。

とても怖い人だったのに、年をとったら温和な性格になった。

このようなケースは珍しくありません。

実は、人間は年齢を重ねれば重ねるほど、遺伝の影響が大きく出てくるのです。

これは変えようとして変えられるものではなく、ある程度は仕方のないことです。

言い方を変えれば、年齢を重ねるごとに、脳のクセが大きく出てくるということなのです。

ただ、年齢とともに頑固になった、怒りっぽくなったというケースの場合、自分も周囲の人もストレスがたまってしまいます。

これは脳のクセが強く出ていると割り切って、脳のクセに対するストレスの対策を知っておくと、少し気が楽になるでしょう。

脳のクセには「新規探索タイプ」「損害回避タイプ」「報酬依存タイプ」「完璧主義」4つのタイプがあり、自分の脳のクセ(性格)を知ると、おのずとストレス発散の方法も見えてきます。

完璧主義という言葉は比較的会話の中でも使う言葉ではないでしょうか。

これら4つのタイプを知るテストとタイプ別のストレス対策は【脳のクセと対策】のページで解説していますので、ぜひ試してみてください。

高齢者が急に頑固になるのは病気の場合もある

写真:頑固な高齢者
年をとると共に、徐々に頑固な性格になるのではなく、突然人が変わったように頑固な性格になってしまった場合、稀に病気が原因となっているとも考えられます。

老人性うつ病や脳腫瘍、肝臓の病気のときにも性格が変わってしまう場合がありますので、注意が必要です。

性格が頑固になったというだけではなく、脈略もなく急に怒り出すようになったり攻撃的になった場合、加齢のせいだけではないかもしれませんので、一度医師の診察を受けてみた方が良い場合があります。

そのためには、高齢者の日頃と比べての変化をキャッチしなければいけません。

一時的なものであれば、その日の気分次第ということも言えますが、繰り返し急に怒り出したり攻撃になったりした場合、特に言葉がうまく出てこないようだと早急に治療が必要な場合もあります。

脳腫瘍や慢性硬膜下血腫が性格をつかさどる部分に影響を及ぼしている場合にも、性格が急に頑固になったり怒りっぽくなったりします。

投稿者プロフィール

脳科学吉宗
脳科学吉宗
脳を研究しつづけてきました。脳をきたえる為のトレーニング方法や病気と脳の関連性の記事を書いています。右脳と左脳の違いや動物の脳と人の脳の違いも研究しています。
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