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脳の病気の中に、なりたくなくてもなってしまう認知症というものがあります。この認知症も統合失調症と同様、かつては痴呆症と呼ばれていましたが、言葉がよろしくないとの理由で認知症と呼ばれるようになりました。
自分の家のおじいさん、おばあさんが認知症になってしまった人もいるかと思いますが、認知症は何も年配者だけがなってしまう病気ではありません。
認知症とは
認知症とは、何らかの後天的な理由によって、脳の知的な働きが低下するものの総称です。これだけ聞くと、「年配者はみんな老化によって脳の機能が落ちてしまうのだから誰もが認知症じゃないか」という人もいるでしょうが、そうではありません。老化による脳機能低下と認知症の間には決定的な違いが存在します。
老化の場合は、例えば記憶能力が衰えていたとしても、その衰えを認識しています。つまり、「忘れちゃった」のを自分が理解しているのです。しかし、認知症の場合は「忘れちゃった」ことを理解できません。
そのため、食事を摂ったばかりなのにすぐ食事をするようになったり、食事したのに「食事してない、食事を与えてくれない」などといって攻撃的になったり、目的もないのに外にふらふら出掛けていって帰ってこなかったりと、日常生活にまで支障をきたしてしまいます。
人や物の名前だけでなく、自分が体験したことさえも忘れてしまい、終には家族や自分の存在をも忘れてしまう・・・これが「認知症」というものです。大切な記憶を失う辛さ、大切な人が自分の存在を忘れていく悲しみは計り知れません。もし、自分の大切な人、あるいは自分自身が認知症になったら、あなたはその現実を受け止めることができますか?
引用:http://www.ninchiwalks.com/
認知症の種類
認知症はその症状によっていくつかの種類に分けられていますが、特に多いといわれているのは以下の2つです。
脳血管障害による認知症
脳梗塞や脳出血などの物理的要因により、脳の神経が破壊されてしまった認知症です。
この場合の症状は脳梗塞や脳出血で破壊されてしまった脳神経の部分によって症状が変わってきます。
アルツハイマー病
何らかの理由によって脳神経細胞が急激に減ってしまい、脳自体が小さくなってしまう認知症です。
先ほどなくなられたアメリカのレーガン元大統領がアルツハイマー病だったことは結構有名ですね。近年患者数が増加しており、今後ますます増えていくものと思われます。
脳血管障害の認知症は、物理的な要因によって引き起こされることがわかっていますから、ここからは脳の機能に問題が生じていると思われるアルツハイマー病について見ていくことにしましょう。
アルツハイマー病の症状
アルツハイマー病は急激に症状が進行することはなく、長期間かけてゆっくり進行していくのが特徴です。大体が、もの忘れがおこる症状から現れます。
昔の出来事よりも最近の出来事を忘れてしまいます。初めのうちは老化と同じ症状ですが、徐々に悪化していき、そのうち自分がもの忘れをしていることを認識できなくなります。また、判断力も低下し、場所や時間、人物の区別もつかなくなっていき、徘徊などをするようになります。
さらにひどくなると人格が崩壊します。ここまで進行してしまうと、体は元気だけれども一人では生活できなくなり、介護等が必要になってしまいます。
アルツハイマー病の原因
アルツハイマー病の原因は現在研究中であり、いくつかの特徴は見られるものの原因を特定するには至っていません。
大脳皮質の萎縮
先ほど述べた、脳が萎縮するというのが原因の一つと考えられています。
これは、脳の神経細胞が通常以上に破壊されているからだと考えられますが、なぜ急激な破壊が始まるのかはわかっていません。遺伝という説もあるようですが…。
神経細胞の変形と老人班
アルツハイマー病患者の脳を調べたところ、脳の神経細胞が変形していることがわかりました。また、老人班といわれるしみのようなものができていることもわかっています。
ただし、残念ながらなぜ神経細胞が変形するのか、老人班ができるのかなどについてはわかっていません。
情報伝達物質の減少
脳の中の情報伝達物質の減少が見られることが最近判明しました。
情報伝達物質は多くの種類があり、アルツハイマー病患者の場合はいろいろなものが減少していますが、特に減少しているのがアセチルコリンという物質です。
アセチルコリンは、数ある脳の情報伝達物質の中でも一番初めにその役割が解明された物質で、副交感神経の覚醒、学習、記憶などに関わっています。記憶に関わっている物質が減少しているため、記憶力の低下を招いていると考えらます。
ただ、なぜアセチルコリンの分泌量が減少してしまうのかについてはわかっていません。
アルツハイマー病の治療法
アルツハイマー病の場合、脳の中でどんな変化が起こっているのかはわかっていますが、なぜその変化が起こるのかまではわかっていません。従って、発症を未然に防ぐことは不可能ですし、発症してしまった場合完治はできません。
予防する方法としては、常に脳を働かせる努力をするとか、適度な運動をするとか言われていますが、これは何もアルツハイマー病に限った話ではなく、健康的な生活を送る方法に過ぎませんから、アルツハイマー病に特化した予防法というものはありません。
治療としては、症状の進行を少しでも遅らせるという治療法が行われています。最近、進行を遅らせるいい薬が開発されたことで、完治は無理でも長い間普通の生活が送れるようになってきています。また、原因も徐々に特定できつつあり、新しい薬が開発されるとの話も出てきているので、将来的にはかなりの治療が行えるようになると思います。
薬物治療と平行して、家族のケアも重要です。患者の情緒の安定が進行を遅らせるとの報告もありますから、周りが一体となって患者に協力してあげることが必要です。
若年性認知症
認知症は、一般的には年配者がなるものだとの認識が強いですが、最近、年配者でないのに認知症になってしまう若年性認知症患者が増加しています。
若年性認知症とは65歳未満の人の認知症のことをいいますが、若年性痴呆症はアルツハイマー病ではなく、大脳の前頭葉と側頭葉が部分的に萎縮するピック病といわれる人が多いのが特徴です。
しかし、アルツハイマー病が研究され、徐々に治療法も進んでいるのに対し、ピック病の方は研究が進んでおらず、その原因や治療法もほとんどわかっていません。
年配者の認知症は世間で理解されていますが、若年性認知症はまだ世間の理解を得られておらず、患者もその家族もどうしていいのかわからないという状態です。ピック病もここのところ急速に患者数が増えているという話もありますし、今後ピック病の研究も進めてもらいたいものです。
投稿者プロフィール
- 脳を研究しつづけてきました。脳をきたえる為のトレーニング方法や病気と脳の関連性の記事を書いています。右脳と左脳の違いや動物の脳と人の脳の違いも研究しています。
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