目次
脳と運動には、とても深い関係性があります。
年齢を重ねても健康でイキイキとした毎日を送るためには、脳を活性化させることが大切です。
そのためには、日々の運動を心がけなければいけません。
身体を動かすことは体力づくりや様々な病気予防に必須と言われていますが、実は脳を活性化する効果もあることが色んな研究によって判明しています。
脳に運動が与える効果1:前頭葉が活性化する
運動を日頃から習慣にしている皆さんは、何のために運動していますか?
また、これから運動を始めようと考えている人は、何がきっかけになりましたか?
- 生活習慣病の予防
- 肥満解消
- 身体を鍛える
- ストレス発散
など、運動をする理由は人それぞれ異なります。
これらの理由は、運動することで得られる『効果』とも言えます。
そんな運動の効果の一つに、『前頭葉が活発化する』ということも忘れてはいけません。
人間の運動と言語、感情を司る器官の前頭葉は、身体の筋肉を動かすことで活動が活発になると言われています。
腕を上下に動かしたり、足を左右に開き前屈運動をするときなども前頭葉が活発に活動します。
先に述べたように、知性や感情をも司っている前頭葉。
運動は、そのような分野の脳の活動も高めてくれるというわけです。
脳に運動が与える効果2:脳細胞が増える
運動が脳に与える効果として、前頭葉を活発化させるということのほかに考えられているのが、『脳細胞が増える』ということです。
運動と大きく関係しているのが、脳由来神経因子(BDNF)という物質。
脳内で作られるたんぱく質である脳由来神経因子は、脳細胞の成長にかかわりがあります。
脳由来神経因子が沢山あると、神経細胞のネットワークが緊密になり、その結果脳の機能が高まるというわけです。
そして、脳機能の高まりは脳細胞を増やすことにもつながっていきます。
ラットを用いた実験では…
運動することで脳細胞が増えることについては、ラットを用いた実験によって結果が出ています。
運動させたラットは記憶力や学習能力がアップし、記憶を司っている「海馬」という部分の細胞の数や大きさに変化が起きました。
また、別の実験では運動させたラットのほうが、運動させていないラットよりも細胞分裂の回数が多いとの結果も出ています。
運動することで脳由来神経因子が増えますが、それに伴って血管内皮細胞増殖因子(VGEF)という物質の量も増えます。
これら二つの物質が海馬を刺激して、細胞分裂が起こるとされています。
脳に運動が与える効果3:認知症の予防
一方で高齢者を対象にした調査では、運動が認知症の予防に役立つということがわかっています。
ウォーキングなどの運動を週3回以上やっていた人は、やっていなかった人に比べて認知症にかかる割合が少なく、その差は2~8倍にものぼります。
この調査結果から、適度な運動をして脳を活性化させることは、認知症予防にも大きな効果が期待できますね。
もちろん運動は認知症の予防だけではなく、様々な病気を防いでくれるため、日常生活の中で運動を習慣づけるようにしましょう。
脳を活性化するには有酸素運動を!
脳と運動の関係を少し分かっていただけたところで、今度はどんな運動をすればいいのかについて見ていきましょう。
脳を活性化させるための運動といっても、どんな運動でも効果が期待できるわけではありません。
脳を活性化させるためには、特に有酸素運動がお勧めです。
有酸素運動を行うと、脳の前頭葉の機能が高まると言われています。
自転車をこいでいるのと同じことをするトレーニングマシーンを使った実験で、楽にペダルを踏める運動強度に比べ、ペダルをこぎながら人と話すことがきついと感じるくらいの運動強度では、後者のほうが前頭葉の動きが活発になることが判明しました。
有酸素運動をして大きな筋肉を動かすことで血流が促され、脳に沢山の酸素を送り込むことができるので、それが脳に良い影響を与えると考えられています。
運動初心者にはウォーキングがいい!
自転車こぎと同様に、ウォーキングも有酸素運動の一つです。
日常生活に運動を取り入れるなら、まずはウォーキングから始めてみましょう。
ウォーキングを続けて行うことで、前頭葉の外側の部分や側頭葉の厚みが増すとされていますが、これらは記憶にかかわる部分のため、記憶に関する機能が高まるということになります。
さらに、人間の「意欲」に関係する部分の厚みが増すこともわかっています。
運動初心者や運動が苦手な人でも始めやすいウォーキングは、正しい姿勢で歩くことが大切です。
脳を含め全身の機能を高めるには最低でも、20分間はウォーキングを続けなければいけません。
最初は無理かなと思ったら、少しずつ時間を延ばしていくようにしましょう。
その他お勧めの有酸素運動
初心者向けのものとしてウォーキングを紹介しましたが、運動することに慣れている人であればジョギングや水泳のほか、楽しみながらできるサイクリングなどもお勧めです。
室内で手軽にできる運動としては、スクワットや踏み台昇降もあります。
どの有酸素運動も、無理なく行うようにしましょう。
ウォーキング以外の有酸素運動の場合も、効果を実感するためには長く続けることがポイントです。
そのためにも『無理なく』を心がけましょう。
こんなことも脳の運動になる!
身体を動かす、いわゆる『運動』だけが、脳の運動になるわけではありません。
食べ物をよく噛むことや指先を使うことなども、効果的な脳の運動になります。
日常生活の中で私たちが当たり前にやっている行動・行為が、脳の活性化に役立つのです。
普段何気なくやっていることでも、少しだけ意識を集中させて毎日行うことで、脳への効果を引き出せるはずです。
一般的な運動と併せて、日頃から食べ物をよく噛み、できるだけ指先を動かすように努力しましょう。
食べ物をよく噛む
食べ物を噛むときは、頬の少し後ろにある咬筋(こうきん)という筋肉を使います。
この咬筋を使うことで、大脳に刺激を与えることができます。
その結果、脳が活発に機能するようになり、記憶力や認識力、集中力などが高まるというわけです。
毎日の食事で、次のことに注意しながら噛む力を鍛えましょう。
- 歯応えのある食材を使って調理する(レンコン、イカ、タコ、こんにゃく、りんごなど)
- 食材は大きめに切る
- 食事には時間をかける
- 食べ物を飲み物で流し込むのはダメ
指先を使う
『第二の脳』とも言われている指。
指には脳につながる神経が多くあることから、指先を動かすことで脳が刺激され、活発化すると考えられています。
指先の運動をする際に大切なのは、
- 両手を同時に動かす
- 指を素早く動かす
- 普段あまりやらない指の動きをする
- 指先の感覚を鋭くする
これらのことが挙げられます。
指先の運動と言えば指回し運動が知られていますが、それ以外にも楽器演奏や絵を描くこと、手芸、工作など色々なことがあります。
趣味を楽しむことが、脳の活性化にも役立つのであればとても嬉しいですよね。
自分に合った趣味を見つけて、脳を鍛えてみませんか。
脳と運動のまとめ
運動をすることで、脳の活性化に有効な物質が増えます。
脳を活性化させるには運動は欠かせないと言えますが、過剰な運動は脳を疲れさせることになってしまい、逆効果に……。
少し汗ばむ程度の運動を毎日続けることが、無理なく脳を活性化するための大切なポイントです。
ウォーキングなど気軽に始められる有酸素運動を習慣化するほか、食べ物をよく噛み、指先をできるだけ多く使うようにしていきましょう。
こうした毎日の心がけが、年齢に負けない元気な脳を生み出します。
投稿者プロフィール
- 脳を研究しつづけてきました。脳をきたえる為のトレーニング方法や病気と脳の関連性の記事を書いています。右脳と左脳の違いや動物の脳と人の脳の違いも研究しています。
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