スープ専門店の進出やファミリーレストランのドリンク・スープバーの普及などで、スープ料理は日本の食文化により深く定着しています。
これほどまでにスープ料理の人気が高くなった背景には何があるのでしょうか?
スープは、汁気の多い料理なので身体の弱った人でも無理なく最後まで食べきることが出来ます。その食べやすさが、スープの魅力を支えています。
また、スープは食材の温度を保つ保温材としても働くので最後まで美味しく食べることが出来ます。
スープの料理としての魅力は、料理としての食べやすさが前提になっているのです。
スープが美味しいのはなぜか
基本的には、鍋に水を汲んで素材を入れて火に掛けるという単純な調理法で作られるスープは、なぜこれほどまでに美味しいのでしょうか。
スープの美味しさを支えているのは、グルタミン酸・イノシン酸といったうま味成分です。スープの出汁には、素材から抽出されたこれらのうま味成分がたっぷりと溶け込んでいるのです。
グルタミン酸とイノシン酸が合わさると、相乗効果でうま味がより強くなることが知られています。このうまみ成分がスープの美味しさを支えているのです。
スープの美味しさを生み出す素材の組み合わせ
スープの美味しさであるグルタミン酸とイノシン酸は、食材を煮出すことで抽出されます。グルタミン酸は野菜・海草・きのこなどから、イノシン酸は肉や魚から抽出されるのです。
スープに野菜や肉を豊富に入れるということは、グルタミン酸とイノシン酸を多量に含むことに繋がるのです。
スープは、その食べやすさから身体の弱った人にうってつけの料理と言えます。しかし、スープが病人向きとされているのには別の理由のほうが大きいのです。
それは、「スープは食材の栄養を余すところなく含んでいる」ことなのです。
たとえば、ビタミンには水に溶ける水溶性のものと油分に溶ける脂溶性のものがあります。調理過程においてこれらのビタミンは食材から流れ出てしまうことが多いのですが、スープならば溶け出したビタミンを無駄なく回収することが出来るのです。
また、スープと言う形態で調理されることで複数の食材の持つ栄養素を一度に取ることが出来ます。
スープが身体にいい理由
古くから伝わる民間療法には、「鶏で出汁をとったチキンスープが風邪に効く」というものがあります。「風邪を引いているときは温かいものを食べるのは当然 だろう」と考えた人もいるでしょうが、この伝承にはれっきとした根拠があったのです。
ネブラスカ大学の教授であるスティーブン・レナード氏の研究による と、『一般的なレシピで作られたチキンスープには、風邪の症状を緩和する栄養素とビタミンの組合せが含まれている』というのです。
完全に治すと言うわけで はないのですが、こういった栄養の組合せの妙味を知っていたからこそ昔の人はスープを飲んでいたのです。
不味いスープを作るには
「スープを飲めばコックの腕が判る」という言葉があるように、スープは簡単な料理ですが常に美味しく作るのは難しいことなのです。
体調の変化は味覚に影響が出ますし、下ごしらえやアク取りを怠ればスープの味が落ちます。素材の鮮度を把握できなければ、美味しいスープは出来ません。スープの出汁を取る火加減や煮込む時間がわからなければ、クドかったり薄かったりする出汁しか取れません。
こういった料理に対する姿勢や知識が、スープを調理する際に問われるのです。
美味いスープを作るには
では、美味しいスープを作るには何に気を使っていけばいいのでしょうか。
まず第一に「新鮮な素材を用意する」ことがあげられます。
第二は「出汁を丁寧にとる」ことです。出汁はスープの味の基本となります。
第三には「アク取りを怠らない」ことです。アクはスープの味を損なうので、丹念にアク取りを行う必要があります。
第四には「味付けは綿密に行う」ことです。 体調の変化によって舌が求める味が変わるので、いつもよりも薄め・濃い目の味付けにしていても、自分ではいつもの味付けにしているつもりになることがあります。
こうした細やかな気配りがスープを美味しくするということが、スープの魅力なのです。