伝統的なガラス工芸の中に、江戸切子と薩摩切子があります。
現代の洗練されたガラス製品も魅力的ですが、昔のガラス製品には、現代のガラス製品にはない、繊細な魅力が備わっています。
今でも残されているガラス工芸品をのぞいてみませんか?
切子とはカットガラスのことをいいます。ガラスをカットすることできらきらと輝きます。
嘉永・安政(1848~1859年)の時代、薩摩(現在の鹿児島)でガラスの製造販売が開始されました。
当時、江戸ではこわれやすいガラスを製造していましたが、頑丈で実用的な薩摩ガラスの登場によって、江戸ガラスは衰退の一途をたどります。
江戸切子との大きなちがいは、江戸切子が透明なガラスに切子をほどこすのに対し、薩摩切子は色をつけたところに切子をほどこすところにあります。大胆な切子をほどこすことによって、色にグラデーションが生まれます。これを「ぼかし」といいます。
外国の色被せガラスは、色ガラスを型に入れて吹き込んだあと、透明なガラスを入れてできあがります。 薩摩切子の場合は、色ガラスを直接、透明なガラスに被せます。そうすると、色ガラスの層が厚くなるんですね。
そして色のついた層を透明な層まで切り込むと、色のついた層が下にいくほど薄くなり、グラデーションが生まれるというわけです。
この「ぼかし」は温かく奥行きのある表情を見せ、日本人のわびさびの心を表しているようです。
江戸切子は水晶加工から棒状工具を使用したのに対し、薩摩切子は動力に洋式水車を利用してグラインダーという回転式の機械を利用しました。江戸切子では切子だけを行う職人があらわれ、分業するようになりました。
江戸切子にはポンテ竿という金属棒の跡がなく、棒状跡があるのに、薩摩切子にはポンテ跡とグラインダー跡が見られます。
明治時代の職人切子はポンテ竿を使用したのでポンテ跡と棒状跡があります。
グラインダーを使うようになると、ポンテ跡とグラインダー跡が見られるようになり、これが工場で作られた切子の特ちょうとなります。
現在の切子に見られる、グラインダーを使った切子はカットが鋭く、さわると痛いです。
昔ながらの棒状工具を使った切子はさわっても痛くありません。磨いて丸みをつけることで、やわらかな味わいを出しています。
薩摩切子はルーペで見ると、小さな気泡が確認できます。カットに細部には磨き残しがあります。
薩摩切子は藩主の島津斉彬(なりあきら)がなくなると、途絶えてしまいました。
ですから、現在残っている薩摩切子の数もわずか150個ほどなんです。
にせものが出回る現代ですから、ルーペでの確認は重要なものになっています
。薩摩切子は小さなものでも300万、大きなもので1.000万円超えることもあります。
信頼できるお店を探し、自分にあったものを探すのが良いでしょう。
古渡りガラスとは、江戸時代から明治10年代までに日本に来た外国製のガラスのことをいいます。
薩摩藩ではこれらのガラスから進んで技術を学んだため、古渡りガラスが薩摩ガラスと間違えられることもありました。
洗練された輝きや豪華な彫りからは、西洋文化の香りがします。