豪雪地方では昔から出掛けることが億劫になる冬において、娯楽は大変に重要な要素とされてきました。それに対して九州などの雪の少ない地方の人は雪かきや雪下ろしといった力仕事をすることが無いため、雪に対する憧れを強く抱いてきました。そんな両者の思惑が合致したのが雪まつりです。邪魔者であった雪を観光資源として利用することで雪の少ない地方の人に喜んでもらえる雪まつりは、今や日本の冬の名物となっています。
雪まつりは、その名の通り「雪と親しむ祭り」で自衛隊や市民ボランティアの手で作られた大小の雪像を観賞したり、当地名物を取り上げた出店で舌鼓を打ったりと「雪を利用した観光」を楽しむイベントとなっています。日本では、北海道・東北地方のいわゆる「豪雪地帯」を中心に行われています。
日本における雪まつりは、昭和初期に北海道で始まったのが最初だと言われています。当時の雪まつりは小学校・中学校が中心となって行っていた地域のお祭りの枠を越えないもので、生徒による手作りの雪像などが会場を飾っていたようです。しかし、この頃の雪まつりは第二次大戦突入と同時に中止となり、終戦後までは再開されることはありませんでした。そして、雪まつりが再開されたのは昭和25年(1950年)のことでした。
各地の雪まつりは年々規模が大きくなってきていましたが、近年では縮小傾向にあることが多くなっています。主な理由としては、雪像作成において大きなファクターを占めてきた自衛隊の協力体制の縮小があります。近年の世界情勢に基づく法改正や、自衛隊の編成の変更などがその要員となっています。また、地球温暖化による気象的な条件の変化もあり、雪不足で雪像が予定する数を作れなくなるなどの対応に追われるケースも年々増えています。
では、日本における雪まつりにはどのようなものがあるのでしょうか? 主な雪まつりをピックアップしてみました。
日本を代表する雪まつりといえば、やはり「さっぽろ雪まつり」です。目抜き通りの大通公園などを舞台に行われるさっぽろ雪まつりは、日本最大の規模で行われる雪まつりとして知られています。見物に訪れる観光客も日本国内のみならず外国からも訪れるほどの盛況を博しています。さっぽろ雪まつりは日本における雪まつりの先駆けであると同時に雪まつりの規範としての一面を持っています。自衛隊の協力による大雪像作りが始まったのもさっぽろ雪まつりからで、毎年見物ツアーなどで訪れる観光客を驚嘆させてきましたが前述の体勢の変化によって近年では技術指導という形で市民ボランティアを中心とした雪像作りに移行しています。また、大雪像とは別に市民参加による雪像作りも人気が高く、抽選は毎年高い競争率を誇っています。会場は大通公園とすすきの、サッポロさとらんどの三箇所で毎年2月上旬に行われています。
岩手雪まつりは、小岩井農場を会場としてさっぽろ雪まつりと同時期に行われる雪まつりです。規模としてはさっぽろ雪まつりほどではないのですが、会場である小岩井農場で作られた新鮮な乳製品などに舌鼓を打つという楽しみがあります。また、夜になると花火大会が行われ、さっぽろ雪まつりとはまた違った風情が楽しめる雪まつりとなっています。
横手のかまくらは、神事としてのかまくらを今に伝える雪まつりの一つです。横手のかまくらは「水神様を祀る雪の座」としてのかまくらを今に伝えるものとして、観光名物としても民俗学的にも注目を浴びているのです。秋田県は、かまくら発祥の地として各地でかまくらを使った祭りが開催されていますが、特に横手のかまくらは日本のみならず世界的にもその名が知られている行事なのです。
青森県の弘前市で行われる「みちのく五大雪まつり」の一つに数えられる弘前城雪燈籠まつりは、雪像ではなく雪で作られた燈籠が主役の雪まつりです。会場には大雪像と雪の滑り台が作られ昼は雪像や滑り台で、夜は明かりを灯された雪燈籠が照らし出す幻想的な矩形を楽しむことが出来ます。