冬山を駆け抜けるスキーは、ウィンタースポーツの王様として長く親しまれてきました。最近はスノボー人気に押されて来てはいますが、競技人口においてはスノボー全体を遥かに凌ぐほどの人気と歴史を持っています。スキーの歴史や、競技の種類、スキー用品などについて詳しく解説していきます!
スキーの歴史は、人類の歴史と切っても切り離せないほどの関係を持っています。考古学上でスキーが現れたのは紀元前2500年前後のことで、スカンジナビア半島の遺跡に残されていた壁画に「スキーを履いた人」の姿が描かれていたといいます。この壁画が描かれた同時代には、各地で偶発的にスキーの原型が誕生していたようです。このスキーの原型は「かんじき」のようなもので、やがてスキーへと発展する土壌を根付かせていったのです。
スカンジナビア半島を中心とする北欧では、スキーは身近なものとして親しまれてきました。北欧からヨーロッパ全域を席巻したバイキングは、冬の山を越える時にスキーを用いていたと伝えられています。北欧においてスキーは、移動手段として重宝され発達してきたのです。北欧におけるスキーの発展は18世紀頃に頂点を迎えています。
スキーの利便性は、18世紀末から19世紀ごろ世界的に広まっていきます。明治維新をはじめとする歴史の転換点であるこの時期は、各国とも雪山登山が必要になる場面に遭遇する機会が増大した時期でもあるのです。日本に本格的にスキーが伝わってきたのもこの時期のことで、最初は旧日本軍の教練科目として伝わったようです。
スキーは、雪山越えの必要もある軍隊によって運用され発展したスポーツです。しかし、昔の軍隊の大半は常に従軍しているわけではない農民が占めていたので、自然にスキーは民衆にも浸透していきます。その結果、スポーツとしてのスキーも同時に発達していったのです。世界最初のスキーの大会とされているのは1769年、または1843年にノルウェーで行われた競技会といわれています。この大会をきっかけにして、スキーはスポーツとして確立し、世界的に広まっていくことになります。そして、1924年に開催された第一回冬季オリンピックにおいてスキーは競技種目となり、スポーツとしての地位を確立したのでした。
スキーを楽しむために必要なスキー用品は、スキーの歴史の発展と共に進歩していきました。紀元前に人類が使っていたとされるスキーの原型は、木を石器で彫ったものや動物の骨を削ったものが使われていたと言います。スキーの発展と共に、人類は必要とするスキー用品を次々と生み出していったのです。
俗に「スキー板で滑るからこそスキーである」と言われるほど、スキー板はスキーを楽しむ上で欠かせないものです。スキー板の原型は前述の通り、木を彫ったものや骨を加工したものが使われてきましたが、次第に現在のものに近い長い板へと変わっていきました。昔のスキー板は、紐やベルトで足を固定するようになっていたため外れやすいと言う欠点を持っていました。こういったスキー板などの欠点を解消したのがソンドレ・ノールハイムという人です。ノールハイム氏は、固定式ピンディングを発明してスキー板の欠点を解消し、踵が自由に動くテレマークスキーを開発し、近代スキーに大きな一歩を残したのです。
かつてのスキー板は、その名の通り木材を板状に加工したり竹を割った物を加工したりして作られたものが主流でした。木材や竹のしなり易さが衝撃を吸収してくれるからです。しかし、現在はより早く安全なスキー板を生み出せる樹脂製のものが主流となってきています。素材の変化と共に、板そのものの設計も大きく変化し昔の技術では不可能だったスキー板が次々に作られるようになったのです。たとえば、スラロームなどの曲る滑り方をより速くする設計になったカービングスキー、通常のスキー板よりも短くストックを必要としないファンスキーなどの新しいスキー板が次々と作られています。
滑っている最中にスキー板が外れてケガをしたという例は枚挙に暇がありません。これはスキー板と靴のマッチングを行う金具であるピンディングが合っていないことで起こる現象なのです。その為スポーツ用品店ではスキー板とブーツ・ピンディングをセットにして扱うことがほとんどです。スキーブーツ自体の歴史は割合浅く、1950年代に入ってようやく現在のブーツの原型が開発されるようになったのです。それまでは、編み上げブーツなどの靴を紐などで縛りつけるのがほとんどだったのです。現代では、スキーブーツはプラスチックや樹脂で作られているものがほとんどで、ピンディングも常に靴と板を固定している非開放型から転倒の際に自動的に外れる開放型が主流となってきています。
スキーの代名詞とも言えるのが両手に持ったストックです。スキーは軍用装備として発達した経緯を持っているので、ストックを使わないスタイルが主流という時代もあったのです。スキーストックを使うスキーの技術は1880年代以降に確立され、ストックを使うのが主流となっていったのですがストックを使う技法は二種類あったのです。一つは一本のストックを使う「リリエンフェルト・スキー技法」で、日本に最初に伝わってきた西洋スキー技術はこのリリエンフェルト・スキー技法だったと言われています。もう一つが二本のストックを使う「アールベルグ・スキー技法」で、アールベルグ・スキー技法は「スキーの父」と呼ばれたハンネス・シュナイダーによって世界的に普及していったのでした。
移動手段として発生したスキーは、スポーツ化によって様々な競技へと細分化されていきました。冬季オリンピックなどの大会において行われるスキーの競技種目には次のようなものがあります。
アルプス地方で発達したスキーのスタイルで、私たちが一般に「スキー」と呼んでいるのはこのアルペンスキーです。アルペンスキーは基本的に滑降する速度を競い合う競技になっています。
アルペンスキーの中でもシンプルながら技術力が問われる種目です。標高差200m前後のゲレンデを、立てられた旗の間をくぐり抜けながら滑降するタイムを競い合います。
回転よりも旗の間隔が大きい大回転は、スピードと技術と言うアルペンスキーの要素を兼ね備えたダイナミックな競技です。
スーパー大回転は、回転・大回転が2セットの合計タイムを競い合うのに対してわずか1本勝負という、スピードを要求される競技です。その分コースも回転・大回転より長く、スピードを制御する技術とスラローム半径を制御する技術が強く要求されます。
ダウンヒルとも呼ばれる競技で、コースを滑降したタイムを競い合います。スピードはアルペンスキー競技随一を誇り、100分の1秒と言うタイムの競い合いが滑降の最大の魅力となっています。
ノルディックスキーは、スカンジナビア半島発祥のスキースタイルです。ノルディック水キーは、踵が浮く構造になっているテレマークスキーが用いられるのが特徴となっています。
いわゆる「歩くスキー」とも言われるクロスカントリースキーは、傾斜の無い平坦なコースを滑りぬける競技で、ゴールにたどり着くまでの時間を競い合います。
スキージャンプは「日本のお家芸」と言われた、スキー競技種目最大の花形です。ジャンプ台の高さによってノーマルヒル・ラージヒルに分かれ、飛距離・姿勢・着地の三要素による得点を競い合います。
「複合」を意味するこの競技は、アルペン・ノルディック両方に存在しています。アルペンでは回転・滑降を、ノルディックではクロスカントリー・ジャンプの二つの競技を行い、合計タイムを競い合います。ノルディックでは、飛距離をタイムに換算して行います。
近年、競技種目として注目を浴びているスタイルです。アクロバットな技をジャンプ中に行うのがフリースタイルの特徴とも言えます。
アルベールビルオリンピックから正式種目となり、次回のリレハンメルオリンピックで注目を浴びた種目です。瘤(モーグル)で凸凹したコースを滑降し、設置されたジャンプ台でトリックと呼ばれる技を決めゴールを目指す競技です。
小さなジャンプ台に向かって滑降し、ジャンプ中に回転技を行う競技です。技の内容や着地などの要素を採点し、得点を競い合います。
射撃競技とクロスカントリーを複合した競技です。コース内に設置された標的まで移動し、立って行う立射と屈んだ体勢で行う伏射を行い、的に命中した位置とタイムの複合要素で競い合います。