彗星(すいせい)は、太陽系の天体のなかまで、日本では「ほうき星(ぼし)」、英語では「コメット」とよばれています。その名のとおり、太陽に近づいたときの彗星は、しっぽがのびて、ほうきのように見えます。
彗星は遠いところからまわってくるので、一生のうちで一度しか見られない彗星もめずらしくありません。ぜひ一度、彗星を見てみてくださいね。
彗星は大きさが10~40km、ほそいだ円の軌道(きどう)で、太陽のまわりを回っています。チリや氷のかたまりでできていて、小惑星のようなすがたをしています。太陽に近づくと熱で氷がとけてガスが吹き出します。彗星の核は、じゃがいものような形をしていて、太陽に近づくと、核のまわりにガスがまとわりつきます。ガスとちりがくっついて、「コマ」という長いしっぽができます。
1986年に観測(かんそく)されたハレー彗星は、はじめて彗星の核(かく)やガスが出ている姿(すがた)を見ることができました。彗星から出たチリが地球としょうとつして、地球の大気中で光るのが流れ星なのです。
毎年、学者や天体観測(てんたいかんそく)をする人によって、いくつもの新しい彗星が観測(かんそく)されています。新しい彗星には、先着順で3人までが名前をつけることができるんですよ。
新しい彗星は、いったいどこからやってくるのでしょうか?オランダの天文学者オールトによると、太陽から約1光年(5万天文単位)はなれたところに、彗星のもとになる天体が多数ただよっていると考えられました。この、天体の集まりを「オールトの雲」といいます。
オールトの雲は、太陽系が生まれたときに、取り残されたもので、何かのきっかけで彗星になります。
ハレー彗星は、イギリスの天文学者、エドモンド・ハレーが出現を予告し、有名になりました。ハレー彗星は、「悪いことがおこる前ぶれ」とおそれられていましたが、一方で「勝利(しょうり)を祝福(しゅくふく)する星」としてむかえられました。
ハレー彗星は、2061年に地球に接近します。どんなことがおこるのでしょうね?
ハレー彗星は、1986年に地球に最接近(さいせっきん)することがわかり、世界中で競争のように人工衛星を作って、ハレー彗星に向かって打ち上げました。
ソ連(現在のロシア)は「ベガ1号」、ヨーロッパは「ジオット」、アメリカは「パイオニア7号」と「ISEE-3/ICE」、そして日本は、「さきがけ」「すいせい」を打ち上げました。
これらは、海軍の船にたとえられて、「ハレー艦隊(かんたい)」と呼ばれました。
日本はこのとき、さきがけとすいせいの信号をうけとるために、長野県に64メートルもある大きなパラボラアンテナを建造(けんぞう)したんですよ。これだけ大きなアンテナがあれば、さきがけとすいせいがどんなに遠くへ離れても、きちんと信号をうけとることができますね。
ヘール・ボップ彗星は、20世紀最大の彗星といわれています。
1995年7月、アメリカのアラン・ヘールとトーマス・ボップが発見しました。
1996年には木星の軌道付近を通り、どんどん太陽に近づきました。百武(ひゃくたけ)彗星よりも大きく明るく、肉眼でも見ることができました。
リニア彗星は、アメリカのリンカーン研究所によって、1999年9月に発見された彗星です。2000年にははっきりと肉眼で見られるようになりました。
7等星程度の明るさで、あまり明るいとはいえませんが、彗星が明るくなっていく様子や、チリが吐き出される様子などを観察できて、いろんな変化を見ることができました。
1969年に、クリム・チュリュモフ氏と、スヴェトラナ・ゲラシメンコ氏が発見した彗星で、ふたりの名前を組み合わせて名付けられました。外国では、この彗星の名前があまりに長すぎるので、「67P」とちぢめられて呼ばれることもあります。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、ハッブル宇宙望遠鏡(うちゅうぼうえんきょう)で観測したさいに、でこぼこした岩のような彗星だと思われてきました。しかし、ヨーロッパが彗星探査機「ロゼッタ」を打ち上げ、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のそばまでちかよってカメラで撮影すると、まるで岩をふたつくっつけたような、アヒルのおもちゃのような形をしていたのでした。
その後、ロゼッタから着陸機(ちゃくりくき)「フィラエ」がおろされ、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の地表をくわしくしらべようとしましたが、フィラエは地表でバウンドしてしまい、岩と岩のほそいすきまにはさまり、身動きがとれなくなってしまいました。
また、はさまってしまった場所が日かげなので、フィラエは太陽光発電もすることができずに、そのまま冬眠をしてしまいました。
そんなトラブルもありましたが、ロゼッタは彗星の周りをまわりながら調査をおこなったあと、2016年9月に、地球からの指示で彗星の表面に落とされ、その役目をおえたのでした。
欧州宇宙機関(おうしゅううちゅうきかん)のwebサイトを見に行くと、ロゼッタとフィラエをモチーフにした、かわいいアニメーションが公開されていますよ。
参考リンク:欧州宇宙機関(ESA) ロゼッタの紹介ページ
http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Rosetta
地球は、「水の惑星」とよばれるほど、水にめぐまれた惑星です。この水、実は彗星がもたらしたのではないか、と考えられています。
水のある惑星は、ほかにも存在しているのですが、地球の水と彗星の水の成分はとてもにているものだったのです。そのため、地球が誕生するときに、しょうとつしたいろんな彗星や天体がもたらしたようです。
最近では、いん石からアミノ酸が発見されました。いん石や彗星のアミノ酸から生命が誕生したのではないか、と見られています。
彗星は、夕方か明け方が見つけやすいです。10倍くらいの双眼鏡で見るのが見やすく、彗星のしっぽも見ることができます。三脚で固定すると、手がぶれず、便利ですよ。
天体望遠鏡(てんたいぼうえんきょう)の場合は、低倍率で視野の広い望遠鏡をえらびましょう。彗星の色の変化や移動のようす、コマのようすなどスケッチするのも良いですね。彗星のさつえいに向いた、望遠鏡(ぼうえんきょう)つきのカメラや自動撮影のカメラもあるので、大人の人にそうだんして下さいね。