太陽(たいよう)に一番近い惑星(わくせい )の水星。水星は小さくて、しかも夕方の西の空と朝、太陽がのぼる東の空の低いところにしか、あらわれないので、天体観測(てんたいかんそく)しにくい惑星と言われています。
さて、水星って、どんな惑星なのか、もっとくわしく見ていきましょう。
水星は太陽系(たいようけい)の惑星のなかで、一番太陽の近くにあります。水星には大気(たいき)がほとんどないので、表面の温度は昼間は450度にまで上がり、夜は-180度まで下がります。
水星は岩石(がんせき)と金属からできていて、見た目は月とそっくりです。じゃあ、どうやって月と水星を見分けるかというと、水星には大きなクレーターでできているカロリス盆地(ぼんち)というものがあります。ほかの天体とのぶつかり合いで水星の表面にできてしまっ たデコボコの穴をクレーターと言います。カロリス盆地とは、そのクレーターのまわりを丸くかこんでいるカロリス山脈(さんみゃく)という波模様(なみもよう)がついている場所のことです。
また、水星は老人(ろうじん)の惑星なんですよ。シワがいっぱいあります。
というのも、カロリス盆地を作った天体の衝突(しょうとつ)の力が、水星の反対側(はんたいがわ)までつたわってシワシワになってしまったんですよ。
水星は見るチャンスの少ない惑星(わくせい)です。太陽に近いために、見えにくいのです。でも夕焼け時の西の方角、または朝やけの東の方角を見てみてください。
水星が見えやすい時期(じき)は、その年によってちがいます。データブックや専門(せんもん)の雑誌(ざっし)で調べるといいですよ。
水星はシュメール人の時代(紀元前3000年)から知られています。古い記録(きろく)ではバビロニア人により観測(かんそく)されていて、古代ギリシャのヘラクレイトスは、水星と金星が地球(ちきゅう)ではなく、太陽のまわりをまわっていると考えていました。ギリシャで水星が5つの惑星の一つとわかったのはプラトンの時代からのようです。ギリシャでは、水星のことヘルメスと言います。
ヘルメスはローマではメルクリウスとなって、英語(えいご)では水星のことをマーキュリーと呼びます。マーキュリーとは、足の速い(はやい)という意味でつけられた名前です。
1639年にはイタリアのジョバンニ・ズッピという人が望遠鏡(ぼうえんきょう)を使って水星を見て、水星にも金星や月と同じように、みちかけがあることを発見しました。このおかげで、水星が太陽をまわっていることがはっきりとわかるようになりました。
ヘルメスにはウソつき・どろぼうの守り神、商業(しょうぎょう)・契約(けいやく)の神、旅人の守り神など、いろんな役割(やくわり)がありました。ある日、父に会ったヘルメスは「父上のお役に立ちたいのです。私は足がはやいし、機転(きてん)もききます。ぜひ、父上の使者にしてください」こうしてヘルメスは使者になりました。
彼(かれ)は黄金(おうごん)のステッキをもち、ツバの広いぼうしをかぶり、ハネの生えたサンダルをはいて、いろんな国をとびまわりました。
「水星探査機(たんさき)「マリナー10号」が1973年11月3日から1975年3月24日まで水星を観測(かんそく)しました。それから少しずつ、水星がどんな惑星なのかが、くわしくわかるようになってきたのです。
2004年には、30年ぶりに水星探査機「メッセンジャー号」が打ち上げられました。
2004年8月、アメリカのNASAは、30年ぶりに水星探査機(すいせいたんさき)メッセンジャーを打ち上げました。
水星は、太陽系の惑星(わくせい)の中でも一番太陽に近いばしょにあり、太陽が近くにあるおかげでとても熱くてまぶしいので、地球の望遠鏡(ぼうえんきょう)を使っても、なかなか観測(かんそく)がむずかしい惑星です。
しかも、水星にむかって人工衛星(じんこうえいせい)をとばすことも、かなりむずかしく、ひとつでも操縦(そうじゅう)のしかたをまちがえてしまうと、太陽にとびこんでしまったり、勢い(いきおい)があまって、水星からとおりすぎたりしてしまいます。
上でお話した「マリナー10号」も実は、水星の前をとおりすぎることができたから、「ついでに写真がとれた」といったような感じです。水星のまわりをぐるぐるまわって、くわしく調べた、というわけではなかったんです。
ちなみにこれは、「遠心力(えんしんりょく)」という理科のちしきが必要(ひつよう)になるので、ここではしょうりゃくします。
メッセンジャーは、この太陽の熱をさえぎることができるよう、ぼうぎょ用の盾(たて)をそなえています。この盾(たて)をつかって、熱と光をさえぎりながら、水星にカメラをむけて、表面を観察(かんさつ)しようというものでした。
メッセンジャーは、打ち上げられてから6年と7ヶ月後に、初めて水星のまわりをまわる軌道(きどう)に入ることができました。
その後、4年間にわたって水星のまわりをぐるぐる飛びつづけながら、たくさんの写真をおさめたり、地表(ちひょう)のクレーターの調査(ちょうさ)をおこないました。
2015年には、水星の調査(ちょうさ)をおえたメッセンジャーは、地球からおくられた指示(しじ)にしたがい、地表(ちひょう)にみずからしょうとつして、その役目(やくめ)をおえたのでした。
日本のJAXAでは、水星探査計画(すいせいたんさけいかく)「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」というものがあります。
これは、ヨーロッパの宇宙機関(うちゅうきかん)といっしょに開発(かいはつ)して、水星の磁場(じば)や、地球がうまれたきっかけがかくされていないか、調査(ちょうさ)する予定です。
実はすでに、人工衛星の機体(きたい)は完成ずみで、今はオランダにある研究センターに運ばれています。
人工衛星のじょうたいや、ロケットの準備(じゅんび)がととのったら、もうすぐ打ち上げになるはずですよ。
参考リンク:JAXA 水星探査計画「BepiColombo」
http://www.jaxa.jp/projects/sat/bepi/index_j.html