冷たいスープ料理は、19世紀からはじまった冷蔵庫の発明と発達によって一般的なものへと変化しました。つまり、冷製スープは冷やす技術の副産物でもあるのです。
これから紹介するビシソワーズも、冷蔵庫の発明と発達そして普及したことで生み出された冷製スープなのです。
ビシソワーズは、1917年に発明された割合歴史の新しいスープ料理です。
ビシソワーズの発明者となったのはフランス出身のルイ・ディアというシェフで、ニューヨークの一流ホテルであるリッツ・カールトン・ホテルにおいて、初めて披露されました。
つまり、ビシソワーズはアメリカ生まれのフランス料理なのです。
ビシソワーズはどんなスープなのか
ビシソワーズは、裏ごししたジャガイモの滑らかな食感と牛乳のクリーミーな口当たりを楽しむスープです。
考案者であるルイ・ディアは子供の頃、夏に冷たい牛乳を混ぜて飲んだポタージュがヒントになったと述懐しています。
ビシソワーズの語源は、ルイ・ディアの故郷であるフランスの避暑地ヴィシーにちなんで名付けられており、直訳すると「ヴィシー風のクリームスープ」となります。
ビシソワーズの原型・ポタージュとは
ビシソワーズを知るためには、原型となったポタージュについても知らねばなりません。
ポタージュ(Potage)はフランス語で「鍋料理」のことを指す言葉で、フランス料理に置けるスープ料理の総称ともなっています。
コンソメなどのとろみの付いていないスープを「ポタージュ・クレール」、ビシソワーズなどのとろみが付いているスープを「ポタージュ・リエ」と言います。
日本で「ポタージュ」と言うと、ポタージュ・リエに分類されるスープ料理を指すのは「ポタージュと言う料理の特徴が最もわかりやすいもの」であるためと考えられています。
ビシソワーズにじゃがいもを使う理由
では、ビシソワーズをはじめとするポタージュ・リエにはなぜじゃがいもなどでとろみが付けられているのでしょうか。それは、スープが食卓に並べられるようになった頃にまで遡ります。
硬くて飲み込みにくい黒パンを食べやすくする目的で食べられるようになったスープは、水分を吸わせて柔らかくするためにパンを入れていたと言われています。これがクルトンの始まりであり、ポタージュ・リエのとろみの始まりでもあったのです。
つまり、炭水化物を摂取しやすくするためにスープを食べていたのが、スープの食感を変えるとろみの素として炭水化物を加えるように変化していったのです。
それでは、家庭で作るビシソワーズのレシピを紹介していきます。
ジャガイモ…3~4個、ポロ葱(リーキ)…80g、バター…大さじ1、ブイヨン…カップ4杯、牛乳…400ml、塩・コショウ…少々
ポロ葱が手に入らない場合は長ネギや玉ネギで代用できます。
牛乳は、量を減らして生クリームを併用するとまろやかさとコクが強くなります。
- まず、ジャガイモは皮を剥いて芽を取り、小さく刻んでおきます。ポロ葱も同じく細かく刻んでおきます。
- 鍋にバターを入れて溶かし、ジャガイモとポロ葱を入れて焦げ付かないように丁寧に炒めていきます。
- ポロ葱が透き通るくらいに火が通ったら、ブイヨンを入れて沸騰させていきます。アクは丹念に取り除き、ジャガイモが崩れるまで煮込んだら火を止めます。
- 鍋の中身を冷ましあら熱を取ったら、ミキサーやフードプロセッサーで裏ごしします。
- 裏ごしした後は目の細かいふるいや濾し器などで濾して鍋などに移します。そこに牛乳を加えてよくかき混ぜ、塩・コショウで味付けしたら冷蔵庫で冷やしておきます。
- 器に移してパセリなどのハーブを散らせば完成です。
ビシソワーズのポイント
ビシソワーズを美味しく作るコツは、「ジャガイモを良く煮込むこと」です。
煮崩れるくらいに煮込むとジャガイモとブイヨンが調和して味がまろやかになるだけでなく、裏ごししやすくなるのです。