インスタント食品の発達によって、様々な料理がより身近なものになりました。
カレーやラーメンなどの時間の掛かる料理も3分程度で作れるようになり、スパゲッティもソース付きで簡単に作れて、しかも自分が作るよりも美味しいこともしばしばです。そういったインスタント食品化の恩恵を受けた料理の一つにお吸い物があります。
簡単になったが為に軽視されているお吸い物を改めて見直してみましょう。
お吸い物は、日本料理の精神を表したスープ料理です。
他国のスープ料理に比べてシンプルで、インスタント食品としても多く出回っているためかスープ料理としては軽んじられている傾向にあります。しかしお吸い物は、脂分が一切存在しない典雅でさわやかな飲み口と、すっきりとした美味しさを備えているのです。
お吸い物が主役を務める日本料理
古来より、「一汁三菜」と言うように日本でのスープ料理は副食とは一線を画す存在として位置づけられてきました。
お吸い物は、出汁の美味しさとその美味しさを引き立てる季節に合った食材の選択が相乗して、料理の主役を務めてきたのです。
特に懐石料理では、お吸い物を重視したメニューを設定していることが知られています。
お吸い物の美味しさを支える出汁
お吸い物が、すっきりとした口当たりでありながらしっかりとした旨味を持っているのはなんと言っても出汁の功績です。
お吸い物に使われている出汁は、基本的に昆布と鰹節で取った「一番だし」です。うま味成分のグルタミン酸とイノシン酸の美味しさを引き立てる組み合わせが成された一番だしは、お吸い物ひいては日本料理の味付けに大きな影響を与えているのです。
また、鰹節を使わずに昆布と椎茸で出汁をとったお吸い物などもあり、脂分に頼らない味付けを追及していることも見逃せません。
お吸い物に合う食材は
日本で最も人気の高いお吸い物と言えば、「松茸の土瓶蒸し」ではないでしょうか。
土瓶に澄んだ出汁と松茸や鱧などの高級食材を入れて、土瓶ごと蒸しあげて香りと味を楽しむことが出来る素晴らしい一品です。煮込まないのでアクも出ず汁が濁らないのが最大の特徴と言えます。
他のお吸い物の具材として使われる食材には、ハマグリや海老などの海産物や鰻の肝、生麩といったものがあります。
お吸い物を引き立てる“つま”
また、お吸い物には「つま」と呼ばれる付け合わせが乗せられてきます。
この“つま”は、お吸い物の風味を引き立て、一口ごとを新鮮に味わう口直しとしての役目を果たしています。お吸い物の“つま”として使われている食材として一般的なのはミツバです。ミツバ独特の爽やかさが口の中に残る後味をリセットする役割をはたします。
他にも独活や大根といった独特の風味を持つ野菜が“つま”として使われています。
お吸い物を食べる時に気をつけたいこと
食事作法においてお吸い物を食べる時は、箸で具材を抑えてから音を立てないようにお椀に口を付けて汁を飲みます。
お椀で顔が隠れるようにあおって飲むのはマナー違反になります。
それでは、本格的なお吸い物を作るためのレシピを紹介していきます。
素材を活かす二番だし
二番だしは、一番だしをとった昆布と鰹節を使って取る出汁です。
一番だしほどうま味は強くないのですが、食材の持つうま味を引き出すには最適の出汁なのです。
一番だしをとった昆布と鰹節、鰹節…30g、水…2リットル
- まず、鍋に昆布と鰹節を一緒に入れて水を注ぎます。鍋を火に掛けて沸騰するまで煮込みます。
- 沸騰したら新しい鰹節を入れて、火を止めてアクを取り除いていきます。
- アクが表面に見えなくなったら布で出汁を静かに濾して出来上がりです。
ハマグリのお吸い物のレシピ
ポピュラーなお吸い物として人気の高いハマグリのお吸い物のレシピを紹介していきます。
一番だしまたは二番だし…カップ3杯、ハマグリ…4個、醤油…小さじ二分の一、ミツバ…一茎
- 下ごしらえとして、ハマグリに砂を吐かせておきます。ハマグリ全体が浸る量の薄い塩水に漬けてしばらく置いておきます。砂を出し切ったら水の中で殻を軽く擦り合わせて汚れを取り、水を吹いておきます。
- ミツバは適当な大きさに刻んでおきます。
- 一番だしとハマグリを鍋に入れて火に掛け、軽く煮立たせます。
- ハマグリの口が開いたらアクを取り、醤油で味付けしていきます。
- 味付けが終わったら火を止めて器に盛り付け、ミツバを上から散らせば出来上がりです。