トヨシロ
豊かに穫れて色が白いので「豊白」、つまりトヨシロというわけですが、男爵薯やメークインと違って加工品向けの品種になります。
加工品としての説明は「じゃがいもの加工品」で触れますので、ここではトヨシロの特徴などを説明していきましょう。
トヨシロの歴史
トヨシロは昭和35年に北海道農業試験場で誕生しました。北海19号とエニワを掛け合わせて作られた品種です。
様々な試験の結果、油による加工品に適して いることがわかり、昭和51年に「ばれいしょ農林21号」の名前で登録され、加工原料の品種となりました。色の良いことからトヨシロと名付けられ、北海道 や福島県で奨励される品種となりました。
加工を目的とする品種としては日本で初めての品種で、主にポテトチップスに加工されています。
形態の特性
若芽の色は薄い赤で、その頃の葉の色は紫色をしています。茎はやや長く、葉の色は成長が進むにつれて薄くなっていきます。
白一色の花をつけ、数も多く咲きます。花粉の量がすくないため、自然に実をつけることはありません。
生態
休眠期間は男爵薯より長く、保存性もいい品種になります。他のじゃがいもに比べて花が咲く時期がやや遅めですが、株と粒の揃いはとてもいいです。
トヨシロの肥大やデンプン価は男爵薯と農林1号の間くらいですが、夏場でもある8月に入ると男爵薯を追い抜きます。大きさは比較的大きい部類に入り、収穫量も少なくはありません。
病害虫に対する抵抗力
塊茎腐敗には強く、保存中の腐敗も少ない品種です。乾腐病や黒あざ病には若干弱いのですが、粉状そうか病には強さを発揮します。
一方、ジャガイモシストセ ンチュウやミナミネグサレ線虫には抵抗力はありません。中心部が褐色に変色するものはあまりありませんが、300g以上の大きいものだと中心部が空洞にな る現象が起こりやすいです。マルチ栽培などでは発生する頻度が高いようです。
品質性
トヨシロは目が浅いので剥皮歩留まりは高い方です。若干粉質で、煮くずれは粉をふくわりにはそれほどでもありません。保存しておいたトヨシロでも調理した後で黒く変色することはありません。
トヨシロと男爵薯を比べて、トヨシロの方が味は落ちると言われることも多いのですが、調理後の変色がないので油加工品の目的以外にも使うことができます。
フレンチフライにも向いていますが、フレンチフライの原料として最適な、長くて大きいサイズのトヨシロには、中心部に 空洞ができやすいという難点もあります。男爵薯と比べると、グリコアルカノイドが含まれる量は多いのですが、メークインよりも少なくなりますし、光によるグリコアルカノイドの生成もメークインよりも少なくなります。