豚の出荷サイクル
普段スーパーや肉専門店などに行くと色々な豚肉がそろえてあります。時間帯によっては売切れてしまっていることもありますが、豚肉を扱っていないスーパーや肉屋というのはあまり見かけません。最近では、生産者の顔や名前が表示してある食材もレストランやスーパーなどで頻繁に見かけるようになりました。私たちの食卓に並ぶことも多い豚肉ですが、養豚農家や牧場ではどのように豚肉を生産されているのでしょうか。豚肉という身近な食材のことを良く知るために、豚の出荷サイクルを調べてみましょう。
豚が出荷されるまでの流れ
豚が出荷されるまでの流れには、母豚が出産するサイクルと子豚が生まれてから出荷されるまでの両方の流れを知ることわかりやすいと思います。
母豚の出産サイクル
養豚農家や牧場では、豚肉を安定したサイクルで出荷する必要があります。豚は一年の中で季節に関係なく出産することができますので、母豚が効率よく出産するためにも母豚の体調や栄養を出産サイクルに合わせて適切に管理する必要があります。繁殖に利用される雌豚は品種によって若干差は見られますが、通常8~9ヶ月齢で体重が120kgほどになると繁殖を始められます。品種によってあまり大きくならない品種の豚の場合には、100kgもしくは100kgを下回る体重の場合もありますが、初めの発情から4~5回目の発情で成熟した正常な発情になると考えられます。母豚の発情に合わせて自然交配もしくは人工授精で交配させ、妊娠すると約114日後に出産します。品種によって出産する子豚の頭数が多い豚や少ない豚がいますし、保育が上手でない品種や特定の母豚の場合には、人口哺乳で子豚を育てる場合もあります。一度出産した母豚は、早い場合だと子豚が離乳してから4~5日長くても17日程度で発情が再開します。生まれた子豚の哺乳・保育子豚が離乳するまでに通常15~30日程ですので、出産してから1ヶ月程度の間に母豚の栄養管理をしっかり行っておくことが大切です。こうして、次の発情の時期に合わせて妊娠すると、一年に2.5産のサイクルで出産を繰り返すことができます。
子豚の出荷サイクル
母豚から生まれたばかりの子豚は10日程度までは母豚の母乳だけで育ちます。哺乳期間中は、母豚の母乳を飲んで成長に必要な免疫力や体力を増加させます。母豚は暑さに弱く、子豚は非常に寒さに弱いため、この期間の豚舎の管理には十分気をつける必要があります。まれに、保育が上手でない母豚の場合、子豚がうまく育たなかったり、母豚が誤って子豚をつぶしてしまったりすることがあるため、人口哺乳で育てる場合もあります。しかし、母豚の母乳の中には子豚の成長に欠かせない成分が詰まっているため人口哺乳で育てた子豚は成長速度が遅いことや、発育が良くない場合も多くあります。
その後、だんだんと「人口乳」と呼ばれる離乳用の餌や母豚のえさを遊びながら食べることを覚え、30日齢位で離乳します。離乳時の体重は国内で飼養されている豚の平均では、7~10kgになります。離乳すると母豚から離し、子豚だけの育成豚舎に移します。離乳した子豚はまだ、人口乳と呼ばれる消化しやすい餌で40日齢、体重が15kg前後になるまで育てられます。その後子豚用の育成飼料に切り替えて3ヶ月齢、体重40kg前後になるまで常に餌が食べられる状態にしておきます。子豚は兄弟ごとに分けてグループで飼育していくことが多いのですが、産まれた日が同じグループの子豚を一緒にしたり、同じくらいの体重の子豚同士でグループを作って育成する場合もあります。子豚の骨格や筋肉をしっかり育てたほうが、肥育期間に身体を大きくすることができるので育成期間は大変重要な期間です。食用の肉豚として飼育される場合には、ここまでの間にできるだけ栄養価の低いものを与えておくと肉質が良い豚になり、この後の期間には肥育後期として栄養分の高いものを与えられます。食肉用の豚は生後180日齢、体重が105kgころに出荷されます。
豚肉の生産現場では…
国産の豚肉は、黒豚や各地の銘柄豚といった人気の高い豚肉も多く生産されるようになっています。最近では、海外で人気の豚肉も比較的簡単に購入できるようになっていますが、国内の豚肉生産の現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか。
国産豚肉の生産現場
国産の豚肉には、一般的にスーパーや小売店で扱われている豚肉のほかに、銘柄豚やブランド豚のように付加価値がついている豚肉もあります。しかし、銘柄豚などの付加価値がついている豚肉以外でも輸入の豚肉に比べると若干価格が高いように感じます。豚肉の人気や需要は年々増加しているのですが、国内の養豚農家の数は少なくなってしまっているのが現状です。豚を飼育する環境はどこでもいいというわけではなく、周りに臭いや騒音の配慮をしなければなりません。しかし、国産の豚肉の豚の生産量が減少し続けていくと、国産の豚肉の価格は上がってしまい身近な豚肉は輸入の豚肉ばかりになってしまうかもしれません。
おいしい豚肉を効率よく生産するために…
国内で豚肉を生産するためには、安定した豚肉の量と質が必要になります。また、出荷までにかかるコストに対して、生産する割合が少なければ利益にはならないため一定期間に生産する必要がある量も決まってきます。そのために、養豚農家や牧場では長年肉質が安定して肉の量が多く取れる大型で成長速度の速い種類の豚を生産されてきました。しかし、輸入の豚肉は量が多く、価格を安くすることができるため、国内で生産された豚肉の価格はどうしても負けてしまうことが多くあります。そのため最近では、豚肉の生産において肉の量よりも、より肉質にこだわった豚肉を生産することで味や香りといった豚肉の品質を上げていく、といった方向に変わりつつあるような気がします。皆さんは、どんな国産の豚肉を食べたいですか?