ピッチャーの大事な財産、肩。たびたび引き合いに出して申し訳ないんですが、松坂選手なんか、この肩に60億・・・すごいなあ・・・とはいえ、たとえ草野球チームのピッチャーであろうと、メジャーリーガーであろうとこの世に一つしかない大切な財産という意味では一緒。そして、野球のことが好き、という点においてはだれもが同じであろうと思います。そのためにも肩を大事に作って、末永く野球を楽しんでもらいたいものです。ここでは、ピッチャーのかけがえのない肩について考えてみましょう。
普通キャッチボールするなら、まず誰でも出来る話ですね。しかし、初心者がキャッチャーとピッチャー間の距離を開けてキャッチボールするのは結構至難の業です。あっという間に疲れ果てることでしょう。ということで、ピッチャーを目指すからには100球以上も全力でキャッチャーミットにボールを投げ込めるくらいに体力を付け、身体も鍛えなくてはいけません(ただの筋トレとはまた違いますよ)ボールを投げる、ということに特化した身体、肩を作るということです。
こうして鍛えられた肩は素晴らしい財産です。ただ、筋肉というのはサボるとすぐに現れてしまいます。よくキャンプシーズンにプロが「そろそろ肩が出来てきました」というのは、固まった筋肉がほぐれて、全力を出せる状態になりましたよ、と言っているわけです。
サボれば肩の力が落ちるんなら、毎日ビシバシ投げ込んでやろう、というのも意気込みはとにかく、無茶な話です。ピッチングはかなり肩を酷使する運動です。休まず酷使したら出来上がる前に壊れてしまいます。そこで、いつでも無理の無い量を投げ込み、アイドリング状態(すぐに全力でいけるけれども、身体には負荷が少ない状態)でいるのが、肩が出来た状態というわけですね。少なくとも登板日にはそういう状態が望ましいです。
ピッチャーの職業病とも言える肩や肘痛。プロや甲子園球児が無茶をして肩を壊した、なんて話は珍しくありません。ところが、不思議なことにこうした専門で野球をしている人たちより、割合的には草野球をのんびり楽しんでいるような人たちの方が、こうした痛みに襲われることが多いのです。理由は簡単な話で、心構えが違うのです。肩を大事にして、肩をベストに作り上げ、登板日を待っている彼らと、肩を作ることもなく、急に投げ込むピッチャーでは、どうしても危険度が変わってきますね。その他にも無茶な投げ方や、無理に変化球を投げ込もうとすると、さらに危険度がアップします。肩を守るポイントは、正しい自分に合った投球フォームを作り、筋肉をほぐし、そして無茶をしないことです。
ピッチャーにとっては、こんな恐ろしい事はないはず。そのためにも普段から肩や肘に気をくばり、無茶な事はしないようにする努力が必要です。こうしたケアはとっても大事なことだと思うので、後で詳しく紹介して行きます。しかし、こうした努力をしてもなお肩や肘を壊してしまうことがあるかもしれません。その場合は必ず静養して、ゆっくりとまた肩を作っていくしかないでしょう。そして、今までの自分の投球フォームや投げ方になにか問題がなかったかということを再確認しましょう。
変化球を投げようというのがここのコンセプトな訳ですが、変化球はどうしても負担がかかります。きちんと投げていればさほど気にするようなものではないのですが、より曲げようとか、より速くしようとして無理な投げ方をすると負担は増大します。絶対に無理はしないようにしましょう。特に、新しい変化球を習得しようと練習すると、無理な投げ方や投げ込み方をしがちになります。きちんとした指導者がいるのが一番なのですが、独学で覚えようとするなら、練習するのがあなたなら、指導するのもあなたです。「今自分は無茶していないか?」「変化球を投げるたびに痛みはないか?」など、自分で自分をしっかりとチェックするようにしましょう。
カーブを投げるとしましょう。より大きく変化させるには、リリースの瞬間に手首をねじって回転を上げるのが手っ取り早いです。そのかわり、そのキレのいいカーブはあなたの投手生命を削って投げているのだと認識しましょう。投球の瞬間に無理にねじるのは、それだけの負担を与えるのだと言うことです。ただし投げたときにナチュラルにねじられるのはOKです。無理に止めようとするとかえって痛めますし。特に逆ねじりになるシュートやシンカーなどは要注意。
ひねらずに回転をあげようと思うなら、手首のスナップを効かせつつ、ボールを切るようにして投げるのが一番です。またコマを例に挙げてみると、回転軸を摘んでねじるのが「手首をねじる変化球」だとしましょう。そして、コマの端をぺしっと叩いてまわすのが「切る変化球」です。端っこを的確に、なるだけすばやく叩けば回転速度が速まることがわかると思います。
つまり、切るときに回転数を上げるには、すばやくリリースを行うのがいいということですね。ただ、どうしても「ねじる変化球」には回転数がかなわないのが実情。
でも、長く野球を楽しみたいのであれば、「切る変化球」を考えた方がいいでしょう。