現代の野球界で、使用者が限られるジャイロボールを除けば最も注目を浴びていると思われるSFF。正式名称はスプリットフィンガード・ファストボールという異様に長い名前がついています。近年、アメリカメジャーリーグで名前が知られるようになり、日本でも知名度が高まってきたSFF。ではどのような変化球なのか、SFFの秘密に迫ってみましょう。
SFFの正式名称からちょっと考えてみるに、指を左右に広げて(スプリットフィンガード)握って投げる高速球(ファストボール)ということになるわけですね。下にある、握り方の写真を見るとわかるのですが、こんな握りで速い球なんか投げられないだろう? という握り方です。しかし、実はこのSFFはものすごい高速球なのです。ただし、ストレートと比べるんじゃなくて、フォークボールと比べての話ですが。そう、SFFは言い切ってしまえば超高速フォークボールなのです。
高速フォーク、もしくは落ちるストレートと形容したいSFFの球筋は、初速からまったくのストレートと同様にバッターそばまで飛来し、そこからストンと落ちてきます。ただ、高速なので、落ち幅は少なく、せいぜい20cm前後といったところでしょうか? ところがこの「ちょっと」落ちるところがSFFのミソで、速球と思って手を出したバッターは真芯でボールを捉え損ねて凡打に終わる・・・ということになります。この、速球と見せかけて微妙に変化する変化球は高速カーブなどいくつかありますが、人間の眼は左右の動きより縦の動きに弱いのでより対応が難しい球といえますね。しかも、回転が少ないことと、急に落ちるためにボールの頭を叩きやすくなるので、ゴロの確立が高まります。
1980年代後半、アメリカ・メジャーリーガー、マイク・スコットがこの球をロジャー・クレイグから教わったのだ、というのが一応SFFの始まりと言われています。実際にマイク・スコットはこの球を武器に好成績を挙げました。しかし、SFFは高速フォークという位置づけであるので、名前こそ違え、過去にSFFを投げていた投手はいたはずです。有力候補が1910年頃活躍したルーブ・マーカードとされています。また、70年代後半にはブルース・スーターの投げる高速フォークはまずSFFであったろうといわれています。しかし、「SFF」という名称を使い出したのはマイク・スコットらであった事は間違いないでしょう。
というように、SFFを発明したのはメジャーリーガーであり、本場もメジャーリーグと言うことになります。アメリカ人は大雑把なのか、メジャーではSFFもフォークも同じとされ、両方の変化球をまとめてスプリッターと呼ぶことも多いのも特徴です。上で話しましたが、そういった大雑把なわけ方なので、どちらでもいいのかもしれませんね。もっとも投げるほうとしてみれば、苦労の末習得したSFF(またはフォーク)がどっちでもいいって扱いには納得できないかもしれませんけど。
まずはSFFの握り方の写真を見てみましょう。
見事に指がスプリットしていますね。ただし、フォークボールほど不安定ではなく、ストレートほどではないにしてもバックスピンがかかります。指の長さに左右される欠点があるものの、投球フォームや投げ方などはほぼストレートそのままでいいので、手がある程度大きければ、比較的容易に投げられる変化球といえるでしょう。
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SFFはフォークとストレートのあいのこみたいな変化球なので、正しく握り方を覚えてしまえば、投球フォームに関してはそのままストレートと同じ投げ方でかまいません。というより、相手にストレートかSFFか? と思わせることが大事な変化球なので、投球フォームで見切られては威力半減と言うことになってしまいます。ですから、SFFを投げるときはかえってストレートの投球フォームを崩さない練習の方が必要になるかもしれませんね。
投げるだけならSFFは意外と投げやすいかもしれません。しかし、あくまでも相手バッターのそばで変化が始まらなければ、まず引っかかってくれるバッターはいないでしょう。いかに高速フォークといえ、ストレートより遅いのは当たりまえ。中間あたりでもう変化が終わってしまえば、ただの棒球と同じ扱い。気持ちよく打ち返されることになるでしょう。
こうした速球か変化球かの択一を迫るタイプの変化球は、相手に判断する時間を出来るだけ与えないことが何より肝心。出来るならバッターがスイングのモーションを始めた頃に変化するのが最も望ましいでしょう。そのタイミングを狙って落とせるように鍛錬したSFFは、アウトカウントを稼ぐのに大いに役立ってくれます。