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髭と民族性

髭と民族性

現代の日本においては、髭はファッションの一部として認識され始めています。「社会人がひげを生やしているのはみっともない」という考え方が当たり前だったこれまでの風土へのカウンターとして髭が見直されてきた証であるとも言えます。しかし、日本以外の国では「髭を生やす」ことが社会人にとって当たり前であるということも珍しくありません。ここではそういった世界におけるひげを巡る文化の違いにスポットを当てていきます。

アジア圏での髭文化の違いを考える

そもそも、日本におけるヒゲの扱いは中国から輸入されたものを基盤としたものでした。戦国時代まで、ひげは生えるままに伸ばした武骨な顔立ちのままであることが多く、カミソリでヒゲを全て剃るようになったのも江戸時代中頃からです。日本における髭の捉え方は、カミソリや鏡の製造技術が伝来した後、中国とはまったく違うものになっていったのです。

中国での髭の捉え方

日本にカミソリや鏡などの髭剃りに欠かせない道具を伝えた中国では、ひげはどのように捉えられていたのでしょうか。中国では代々、王はその証としてヤギ髭を生やす風習があったと伝えられています。このヤギ髭を汚すことなく飲める専用の杯も作られていたと言われています。このように、古代の中国でも髭の形が威厳を現すものとして扱われていたのです。

アジア・中東方面での髭の捉え方

アジアや中東では、イスラム教の影響で「男性は髭を生やしていて当然である」という考え方があります。ビジネスで中東方面に向かった日本のサラリーマンが、「髭を生やしていないならば男性とは認めない」と言う理由で交渉をキャンセルされたと言う話は有名です。中東方面は日中の太陽光が強い地域でもあるので、ひげを伸ばすことで日焼けしすぎによる火傷を防ぐ狙いがあるのです。

ロシア・ヨーロッパ圏での髭文化の違いを考える

次にアジアから離れて、ロシアやヨーロッパ権での髭文化の違いを紹介します。

ロシアにおける髭の捉え方

ユーラシア大陸の北方に位置するロシアでは、ヒゲは権威の象徴と成人男性の証として扱われ髭を伸ばすことが奨励されていました。しかし、シベリアにおいては髭を伸ばしていると涙や息の水分が髭ごと凍りつき凍傷を起こすことがあるため、髭が薄くなるようです。現代ではヒゲをあまり伸ばさない傾向にあり、伸ばしても口髭やラウンド髭などがほとんどのようです。

ヨーロッパにおける髭の捉え方

ヨーロッパにおいては、口髭を生やすことが紳士のたしなみであると考えられていたようです。ヨーロッパにおいては、ヒゲよりもカツラを装着することの方が権威の象徴とされていた時代もあり、あご髭や頬髭は剃る対象として捉えられているようです。現代では、サッカー選手などがひげをファッションの一部として伸ばすなど、日本の髭文化に近い考え方を持っているようです。

髭の捉え方と民族性

国や地域ごとの髭の捉え方の違いの背景には、民族性の違いが上げられます。民族性の違いは、狩猟民族と農耕民族の違い、信仰の違い、道徳観念の違いなどが複合的に絡み合って生まれるものです。これらの民族性の違いは、時としてジョークの種になることもありますが、様々な文化の違いをもたらします。

髭の捉え方の違いは民族性の違い

つまり、それぞれの国や地域ごとの髭の捉え方の違いとは文化そのものなのです。例えば、日本におけるひげの捉え方は、新しい物好きで自分流にアレンジするのが得意な日本人の気質が良く現れていると言えます。このように、髭をどのように捉えるかは民族性と文化背景に左右されるものなのです。

これからの髭文化を考える

では、これからの髭文化はどうなっていくのでしょうか。おそらくは、権威の象徴としての髭とファッションとしてのヒゲの二分化が進み、髭を伸ばさないこともまたファッションとしての髭文化の中に取り込まれていくことになると思います。つまり、将来的には髭文化は民族性の融合を果たしていく方向に変化していくと考えられるのです。

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